第15話 3,11pm2:46

あれからもう10年ですか・・・。誰にもあたることができないことのない怒りと、伝えることで大きくなる悲しさに包まれました。


当時、中学生の自分はちょうど、修学旅行の打ち合わせをしていました。自分の住んでいた地域では、およそ震度3から4。教室の窓から音が鳴り、肌で感じる大きな揺れ。咄嗟に机の下に隠れました。揺れを感じる時間がとにかく長かった。生きてからその年まで感じたことのない恐怖が当時の自分を襲いました。隣にいた幼馴染は恐怖で泣いていました。自分はその手を握って、「大丈夫だよ。」としかいうことができませんでした。揺れがおさまると、全校生徒が玄関からすぐにある広場に集められました。揺れはおさまったはずなのに、まだ、揺れている感じがする。そんな感じがしばらく続きました。

その後、すぐに下校となりまっすぐ家に帰りました。家では家族がT Vをつけていて、この地震がどれくらい大きかったのか未熟なりに感じることができました。T Vから流れる映像は、ハリウッド映画のような感じで、実感を持つことができませんでした。特に津波の映像は、いまだに自分の記憶の引き出しの中に保管されてます。これは、2度と頭の中から離れることはないでしょう。土砂を含んだ海水が家や車、人を飲み込んで流れていく。海の近くで育った自分は近くの海がこんなに怖いものだと初めて感じました。


そこから数ヶ月後、自分は地元の高校ではなくて全国から人が集まる高校に進学しました。そこでは、いろいろな話を聞くことができました。東北地方から来られた方もいたので、リアルにその時の状況を感じることができました。印象的だったのは、震災について理解を深めるために、教材で映像を流すということを最後まで拒んだ人がいたことです。天災は大きく、あまりにも理不尽に襲ってくるもの。それをたかが高校生が乗り越えるにはあまりも酷な事なのだと。


自分は命についてどちらかと言えばドライな思想を持ってます。自分の命は時間制限だとしか思ってません。このことを言うとよく怒られてました。命をなんだと思ってるんだとか、1番大切なものは命だろうとか。自分が言いたいのはあくまで自分の命のことです。人にはそれぞれ価値観がありますし自分の意見を押し通そうだなんて考えてません。でも、少し考えてください。一番大切なものが命なら、人生は必ずバットエンドです。少なからず生き物は死に向かって生きてます。その間にどれだけ、自分の人生を全うできるか、自分はこの世に何を残すことができるか、そのほうが自分の命よりも、よっぽど大事なものです。


『自分の人生は自分のもの。自分の命は自分を大切に思ってくれている人のもの。好きなように生きるといい。でも、勝手に死ぬことは許さない。お前の命はお前のもののようでお前のものではないのだから。』


でも、これはある程度生きた人間でこその意見です。突然、奪われるのは違う。人殺しも、天災も。誰も予想しない大きな力で奪われ、怒りをぶつける相手すらいない、それは天災だから仕方ないでは怒りも悲しみもおさまらない。時間と共に解決もしない。思い出すたびに悲しみは甦る。


自分は、人は5度死ぬと考えてます。

1回目は、幼稚園から小学校にかけての、唯一自分の死。自分がこの世界の中心じゃないと感じ、人と共に生きることを強制される。

2回目は、社会人になるときの、個性の死。学校では個性を強要されて、社会に出ると空気を読めと言われて集団の一部になる。

3回目は、恋人や結婚相手ができた時、または子供が産まれた時の、自分の死。自分よりも大切なものができて、それに命をかける。

4回目は、肉体の死。自分の意識がこの世から消えます。

最後に、思想の死です。自分の存在や思想が完全にこの世から消える。

これが人間の体験する死の形だと思います。

だからこそ、忘れないでください。辛くても必ず覚えていてください。忘れないことでまだ、自分たちの中に大切な人が生き続けることができる。


人間は死んだら何になるのと考えたことはありますか?


高校の時に、倫理の教諭から言われました。その人の答えは、「人は死んだら星になる。」と言うものでした。人間は炭素でできてるから土に帰った時に必ず地球の一部になると。当時の自分はロマンチックなこと言うなとしか感じませんでした。今の自分ならこの問いに、「人間は死んだら楔になる。」と答えます。死後の世界のことはわかりません。ただ、確かなのが忘れない限り、この世界と人はつながり続けると言うことだけです。

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