第6話 波乱の春休み(3)

 春休みの最終日前日、僕は進路を考える為に散歩に出た。

 進路と言っても、大学の事じゃない、その先の事です。

 春休み中、暇があるとそんな事ばかり考えていたんだけど・・・中々これって道が無い。

 

 まあ・・・暇もあんまり無かったんだけどね。

 前回、みんなの折檻の為中止になった、この世界で遊ぶって約束を果たす為、僕は頑張った。


 何を頑張ったかって?

 衆人環視の中、みんなに楽しんで貰えるように、ホストの様にあの手この手でもてなしたんだ。

 

 みんなを連れ歩くと、みんなの美貌に吸い寄せられる様に、視線が集まってしまう。

 見られるのは仕方がないとしても、中にはバカなことを考える奴もいるんだよね。

 きっちりO・HA・NA・SHIして分かって貰うんだけど。

 ・・・仕返しして来る奴には、よりきっちりと、ね。


 そんなこんなで、春休みももうすぐ終わりだ。

 今日は、桜花も予定があるみたいだったから、僕は考えをまとめる為に、散歩に出たってわけなんだ。


 大学を出た後に、どんな道歩むか・・・

 将来的には管理者になる・・・としても、それまでは普通に過ごさなきゃ行けない。

 向こうでは冒険者で良いとして・・・こっちではどうするか・・・


 それなりに稼ぎになる仕事で、ある程度自由が無ければ行けない。

 何せ、向こうとこっちを行ったり来たりしなきゃいけないからね。


 そうなると・・・会社を持つのが一番かもしれないけど、それはそれで大変そうだ。

 何か良い仕事はないものか・・・


 そうして歩いていると、公園に出た。

 

 公園の中を見ると・・・女の子?

 小学生位の女の子がキョロキョロとしている。


 もしかして、迷子なのかな?

 

 女の子は、長い金髪に赤い目、見た感じスレンダーな感じで、黒いワンピースを着ている。

 近くに親らしき人はいない。

 外国の子みたいだし、やっぱり迷子かもしれないね。


「どうしたの?迷子かな?」


 僕は公園の中に入っていって、女の子に声をかける。

 日本語が通じるかわからないけど・・・まあ、そこはスキルでなんとかなるでしょう。


「はい。道に迷ってしまって・・・」


 やっぱり迷子だったみたいだ。

 それにしても、日本人じゃないのに流暢な日本語だな。

 ・・・ん?

 なんかこの子から薄い神力みたいなの感じるけど・・・気のせいか?


「どうしたのですか?」


 僕の様子を見て、女の子が首を傾げている。

 いかんいかん。


「なんでもないよ。それよりも、僕と一緒に交番に行く?それか、待ち合わせ場所でも教えてくれたら案内するけど?」

「・・・もしかして、お兄さん誘拐する人?」

「ち、違うよ!?そんなつもりないよ!?僕はただ困ってそうだから助けようと・・・」

「・・・などと容疑者は供述を繰り返しており、」

「違ーう!!」

「冗談。」

「はぁ・・・」


 なんて小学生だ!!

 僕をいじるなんて大したものですよ!?


「それよりも、どうしようか?交番に行く?」

「・・・そうしようかとも考えたけど・・・あれ・・・」


 女の子が指差す方を見ると、公園の入り口に大きめの黒塗りのワゴン車が3台くらい来て、中から黒スーツの男たちが次々と降りてくる。

 保護者・・・にしてはみんないかつすぎるけれど・・・


「目標発見した。これより措置を取る。」


 男の一人がそんな事を無線で言った。

 そして僕を見て、


「そこのお前。その子を置いて立ち去れ。そうすれば痛い思いをせずに済む。」


 そんな事を言ってきた。

 ・・・人さらいか?


「この人達は私を狙っている。」


 女の子が僕に告げる。

 この子、富豪の子供か何かなのかな?


「そっか・・・君はあの人達と一緒に行きたい?」

「そんなわけない。」

「だよね。」


 僕は女の子を庇うように一歩前に出た。


「・・・忠告はした。おい。」


 男たちが近寄って来る。

 僕は女の子の方を見て、笑顔で言った。


「ちょっと目を瞑っててくれるかな?そうだね、20秒位ね。そうすれば怖くないよ?」

「・・・逃げないの?」


 彼女は僕の目を見てそう言う。

 僕は笑顔のまま頷いた。


「うん。大丈夫!こういう時は正義の味方が助けてくれるよ?」

「そんなの居るわけない。」

「そうかもね。でも、きっと君は助かるよ。」

「・・・わかった。」


 女の子は目を瞑った。

 良い子だね。

 さて・・・ゴミ掃除の時間だ。

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