第306話 ヴァリスの空間

 僕は、セレス様が生み出した渦の中に飛び込んだ。


 そこには・・・ただ何もない平原が続いている。

 ここがヴァリスの生み出した亜空間・・・


 僕が見回していると、遠くの方で、何か力を持った存在が多数消えていくのを感じた。

 おそらく聖女モドキと同じ存在だな・・・

 どうやらヴァリスが僕の存在に気づいたみたいだ。


 そしておそらく、多数の存在が消えた方向にヴァリスがいる。

 僕は魔法で飛び上がり、そちらの方向に向かった。


 15分くらい高速で飛び続けて、ようやく建物を発見した。

 この亜空間はかなり大きいようだ。


 建物はとても大きなもので、その横には倉庫の様なものがある。

 倉庫の中から巨大な力を感じる・・・

 でもなんだこれ?

 この間感じたヴァリスの力じゃない。

 もっと神聖な感じも・・・いや、ヴァリスの力も少し感じる。

 

 ヴァリスはあの時、黒瀬を利用するような事を言っていた。

 だから多分この混じっているのは、黒瀬の中にあったヴァリスの力かな?


 そんな考察をしていると、大きな建物の中から10人位が出てきた。

 

「無礼者!神たるヴァリス様の世界にまで図々しくも来るとは!」

「そうだ!虫けらが!」

「ヴァリス様は今、その崇高な目的の為に、ご尽力されている最中である!身の程を弁えて、可及的速やかに自死せよ!」


 ・・・むちゃくちゃだなぁこいつら・・・

 でも、気配察知に出るのは生物的な反応じゃない。

 こいつらは多分、ヴァリスの作り出した聖女モドキと一緒だ。


「おい!聞こえているだろう!このゴミが!!」


 ・・・イラッときた。

 ヴァリスのお人形遊びに、いつまでも付き合ってられない。

 みんな今この瞬間も必死に戦っているはずだ。

 こんな奴ら相手に、貴重な時間を掛けている場合じゃない。


「さっさと死ねこのゴ・・・」

「ちょっと黙っててくれる?人形遊びの趣味は無いんだ。」


 バキン!!

 僕は瞬歩で人形の前に行き、そのまま首をもぎ取った。

 人形はすぐに粉々に砕けた。


「な!?」

「いつのまに!?」

「なんてことを!!このゴミ虫の分・・・」

「僕は黙ってろって言ったよね?」


 僕から距離を取った人形達。

 でも、そこは僕の間合いだ。

 ムカつく事を言った人形に箭疾歩せんしっぽを放つ。

 

「際・・・で!?」


 しゃべり途中だったけどお構いなしだ。

 一瞬で距離を詰められ、突きで顔面を貫かれて砕ける人形。

 そして、そのすぐ横に居た人形の顔を掴んで、地面に叩きつける。

 こっちは、しゃべれないように、頬を挟む感じに掴んでやったから、うるさくなくて良かった。

 そのまま震脚で顔を踏み潰す。


 人形たちはそれを見て、慌てて距離を取った。


「結界が効かないだと!?」

「馬鹿な!?ヴァリス様が作り出した、至高の存在である我々の結界が!?」


 うわぁ・・・自画自賛にも程がある。

 僕は敢えて結界を使用している人形の前に行き、結界を砕きながら連環腿れんかんたいを放ち頭部を破壊した。


 一瞬で半数近く破壊され狼狽する人形達。


「弱い。弱いなぁ君達。流石は神(笑)の作り出した粗大ごみだね。弱い、うるさい、使えないの三拍子が揃ってる。」

 

 僕が肩を竦めながらそう言うと、人形たちはいきり立って、


「なんだと!下等生物の分際で!!」

「我々は神であるヴァリス様から生み出された至高の存在なのだぞ!!」

「その我々に向かって・・・」

「はい、しゃべった。次は君たちね。」


 僕は刀を取り出し、文句をつけた三体の首を刈り取る。

 そこで、ようやく残りの人形たちは口を閉じた。

 どうやら立場が分かったみたいだ。


「君たちが時間稼ぎをしているのは分かっている。僕にはそれに付き合うつもりはない。ヴァリスはどこだ?言わないならこの世界ごと消し飛ばす。」

「・・・我らが言うと思ったか?」

「どっちでもいいよっ・・・と。ハイ次の人。」


 僕は言わなかった人形の首を切り飛ばした。


「あ、悪魔め・・・」

「それが遺言?じゃ、さよなら。」


 もう一体も斬り飛ばした。

 最後の一体を睨む。

 その人形は焦った顔をした。

 なんだ・・・表情あるじゃないか。

 桜花達は、聖女モドキは終始無表情だったって言ってたけど。


「わ、私を殺せばヴァリス様の居場所はわからないぞ!?」

「うん?どっちでもいいんだ。自分で探すだけだしね。それで、それが最期の言葉でいい?」

「ち、違う!いや・・・私は」

「あ、見つけちゃった。ごめんもういいや。じゃ。」

「待て!・・・あ」


 僕は最後の一体も両断した。

 ふう。

 え?残酷だって?

 僕は敵には容赦しませんことよ?

 敵を喜ばせる趣味もないしね。

 やるなら徹底的に。

 せいぜい絶望してくれなきゃね。

 

「・・・よもやこのような所まで追ってくるとはな。」


 さあ本番だ。

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