I'm in home yet.

 声が聞こえる。

 私はその声に返事する。

 散らかった家の中を、更に散らかしながら荷物を纏めてゆく。

 アレは持ったかな、コレは入れたっけな。ああ、ソレは要らないから置いておこう。そんなふうにしているうちに三十分が過ぎた。

 急かす声が聞こえる。

 私はその声に、少しばかり申し訳なさそうに返事をする。

 旅行なんて、荷造りしているときが一番楽しいのだ。何をしたかではなく、何をしようか悩んでいるときが一番楽しい。極論、行かなくても予定を脳内で描くだけで満足できる。……うーん、これ……、まあ、使うか。入れておこう。そうこうしているうちに纏まった荷物を、部屋とベランダを区切る窓の近くに置いて座り込んだ。

 呆れたような声が聞こえる。

 私はその声にため息をついた。

 荷物は小さい方がいいとは言うけれど、私一人じゃあ選び出すこともままならない。だからこんなふうに大荷物になるのだ。なんせ、知らない場所へ往くのだから。そこのところは許してくれよ、と私は言う。返事は聞こえない。まあ、じっとしているわけにもいかないので、私は立ち上がって机上のコップに残った麦茶を飲み干した。

 声が聞こえる。

 はいはい、聞こえてる。今逝くよ。

 そう言って荷物を放り出して、私も外へと飛び出した。

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