同盟へ向けて⑥
「お前……いや、カオルの創造はAランクだよな?」
「そうだね。そういうキミ……ううん、シオンの創造のランクはBかな?」
「そうだな。そして、俺の錬成のランクはAだ」
「ふーん、そういう提案か。ボクの錬成のランクはBだね」
魔王カオルは微笑し、答える。
今の会話だけで、俺からの提案内容を理解したようだ。
やはり、こいつは賢いな。
「レートはどうするの?」
「俺たちの関係は対等だ。ならば、等価だろ」
「そうだね。そうだ。ここで話を続けてもいいけど、何なら落ち着いた場所に招待するよ?」
魔王カオルは振り返り、奥へと視線を向ける。
「いや、出口が近いここでいい」
「そこまでは信用出来ないか」
「互いの信頼はこれから築けばいい。そうだろ?」
「そうだね」
俺の答えを知っていたかのように、魔王カオルはすんなりと頷く。
「なぁ……あいつら何を話してるんだ? 俺の出番はあるのか?」
「握手してたから、ないっしょ」
「あいつら仲良すぎじゃね?」
「シオンっち×カオルっちか……ありよりのあり!」
「何がだよ」
「エモいっしょ!」
「だから、何がだよ!」
後方でバカたちが騒ぎ出した。せっかく知的な会話を楽しんでいたのに、台無しだ。
――黙れ!
「すまない……うちの配下が」
「あはは。強さも規格外だったけど、シオンの配下は個性も規格外だね」
「本当にすまない……」
「あはは。いいよ。恐怖で支配している魔王よりもよほど信頼が出来る。せっかくだから説明してあげたら?」
魔王カオルは楽しそうに笑い声をあげる。
「チッ……タカハル。まずは、お前の出番はない……でいいよな?」
俺は最後にカオルへと視線を移し確認する。
「うん。ボクもそう願っているよ」
カオルは微笑を浮かべ、答える。
「次に俺とカオルの間で今話している内容は――交換の提案だ」
「交換……?」
「俺の錬成したアイテムとカオルの創造した配下の交換だ」
「おぉ……人身売買か! 流石は魔王だな」
「サブロウと木の棒を交換するみたいな?」
「――な!? 我輩の価値はもっと高いですぞ!」
タカハルは物騒な言葉に置き換え、サラはサブロウを売り出し、サブロウは見当違いの声をあげる。
「え? そこの吸血鬼と木の棒を交換してくれるのかい?」
「しねーよ……。それに、俺が出すのはアイテムだろ」
「残念。ボク的には魅力的な条件だったのに」
「シオン様の我輩への熱き想い……! サブロウ=シオン、確かに受け取りましたぞ!」
クソッ……話は逸れる一方だ。
「とりあえず、お前たちは黙ってろ」
俺はバカな配下共に命令を下し、話を本題へと戻す。
「それじゃ、具体的な話し合いを始めようか」
「シオンとボク……互いが納得出来る交渉になることを望んでいるよ」
魔王カオルとの交渉が始まった。
「まずはレートだが、等価交換でいいよな?」
「Bランクの配下に対してはBランクのアイテム、Aランクの配下に対してはAランクのアイテム。そういうことかな?」
「そういうことだな」
「ボクはそれで問題ないよ」
「それともう一つ、こちらからもう一つ要望がある」
「何かな?」
「カオルの錬成はBランクだよな?」
「そうだね」
「なら、Bランクで錬成出来るアイテムは不要だよな?」
「そうなるかな」
「ならば、交換の対象となるのはAランクから錬成、創造が可能になったアイテムと配下のみでいいよな?」
「んー……なるほど。いいよ」
魔王カオルは少しの時間思い悩むが、了承した。
この提案は善意ではなかった。
俺が提供するものはアイテム。対してカオルが提供するものは配下。
カオルはアイテムを受け取るだけだが、こちらが配下を受け取る場合は眷属にする必要があった。
受け取るだけでCPを全消費。ならば、少しでも質の高い配下を願うのは当然であった。
「最後に、交換はすぐに行うか? それとも、互いに交換に出せるモノをリストアップして後日行うか?」
「後日がいいかな」
「わかった」
俺は魔王カオルと電話番号とメールアドレスを交換。交換は後日行われることになったのであった。
◆
「おかえりなさい~。同盟は上手くいきましたぁ?」
支配領域に戻るとカノンが真っ先に駆け付けて来た。
「同盟は上手くいった」
「おぉ……良かったですねぇ」
「魔王カオルを見事に手玉に取れたのですねぇ」
「……それはどうかな」
俺は魔王カオルとの交渉を思い出して苦笑。カノンに魔王カオルとの交渉の様子を伝えた。
「かなりの切れ者だったのですねぇ」
「戦いを続けていたら、想定以上の被害を出していたかもな」
「シオンさんにそこまで言わしめるとは……私のライバル出現なのですよぉ」
「は?」
「え?」
「まぁいい。とりあえず、錬成Aランクで錬成出来るアイテムを抽出して、このメールアドレスに送っておいてくれ」
「はぁい! ユニークアイテムはともかく神器の存在は秘匿でいいですかぁ?」
ユニークアイテムは錬成Bランクから存在している。秘匿しても意味はないだろう。
「神器か……余っている神器も伝えていいぞ」
「え? 教えちゃうのですかぁ?」
「目玉商品とでも書いておけ」
「はぁい……上手く行けば、神器と“ユニーク配下”を交換出来るかもですねぇ」
ユニーク配下。それは創造がAランクになったら創造が可能になる強力な配下だった。
「創造Aランクで創造出来るユニーク配下の数はわかるか?」
「分かりますよぉ! 8体ですぅ」
「どんな配下かわかるか?」
「えっとぉ……攻撃型と防御型と魔力型とバランス型と成長型と武器型と……特殊能力型が2体なのかなぁ?」
カノンは自身の持つ知識に基づいて答えるが、どうも要領を得ない。
「成長型って何だ?」
「進化する先が豊富な種族ですぅ」
「武器型は?」
「武器の扱いが上手な種族ですぅ」
「特殊能力型は?」
「悪魔種はどんな種族なのかはわからないのですが……妖精種だと回復に特化した種族と、索敵に特化した種族がいるみたいですぅ」
「なるほど」
ユニーク配下か……。
是が非でも欲しいな。
俺はこちらが提供出来るアイテムのリストをメールにて送信。魔王カオルからの返信を待つのであった。
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