108、悪役令嬢と真ヒロイン
翌朝、目覚めた私は決意した。
ここのところ、難しい話ばっかりだったじゃない?
少しは頭を休めて、楽しい気分でリフレッシュした方がいいと思うのよ。
という訳で、今日はジェンスとあそぼーっと。
婚約者と仲良くするのも貴族の務めですし。もっとサイタマー家のこともよく知っておかなきゃだし。ほら、私、いずれ埼玉になる北海道だから。
弾む足取りで男子寮に向かった私だったが、呼び出してもらおうとしたジェンスは部屋にいないとのことだった。敷地内にはいるはずなので少し探してみようかな、と足を向けた中庭で、アルベルトとなにやら楽しそうに話し合っているジェンスをみつけた。
むう。婚約者である私を放っておいてそんな東京者と遊んでいるだなんて。
「ジェンス」
「あ。レイシー! 俺に会いに来たのか? 可愛い!」
とてとて近寄ると、私に気づいたジェンスが相好を崩した。よしよし。ジェンスはこうでなくては。
「なんのお話をしていたの?」
「ああ。いつもより早く休みに入るから、予定の確認をな」
「あら。どこかに遊びに行くの?」
ジェンスは長期休みの度に私に会いに北へやってきていたけれど、休みいっぱい滞在していた訳ではない。長期休みの間には親友のアルベルトと遊びに行ったりもしたのだろう。
そう思って尋ねたのだが、返ってきたのは聞き捨てならない言葉だった。
「ああ。いつも長期休みの間はほとんどどっちかの家に泊まり込んでいるからな」
「とは言っても、ここ数年はお前は俺をそっちのけでレイシール嬢に会いに行っているじゃないか」
「ははは。嫉妬すんなよ。それ以外の日は一緒にいるんだからいいだろ」
「まあ、そうだけどな」
にゃんだと?
北の領地に滞在している日以外は、ジェンスはアルベルトとおはようからおやすみまで一緒ってことか?
こ……この泥棒猫!
私の目の届かない東でそんなことになっていただなんて!
ちょっと仲良すぎじゃないかしら? くぅ~、プロテクトでジェンスからアルベルトの記憶を消してやりたい。そして、認識阻害でジェンスがアルベルトを認識できないようにしてやりたい。
そっか。こうやって悪用する人間がいるからオプションはくっそ高価なんだな。
リリーナはなんぼほど金持ちだったのかしら。
いや、今はアル平を片づけるのが先だ。昨日ガウェインが「思う存分気になる子を口説け」って作戦変更してたでしょうが! こんなところでジェンスと仲良くしてないで女の子口説きに行きなさいよ!
つーか、ティアナを口説け!
決めたわ。私、絶対にティアナとアルベルトをくっつける。アルベルトにも婚約者が出来れば、ジェンスと一緒にいる時間は減るわよね?
ジェンスロッド・サイタマーは渡さないわ! 覚悟しなさい!
……何故かしら、私いまかつてないほど悪役令嬢っぽくない?
アルベルトってヒロインだった?
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