第24話 修学旅行(1)

 今日は待ちに待った修学旅行の初日です。

 と、いっても、今日はほとんど移動になるんだろうけどね。


 転移でパっと行く訳にもいかないしなぁ。


「おはよう龍馬くん!桜花ちゃん!」

「おはよ!龍馬っち!桜花ちゃん!」

「お、おはようございます。龍馬くん、桜花さん。」

「おはよう三人共!良い修学旅行にしようね!」

「おはよう。瞳も宏美も梨花ちゃんも体調ばっちりみたいね。」


 集合場所である学校で、同じ班になる瞳、宏美、梨花の三人と挨拶を交わした。

 学校から空港まではバスで移動、そしてそこからは飛行機だ。


 実は、僕は飛行機に乗った事がない。

 飛空艇はあるけど。

 今から飛行機楽しみなんだよね〜!


 ウキウキしていると、担任の小森先生の点呼が始まった。

 そして、説明と注意事項。

 

 バスに乗車したんだけど・・・僕の隣は先生です。

 これと言うのも・・・


「三上を女子と少しでも距離を取らせろ!!」


 ていう、クラスの男子達が先生に直談判した結果なのです。

 桜花や瞳、宏美や梨花は不服そうにしていたけど、先生がため息をつきながら、


「・・・はぁ。わかりました。では、移動の際は三上くんは先生の隣の席にしますね。」


 という言葉で収束、と思いきや・・・それに男子達が更に待ったをかけた。


「待って下さい!先生と一緒なんてそれこそ駄目です!」

「この後に及んで美人教師と一緒なんて!」

「そうだ!三上は俺たち男の中で一人寂しくしてればいい!!」


 そして、この言葉が先生の怒りを買ったみたい。


「いい加減にしなさい!なんですか一人で寂しくしていれば良いとは!!三上くんもクラスメイトなのですよ!三上くん?先生の隣で申し訳無いですが、あなたの班の人達は近くの席にするので、それで勘弁して下さい。」


 そう言って男子を叱りつけた後、僕に頭を下げた。

 先生がそんなに気にする必要ないのに・・・


「大丈夫ですよ小森先生。僕の事を気にかけてくれてありがとうございます。僕も先生の隣で嬉しいので、そこまで気にしないで下さい。」


 感謝の気持ちでそう言うと、先生は一瞬何故か固まった。

 

「・・・ん?先生?」


 すると先生はハッとして、咳払いをする。


「んっん!・・・ご、ごめんなさいね三上くん?その・・・向こうまであなたが退屈しないように、少しでもお話しましょうか。」


 少し慌てった様子で先生がそう言ってくれた。

 いや〜・・・綺麗なだけじゃ無くて、ちゃんと生徒の事を考えてくれてるなんて・・・なんて良い先生なんだろう!

 まさに先生の鏡だね!!


「・・・はぁ。」

「あ〜・・・桜花ちゃんの苦労がなんかわかった気がする・・・」

「桜花ちゃん大変だったね・・・こりゃあんなにブロックするのわかるわ・・・」

「・・・龍馬くんのバカ・・・」


 なんかコソコソと桜花達が顔を寄せ合って話している。

 なんだろうね?


 こうして、僕達はバスに乗り、飛行機に乗り換え、旅行先のハワイに移動した。

 移動中は楽しかった。


 桜花達も気にかけてくれたし、小森先生も面白い話や、進路の事、大学生活がどうだったか、なんていう興味深い事を話してくれたんだ。


 一番驚いたのが、中学時代の僕に起こった事について、先生が知っていた事かな。

 どうも、先生が行った大学の同級生が、僕の学校の先生になっていたらしい。

 そして、僕の進学に当たって、先生に連絡があったんだって。


 その先生の授業は僕は受けていないけど、なんか中学の先生達の間でも僕は有名人だったらしい。

 僕と揉めた先生は、どうもパワハラやセクハラが酷い人だったらしく、先生の同級生も迷惑してたんだって。

 そんな先生を退任に追い込み、揉めた相手である同じく有名人だった桜花と仲が良くなった僕。


 普通だったらいじめ問題に発展しそうな状況だったのに、独力でなんとかしちゃったのも高評価だったみたい。

 普段は真面目だったから、特に問題児では無いし、辞めた先生と同じ様に高圧的にしていた嫌われものの教師達は、僕に関わると同じ様に追い込まれる可能性があるって考えて、僕の在学中は凄くおとなしくなったから、まともな教師の中では救世主的に扱われていたらしい。

 

 そんなだいそれた事はして無いんだけどなぁ・・・


 で、そんな評判だった僕が入学するって事で、小森先生も気にしてたんだって。

 それと、もう一つ驚いた事がある。

 

 僕が一年生の頃、僕のクラスの担任は小森先生じゃ無かったから、そこまで先生の事を知らなかったんだけど、どうも僕は先生のプライベートの時に、先生を助けた事があるんだって。


 なんか、悪質なナンパの相手から助けたらしい。


 特定の生徒の肩をもてないし、一応流れで暴力的とも言える行為があったから、その事について当時は話はしなかったけど、この際だからって教えてくれて、改めてお礼を言われた。


 覚えていなかった事を素直にそう言うと、先生はにっこりと笑って、


「あなたの中では当たり前の行為だったのでしょうね。その方が素敵だと思うわよ。本当にありがとう。ボソッ(はぁ・・・生徒でさえ無かったら・・・いや、待ちなさい早苗!歳を考えなきゃ!・・・でももうすぐ卒業か・・・大学生となら・・・いや、三上くんには廻里さんがいるし!あ・・・でも、確か噂で・・・だから葛城さん達三人も!?)」


 その後、顔色をくるくる変えながら、小森先生は考え込んでしまった。

 ・・・僕、なんか言っちゃったかな?


「・・・龍馬のアホ。」


 桜花の呟きが何故か聞こえた。

 距離が開いてた筈なのに・・・僕は背筋の冷たさを気のせいだと思い込むことにした。

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