第4話 四人目のメンバー⑷
「おいっ、お前らぁっ!!」
とうとう我慢が出来なくなって、雷は校舎の陰から飛び出した。
驚いて目を丸くする日和からグローブを奪い取って、雷は野分にノックを要求する。
「ボケッと突っ立ってんな! 動け! ボールの行方を目で追ってから走ったって遅えんだよっ!」
言いながら、野分が右方向に打った球をノーバウンドでキャッチする。
「ボールが転がるのを待つな! 打つ奴をよく見ろ! 手だけで捕ろうとすんな! もっと腰と足を曲げて、全身を使って掬うようなイメージで!」
少し高めのボールを軽く後ろに下がって捕球し、その体勢で膝の屈伸を日和に見せる。
「テメーはとにかく体が硬いんだよ! バットやボールを使う前に、まずは柔軟を徹底的にやりやがれ!」
野分に向かってボールを投げ返してから、雷は日和のポカンとした顔を見てはっと我に返った。
(しまった。つい……)
今の状況は完全に「まったり練習する一年生の輪に乱入して頼まれてもいない指導を始める熱血野郎の図」である。恥ずかしい。
「い、いや……これはだな。お前らがあんまりヘタクソだから……」
慌てて弁明して、グローブを日和に突き返してその場から去ろうとする。その背中に、野分が声をかけた。
「待って!」
雷が足を止める。
「もしかして、野球経験者?」
野分の問いに、雷は黙ったまま首を横に振った。意外だというふうに野分が声を上げる。
「違うの? 適切なアドバイスだったけど……もし、野球に興味があるんだったら、入部してくれないかな? 一緒に甲子園を目指そう!」
「はあ!?」
明るい声で勧誘してくる野分に、雷は眉を吊り上げて振り返った。
「馬っ鹿じゃねぇのっ!!」
これまでの苛立ちをすべて声に込めて怒鳴りつける。
「こんなチンタラやってて甲子園なんざ行ける訳ねえだろ! どいつもこいつも小学生のお遊戯みたいな部活動しやがって! お前らのレベルじゃ、たとえ九人集まったって一回戦突破も無理に決まってらあっ!」
野分は目をぱちくりした。日和はぽけーっと成り行きを眺めている。晴だけが雷の言い草にわずかに眉をしかめ、野分の肩越しに雷を睨みつけた。
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