0章 4.チャラ男
俺とアンカは町をもう1度歩き回ったが、人の姿が見当たらない。もう諦めて違う町へ向かおうと思っていた時、1つの家に目が止まった。
「アンカ、ここ」
この家に気づかずに歩いていたアンカを止め、俺は家に指をさす。この家は傷が何もついていない、ここだけ襲われなかったのだろうか。
「周りはボロボロなのにここだけ無傷なんておかしくないか?」
「そうですね。周りの被害を考えるとここにまで被害が出てもおかしくないはずですから」
少し考えてみたが、答えは出ず、一旦入ってみることにした。
「でかいなー入り口」
大きい鉄の門を見ていると、門に何かがある、そう脳が訴えかけてくる。アンカは何も考えず手で押そうとしている姿を見て俺は必死に止めた。
「ちょ、ちょっと待って!」
「もう……触りましたよ……?」
その瞬間、背中に電撃が走る。奥から黒い影、否、人がこちらに向かって来るのが見えたのだ。
「マズくね?」
「はい、嫌な予感しかしません」
すると奥の人は赤い魔法陣を展開して、こちらに向けた。それを見た俺とアンカは目を合わせうなずく。
これは絶対に逃げたほうが良い、本能がそう言っているんだ。
「よし、逃げろー!!!」
「はい!!!」
地面を思いっきり蹴り、最高なスタートダッシュを決める。俺たちをみたあの人は何かの攻撃魔法を撃ち始めた。
「はい絶対に敵!!あいつ敵だ!!!……ってえー!?」
「ちょっと……待ってくださいー!!!」
物凄い遅いスピードで走るアンカ。俺はヒロインは走れませんっていう設定、可愛くて好きだけど、この状況で知りたくなかった!!そう思いながら俺はアンカのところまで戻り、手を引っ張り、気合で走った。
「逃げろー!!!」
「きゃー!!」
相手の魔法はギリギリ当たらない。これは神様のおかげだとそう思う。
「あーー!!疲れた!!!」
「私も、もう……!!」
曲がり角を曲がってすぐの家に俺たちは入った。
「俺って運良いのか?これは」
この家は武器屋だった。たぶんこれは俺の『少し運がよくなる』上運(じょううん)の加護と『もしかすると悪い運が少なくなる』悪少運(あくしょううん)の加護のおかげだろう。いきなりしょうもない加護が役にたった。こんなことがあるのか……
「とりあえず武器をもらって―――」
「泥棒になっちゃいますよ!?」
「いや、店の人いないしピンチだしよくね!?」
こんな状況になってまで気にすることが泥棒になる……アンカは面白いな。それより武器を選ばないと。
「敵が来たら言ってくれ」
「分かりました」
アンカに見張りをさせたくなかったが状況的にこれしかなかった。あとで神からの罰が与えられるだろう……俺のしたことは俺自身許せない。
「早く武器を決めよう」
壁にはリーチの長い刀から短剣まで幅広く、かつ綺麗にかけられていた。ここの武器屋はすごいところだったと思う。
「普通の長さの剣は……これとかいいかな」
ごく普通で特に特徴といったもののない剣を持つ。重くもなく軽くもない、切れ味もよさそう。武器はモテたが問題は相手は遠距離攻撃ができる。
「魔法さえできれば……」
俺がボソッとつぶやくと見張りをしていたアンカがその声を聞いて俺のところに近づく。
「もしよければ、私が教えましょうか?」
「時間ないけど、いけるか?」
「はい!短時間でばっちりにしますよ!!」
状況がこうでなければ美少女に言われて最高な言葉だったのに、と思いながら俺は必死にアンカに魔法を教わった。
「―――とこんな感じです。これでばっちり思います!!」
自信満々に言うアンカを見て少し顔を赤くしたがすぐに表情を戻し、教わったことをしてみる。
「簡単で助かったぜ」
アニメでよくある、想像していけば出せる感じだ。想像次第で強さが変わってくるという。
「す、すごい……正人さんってすごいですね」
「あ、ありがとう。できるのはアンカのおかげ、助かったよ」
「は、はい……」
顔を赤くするアンカをいつまでも見ていたかったが、そうにもいかなかった。
「―――」
誰かが近づく気配。耳を澄ますとこちらに近づいてくる足音がある。
「初の敵にしては強すぎるんだけど……ほんとに……」
「―――」
俺は武器屋を出て、相手の目の前に姿を現した。アンカは武器屋でサポートをしてもらうことにしている。さすがに戦場には出したくない。
「あー……魔法も初めてだし……」
「―――」
相手をよく見ると金髪の男だ。チャラそうな見た目をしてもしゃべらなければチャラくない。変な勉強になった。
「でもいきなり負けるなんてアニメの展開に存在しちゃいけないし」
「―――」
初めて魔法陣を展開し感動しながらもチャラ男に殺意を向ける。
「よっしゃ、勝負と行こうぜ」
どこかから聞こえた物音が聞こえた瞬間、同時に地面を蹴った。
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