支配領域創造


 BPを振り分けた俺は、次に支配領域の創造へと取り組むことにした。


 まずは、自分の支配領域を確認。


 スマートフォンを操作して、【支配領域】の項目をタッチ。


『魔王シオン支配領域


 DP:0/10


 支配面積 6k㎡


 人口   0人


 タイプ  市街地


 設置施設 自室


 設置兵器 なし


 特殊制限 なし


 特殊効果 擬似的平和(残り709h)』


 そして、自宅周辺の地図が表示されていた。


 チュートリアルか説明書よこせよ。


 俺はスマートフォンに表示された画面を見て、ため息を吐いた。


 最初の項目、DP 0/10。完璧に意味不明だ。次に進もう。


 まずは、支配面積。6k㎡ってことは、今借りてるアパートが1kで、27㎡。つまり、0.000027k㎡だ。200000倍以上の土地を支配していると考えたら、大出世なのか?


 面積の求め方は、四角形なら縦×横、円形なら半径×半径×3.14。つまり、四角形なら縦2km、横3kmに相当する広さが俺の支配領域となる。円形? 計算が面倒だ。


 次いで、人口。そのままの意味だろう。俺はカウントせず、俺以外が存在しないので0人。ってか、人口とか増やせるのか?


 次いで、タイプ。市街地とある。先程、外を見渡したが、周囲に変化はなかった。つまり、今までの地形が市街地なのだろう。


 設置施設。自室。今俺がいる空間だ。これって施設なのか?


 ――!?


 俺は、あり得ないはずの仮説を想定してしまい、慌てて外に飛び出る。


 外へと飛び出て、ダッシュで3分。


 昨日までの俺であったら、息も絶え絶えになるはずが、今は身体が軽い。これも魔王になった影響なのだろうか?


 っと、それより、目の前の施設――通い慣れたコンビニの入り口に手を掛ける。


 マジか……。


 外からは、見慣れた光景。窓際に並んだ雑誌。奥には弁当が並んだショーケースが見えるが、中に入ろうにも扉はビクともしない。押してもダメ、引いてもダメ。


 力一杯叩いてみるが、ガラスで出来た入り口にはヒビ一つ入らない。


 設置施設――自室。つまり、自室以外の建物は全てオブジェクトと化したようだ。


 一ヶ月を待たずに餓死エンドとかないよな?


 今は異常事態に巻き込まれた為か、空腹も喉の乾きも感じないが、幸先は不安であった。


 とりあえず、ダメ元で帰り道にある民家の呼び鈴を押すが、反応は一切無く、玄関は全て固く閉ざされていた。


 設置兵器、特殊制限はなしだ。これは、後で創造すればいいのだろうか?


 特殊効果の擬似的平和(残り709h)は、時間から推測するに、709h(時間)は誰も俺の支配領域に侵入出来ないといったところか。


 自室に戻った俺は、【支配領域創造】のアイコンをタッチする。


 【タイプ変更】、【設備創造】、【兵器創造】、【特殊制限創造】、【初心者魔王お得パック】


 非常にツッコみを入れたい項目が一つあるが、上から順番にタッチした。


 【タイプ変更】をタッチすると、山岳地帯、荒野、海岸、溶岩地帯、氷雪地帯、洞窟、遺跡、城……等など、様々なタイプが出現した。


 一部のタイプはCP100で変更可能だったが、多くのタイプは俺の保有しているCPを大きく超えるポイントを求めてきた。


 次に、【設備創造】をタッチ。小部屋、大部屋、通路、建物、砦、木、山、川、沼、宝箱、入口、柵……等など、様々なタイプが出現。各項目の横に消費CPが無かったので、押してみると、そこから更に細かい分類(小部屋→和風、洋風、サイズなど)が出現した。


 消費するCPは様々で、CP100を大きく超える設備も多々あった。また、一部設備にはCP以外にもDPと言う謎の数値が記載されていた。


 次に、【兵器創造】をタッチ。矢、ガス、落とし穴、霧、床……等など、様々なタイプの兵器が出現。試しに矢をタッチすると、木の矢、鉄の矢、火矢、毒矢など、細かい分類が出現した。


 兵器というか、罠?


 次に、【特殊制限創造】をタッチ。禁止、強化、緩和の3種類が出現。試しに禁止をタッチすると、種族、魔法、武器、人数、男性、女性の項目が出現。強化、緩和には、火属性、水属性などの各種属性が出現した。


 特殊制限創造は、CPを消費せずにDPのみを消費するみたいだ。


 最後に、一番気になった【初心者魔王お得パック】をタッチ。


 画面には――、


『数の利で侵入者を撃退しよう! 【野外パック】


 強固な守りで侵入者を撃退しよう! 【ダンジョンパック】


 バランスよく侵入者を撃退しよう! 【ハイブリッドパック】』


 と三種類が表示された。


 お得パック。言葉から察するに、ある程度完成された支配領域の組み合わせだろうか。


 試しに、【ダンジョンパック】をタッチ。


『消費するCPは100だよ。一度選択すると、戻れないよ? 本当にいいの?』


 スマートフォンの画面に文章が表示される。


 俺は、一旦キャンセルを選択。【配下創造】、【アイテム錬成】の項目を確認した。


 軽く流し読む限り、配下の創造も、アイテムの錬成にもCPを消費することを理解した。


 CPは時間と共に緩やかに回復するんだよな?


 ならば、悩んでていても事態は好転しない。


 時は金なり! 俺は、【ダンジョンパック】をタッチした。


 そして、俺の意識はブラックアウトしたのであった。



  ◆



 知らない天井だ……。


 これの元ネタってかなり昔なんだよな。実際は、どんなシチュエーションで使ったんだ?


 目覚めた俺の視界には、岩肌に囲まれた天井が目に映った。


 あ!?


 ダンジョンパックを選んだ影響なのか、自室にあった私物はある一つの家電製品を除いて、全て消失していた。


 そのある一つの家電製品とは――冷蔵庫である。


 現代ではコードレスで稼働する冷蔵庫だが、この環境で無事に電気を受給しているのだろうか?


 冷凍庫を開けると、そこにはキンキンに冷えた【真核】が収められていた。


 これってやっぱり要冷凍なのか?


 【真核】のことはいずれ考えることにして、俺はスマートフォンを操作して【支配領域】を確認する。 


『魔王シオン支配領域


 DP:115/115


 支配面積 6k㎡


 人口   0人


 タイプ  ダンジョン


 設置施設 小部屋*24

      岩*68

      入口*1

      宝箱*5

      休憩所*2


 設置兵器 木の矢*4

      毒矢*2

      転がる岩*1

      落とし穴*1

      アラーム*1


 特殊制限 人数12人


 特殊効果 擬似的平和(残り707h)』


 先程は、自宅周辺の地図が表記されていた箇所には、凄くシンプルな迷路が表示されていた。


 えっと、これが俺のダンジョン?


 こうして、俺の支配領域は一面ダンジョンへと変化したのであった。

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