第9話:晴天の霹靂・アマーリエ視点

 王都屋敷の片づけは自分でやっています。

 領地に戻って修道院に入るための荷物整理をしていました。

 修道院に入る覚悟をした以上、何でも自分でできなくてはいけません。

 今までのように侍女に頼るわけにはいかないのです。

 とはいえ、将来王妃になるために学んでいた帝王学の本や資料が多過ぎて、全て整理するのにあと数日はかかると思います。


「アマーリエお嬢様、公爵閣下と奥方様がお呼びでございます」


 一心不乱に片づけしている所に、母上付きの侍女が呼びに来ました。

 王宮から使者が来て父上と母上が対応された直後です。

 とても嫌な予感がして、行きたくなかったのですが、行くしかありません。

 何か無理難題を押し付けられたか、一連の事件の後始末でしょう。

 私は領地の修道院に入ると宣言していますから大丈夫でしょうが、公爵家とアレグザンドラがどのような罰を受けるのか不安です。


「父上、母上、何が大事が起きたのでしょうか」


 私は両親が王宮の使者を迎えた応接室に案内されました。

 父上や母上の私室ではなく公的な応接室での話です。

 嫌な想像をしていましたが、ろくな内容ではないのが予測できました。

 内心は大きなため息をつきたい気分ですが、そんな感情を容姿に表すほど未熟ではありませんので、いつも通りの表情と態度で両親に臨みました。


「よくきたな、アマーリエ。

 いや、今日からはアマーリエ殿下と呼ばなければならんな」


 父上の言葉を聞いて大体の事が分かってしまいました。

 こんな事をやってしまうのはアラステア王弟殿下しかおられません。

 それにしても、よくこんな事を思いつきますね。

 思いついたにしても、よく国王陛下や王妃殿下を納得させたものです。

 流石大陸中に武名を轟かせておられるアラステア王弟殿下です。


「王家からの使者の話では、一連の失態の責任を取る形でロバート王太子殿下は王族の地位を剥奪され臣籍降下させられた。

 当然だが王位継承権も剥奪されるという事だ。

 国王陛下はアラステア王弟殿下に王太弟になられるように伝えられたのだが、王弟殿下は責任を背負うのが嫌だと断られたそうだ。

 どうしても国王の地位を押し付けるというのなら、他国に亡命するとまで言われたそうで、国王陛下も断念されたそうだ」


 アラステア王弟殿下は正義感が強く天下無双の戦士ですが、どこか怠惰な所があおりで、常に王宮での社交を避けてこられましたからね。

「天は二物を与えず」という諺もありますから、政治が苦手かお嫌いなのでしょう。

 ですが、だからといって、私に押し付けるのはどうかと思うのですよ。


「そこで国王陛下は王位継承権を持つ王族から次期国王を選ばれることになった。

 アマーリエ殿下、貴女が王家の養女となって王位継承権第一位となるのです」


 やはりそう来ましたか。

 確かにエヴァンズ公爵家はエドワーディス王国一の名門です。

 ですが私は女でエヴァンズ公爵家にはバーツ兄上がおられるのです。

 アラステア王弟殿下が王位の継承を拒否されるのなら、次に王位を継承するのはバーツ兄上でしょう。

 絶対にアラステア王弟殿下の思い通りにはさせません。

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