第6話:おねだり・アイリス視点
「父上、母上、お願いがあるのですが、よろしいでしょうか」
食事の際のマナーが全く分からず、全て呪殺の後遺症という事にしてありますが、それでも付け焼刃で覚えたマナーに縛られ全く味のしない緊張した晩御飯です。
いえ、私にとっては食事ではないく晩餐会という名の拷問です。
だから後遺症を理由に極力断って自分一人誰に気兼ねする事もない食事がしたい。
本当は父母の誘いは全て断りたいのですが、そうもいきません。
最低でも三日に一度は家族そろって食事しなければいけません。
だから、どうしても食事をしなければいけないのなら、この機会を利用します。
「なにかねアイリス。
アイリスの願い事ならできる限りかなえてあげるよ。
先日頼まれた羊皮紙も王都中の羊皮紙を全部買い占めさせた。
もうアイリスの勉強が羊皮紙不足で不便になるような事はないよ」
ああ、父よ、うれしいがうれしくない。
そんな事をするから前の身体の持ち主は我儘な子に育ってしまったのだ。
傍若無人な行動をしても許されるのだと勘違いしたのだ。
「ありがとうございます、父上。
買っていただいた羊皮紙を無駄にする事なく勉学に励みます」
ええ、ええ、絶対に無駄にしないですよ。
全部私の創作に使わせていただきますから、安心してください。
「そうか、そうか、そうか、それで他に何が必要なのだね、アイリス」
「実は嫌な予感がしてしまうのです、父上。
また呪術を放たれる気がして仕方がないのです。
不安で胸がキリキリと痛み、夜も眠れなくなるのです。
これも呪術の影響かもしれませんし、先の呪術の後遺症かもしれません。
このままでは今度こそ殺されてしまうかもしれません。
王都にいるよりも領地に引き籠った方が安全なのではないでしょうか。
私を恨む者も私が病気療養を理由に領地に戻れば、呪術を止めるかもしれません。
私は領地で静養したいのです、許可していただけないでしょうか」
「だめだ、だめだ、だめだ、私の目の届く範囲にいるのだ。
私の目の届く範囲にいなければ護ってやることができなくなる。
それほど心配ならば私の護衛をアイリス付きにしてやる。
だから安心してこの屋敷にいるのだ」
ちょっと、ちょっと、ちょっと、それは駄目でしょ。
そんな事をしたら父が危険になるだけではすまないです。
父付きの家臣や使用人から激烈な恨みを買ってしまうでしょう。
それに、嫌々護衛につくような連中など信用できません。
それどころか私が呪殺されるようにわざとスキを創るかもしれません。
何よりマイラと乳姉妹以外に側にいられるのは絶対に嫌です。
「母上と兄上はどう思われますか。
私がこのまま屋敷にいた方が安全だと思われますか。
父上の護衛達が、私付にされて本気で護ってくれると思われますか。
私の命がかかっているのです、嘘偽りなくお答えください、母上、兄上」
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