第38話 捕えられた代厳正治


「昨日も死亡者人数は20人を越えました。 このウィルスと呼ばれている『キラーショック』は一体いつまで続くのでしょか?」


 フランと舞はまじまじとニュースを見ていた。



「ふわぁー、おはよう、 舞、お前ちゃんと昨日寝れたのか?」




 舞はウイルスによるクラスターのニュースを真剣に見ていた。

 

「続いてのニュースです。 またバイパーの一拠点が暴動を起こしました。 警察が向かいましたが、激しさが続き、特殊部隊が出動。全員を無力化し拘束しました。 けが人は複数出ており、一般市民も、大惨事になりかねないと怒りをあらわにしていました」 



「こいつら、まだ、こんな事やってんだな。 いい加減にしてほしいもんだ」


「そうね、こいつらにはいつか天誅を下さないといけないのかもね」


 舞はパイパーの行動が許せないのか、怒りを感じているのが伝わってきた。


「なんかお前が言うと怖えぇな」





バイパー本拠地



「おいおいおい。 ほんとに手間かけさせやがって。 逃げれると思ったのかお前?」


 代厳正治はバイパーの一味に拘束されて、バイパー総長の前に連れてこられてた。


 総長は事が大きくなりすぎて怒り狂いそうになっている自分を何とか抑えている。


「お前どうしてくれんだよ? あぁん! 見たか? お前を捕まえる為だけに、国とまで戦争しかける事態になってやがる、覚悟はできてんだろうな。 簡単に死ねると思うなよ」



 総長は今にもブチギレそうな怒りを抑えて、話しているが、いつ爆発してもおかしくはない。

いつもなら、そんな総長に、仲間たちがなだめ和らげようとするが、今回は違う。皆が目の前の男に怒りを覚えている。 仲間を沢山殺した一人の男に。 



「聞いてくれ! 俺ははめられてる」


 誰も聞く耳など持つはずがない。



「ふざけてんのかお前、 連れてけ」



「いいから話を聞けってんだ! 」


 代厳のその怒涛とまで張り上げた声は空間すべてを包み込んだ。全員の体が動きを止める。その言葉に総長は何かを考えた。その態度ときたらでかいにもほどがあるが、それ故に周りはその言葉の力強さに動きが止まる。



「お前らの仲間が殺された事は知っている。 沢山殺されたんだろ? 俺はそいつが誰なのか知っている。 それを奴らの思うまま真実を闇に葬られて悔しくないのか?」



 ふざけるなお前が殺したんだろうがと野次が沢山飛んでくる。 当然の事ながら、彼を目撃している男もいる。 そんな嘘で乗り切れるなんて話はない。


「ざけんなよ、てめぇ」


 総長はこういった男が大嫌いでしかたがない。


「しでかして捕まったら潔く、自分のやって来た事を誇って死ぬ。 俺の仲間を1人で殺してきた男なら、少なくともそれぐらいの覚悟あるでかい男だと思っていた。

それが今目の前にいるのはどうだ? とんだ拍子抜けだな。 お前は。 がっかりだぜ」



 仲間の声援が強くなる。 殺せ、殺せと声が上がっていく。



「だから、わかるだろう。 俺がそんな事できるだけの力量がある訳じゃねって。 そりゃここの奴らと喧嘩すりゃ30人の内には入れるだろうが、所詮その程度だ。 俺はあいつらの黒幕を知ってる、これがあいつらの手口だ」


「何だとこら!」


 その挑発めいた言葉が入った弁解に周りが騒ぐ。


「ちょっと黙ってろ! てめぇ嘘は見え見えでその糞みたいな話聞いてやる。 だけど、面白くなかったらすぐだからな」


 代厳の真剣な表情に、総長は話を聞いてみたくなった。 それは総長の所に政府関係の人間が来たと言う、思い当たる節もあったからである。



「あいつらは秘密の暗躍部隊を持っている。 これから先は命に係わる話だ。聞いたら本当に誰であれ殺される。 だから殺されたくない奴はこの話は絶対に聞かないでくれ」


 また周りからヤジが飛ぶ。


「誰も、てめぇの言葉を信じてないみたいだな。 まぁ、無理だけどよ。 さっさと話せくず」



 代厳は大きく一呼吸すると、周りに滞るほどの大きな声で確認をした。 


「俺は本気で言ったぞ。 最後の忠告としてもう一度だけ聞く。 この話を聞いたら、終わり。 俺と同じ立場に立たされ、汚名を着せられ、世界から理不尽に殺される。 今の俺を見たらわかるだろ。 知らないうちに殺されてしまう覚悟はしておけよ。 本当にいいんだな?」


 代厳は周りを見た。 内容ににビビってるやつな何人かはいた。 だが、ほぼすべてが信じていない。 そして、誰も動かないことを理解した。 それを確かめられると、ゆっくりと代厳は口を開いた。



「これは表だた公表されていない事だ。政府が秘密裏に葬りたい事や、誰も知らない所で事を片付け、政府にいいように操作する。 それを遂行する部隊がある 」


 周りは一斉に笑い出した。 なんだその作り話はと。



「いいから聞け!」


 再び代厳の多いな声が彼らの笑いを一瞬でかき消した。 総長の眉毛がピクリと動く。



「俺は、たまたま、ただたまたま、普通に歩いて見てしまっただけだった。俺はそんな事を知らないまま家族にその話をしてしまった。 黒いマントにフードを被った変な人を見てしまった。 その人は血を浴びていたと。 だからだ、4日後にはうちの家族は葬られてしまった。 政府の手によって。 何もできなかった。 ただ、政府の力にねじ伏せられ、何の証拠、もない。 俺は妹を目の前で殺されるのを隠れながら見ていた。 あの黒いマントに黒フード。 忘れはしねぇ。 容赦なんて微塵もなく妹は殺されたんだ。 奴らは見た目を変え、その罪を他人に擦り付ける、そうやって自分たちの存在を隠し、事件を捻じ曲げ、国民に納得がいくように放送する。 俺は何とか必死に逃げ切っていたがすぐに見つかった。もうだめかと思ったとき、俺はその組織と戦う少ないチームに助けられてなんとか今まで生き延びられた。」



 お前の過去話に付き合う時間はない。 と周りが騒ぎ出す。


「ちょっと黙ってろ!」 


 総長が、周りを止めた。 


「もう少し聞いてみようじゃねぇか? そいつらが俺らの仲間を殺したって言うんだろ?お前は」


 代厳は真直ぐとした目で話を続ける。



「そうだ。お前らが何故、今回政府のターゲットにされたかは知らねぇ。 だけど、裏部隊が動いたという事はそう言う事だ。 遅かれ早かれここの人間はすべて一掃される。 この話を聞いた。つまり裏部隊の存在を知ったからな」


 バイパー達は全く話がみえていない。 その内の一人が声を上げる。


「おい、どうやって俺たち全員を殺すって言うんだよ? ここには600はいるって言うのによ」



「いい例だ。 お前らもあれに怒り狂ったんだろ? 一つの拠点が壊滅された事件。 ニュースにも上がっていた。 あそこには200ぐらいはいたんじゃないか?」


 全員が東獄死武隊の長の事件を思い出した。



「あれを一人で簡単にやってのけるだけの部隊だぞ800なんて容易い。 それに奴らは少しづつ削っても行く。 もうどこにいても気を張っていないと死ぬってことだ」


 彼の言う事に、心が揺らぐもの等いなかった。ただの作り話。しかも下手な。 だが、総長だけは違った。 実際に政府の人間と話した時に何か変な違和感を感じ取っていたからだ。 そもそ役人が自分に会いに来ること自体、おかしな話だと総長は思っていたのだから。

 ただし、代厳の話しにも総長には一つ納得のいかない点があった。 知りえないはずの内容を代厳が知っているからだ。



「一つ質問だ。 お前がやってないとしたら、なんであんときの事件でやったのが一人だって言えるんだ? 」


 ニュースには誰がやったのか等報道されていない。 現場に居なければ一人でやったなど出てくるはずもない。 それに、現場で生き残った一人が代厳を名乗った男と、その姿を見ている。

 どうしたってこの嘘話を突き通す事など出来ない。


「それは、そいつらがそう言う組織だと知っているからだ。基本一人だ。 死んでも、組織はばれない。 お互いも仲間から知られない為に、一人で奴らは動く。 だから今回はそれに、俺の姿が使われた。 俺もこの機に乗じて葬る為だろう。 

 源にこうして、今役人の手を汚さずに、俺はバイパーに始末されようとしてる。 あいつらの筋書き通りだ」



 総長は代厳から目を離さない。


「後は予定通り、お前らを潰したら終わりだ。 国民からも今回の騒動でお前らは悪として認識されている。もう誰も助ける物はいねぇよ。 こんなんででいいのか?

 俺はやられっぱなしが嫌だ。 だから今回この機に乗じてお前らと一緒に戦いたいと思った。あいつらを許せねぇ」


 代厳の目から伝わる、恨みつらみの信念。 


「てめぇ、嘘で逃げれると思ってんのか? 」


 周りも誰一人代厳の言葉など信用していない。


「信じないなら、それでもかまわない。あいつらの筋書き通り、ここで俺を殺して、お前たちも全滅すればいい。ただし、これだけは言っておきたい。 お前らの仲間を殺したのはこいつだ」



 代厳は内ポケットから一枚の写真を出した。


 周りは早く殺せと止まらない。 総長はその写真に写る、黒フードの人物に見覚えがあった。


「こいつは……」


「後はお前らで決めてくれ。 あいつらにやられっぱなしでいるか、俺と一緒に攻撃してきた野郎に一発お見舞いしてやるか」




 総長はにやりと笑った。 


「おもしれぇ。 調べてやる」


「総長?! 信じるんですか? そんな奴の話し」


 連中は驚きでいっぱいだった。


「勿論信じた訳じゃない。 こいつが言ってる事が嘘ならそんときゃ殺せばいい」


 代厳が提案する。


「それなら、この写真を渡してやる。 こいつを探し回って見ろ。 ただし、少数でな。 そしたら嘘でもわかる」



「何だぁ? そいつが本当に居たら、お前の言う通りって事か?」


「違う。 きっとそいつは見つからねぇよ。 ただし、俺はここに捕まってるそして、そいつを探していると……」



 代厳は総長に事を話し、探したやつの結末を告げた。  総長はそれを呑み、部下3人に写真に映った黒フードを探しに行かせた。







――――令嬢学園、 お昼休み


 舞はコンビニで昼食を買っていた。 買ったはいいものの、舞は食べる場所に困っていた。 何せ、食堂に行けば目につくし、いつも食べてる中庭のいい場所はユウカに知られてしまったので、

もしかしたら探しに来てるかもしれない。 そんな事はないかもしれないが、出会っても困るのでいい場所はないか、と周りをきょろきょろしながら歩いていた。



 丁度後ろ向きに歩いている時、誰かと背中がぶつかる。


「うわっと」


「あっ……」


「あちゃ、ごめん。 大丈夫?」



 ぶつかった相手は本を落としたみたいで、拾い上げながら、大丈夫と語った。


 しかし二人が目を合わすと、



「あれ? またアンタ?」


「桜華、舞」


 二人は以前とお同じようにぶつかった事を思い出した。



「何で呼び捨てなのよ」


 舞はきやすく呼ばれたことに疑問を持った。

 

「てか、あたしの名前知ってるの? あんたは名前なんて言うの?」


 舞は自分だけ名前を知られているのは不公平だと相手の名前を聞いた。 本心は相手の名前を自分だけ知らないで、失礼だと思ったから、知りたかった。



「俺は、 麻木 祐爾あさぎ ゆうやだ」


「そう。麻木ね。 ていうか、アンタまた本読みながら歩ていた訳?

 本読みながらは危ないって私言ったわよね?」


 流石の麻木も今回ばかりは後ろ向きに当たってきた舞に非があると非難した。


「俺はちゃんと前を歩ていたけど? 後ろから当たって来たのそっちじゃん」


 何一つ間違いはない。


「そ、そうね。 まぁ細かい事は気にしない事よ」


 やりきれない表情を麻木は向けていた。


「な、何よその顔?」



 不服そうな顔を向けられると、つい意地で不機嫌な顔を返してしまう。舞なりの照れ隠しではあるのだが、これが周りには怒っていると捉えられてしまう。 本当にそう見えてしまうのだから、周りが悪い訳ではない。 舞が不器用だという事だ。



「こんな事前にもあったなって」



 二人はしばらく見つめ合った。 そして、一緒に笑った。


「あははは、 確かに」


「お前、ほんと人に当たるの好きだな。いつもこうなのか?」


「そんな訳ないじゃない、。 あんたこそ、懲りないわね。」


「おまえもな」


 傍から見れば美男美女の会話に誰しもがお似合いな2人だと思ってしまった。



 丁度その時、ユウカは誰か男性といる舞を見た。 出来れば自分の仲間を紹介したく舞を探していたのだ。 食堂にも、舞に呼ばれた中庭の隠れスポットにも行ってみたが、舞の姿は無かったので、その辺をうろついた時だった。 


 丁度楽しそうに笑い合っているところを遠くから見ていた。会話は聞こえないし何を話しているのかは分からい。だけど、見ているだけで、楽しそうなのはわかった。


「何だ。 あんな楽しそうに笑い合える奴がいるんじゃねぇか。 良かったな」


 ユウカはなんだか安心した気分になって、舞に声をかけるのをやめて友達の元へと戻る事にした。すこし心に生まれたもやもやが生まれて居たのも感じて。


「しっかしやっぱモテるんだな。あいつ。 あんなつんけんしてるから、友達もいないのかと思ったけど、美男美女カップるって感じか? きっと、周りから妬まれてんだろうな。 相手もイケメンだったし」


 美男美女で生まれてくるのも結構大変なんだなと勉強させられていたユウカだった。






 二人は周りの視線が気になってきた。 やたら、女子や男子に見られる。 舞はそう言っ目線には慣れてはいる。 麻木もまた、注目を浴びる事には慣れてたい。  が、今回は女子からの視線が妙に痛い。 その事に二人は居たたまれない気分でいた。 




「何? なんかすごい視線がいたんだけど……」


「そうだな。場所、移すか?」


「いいわ。 私はこれからお昼食べないといけないから、じゃあね」


 行く当てがないのを忘れて、とにかく移動しようとする舞を麻木が止める。



「丁度俺も飯にしようと思ってたんだ。 良かったら一緒に食わないか?」



 突然の誘いだったので舞は驚いたが、きっぱりと断った。 周りと関わる気はあまりない。


 当然周りの女子は、好きな男の声ならどこまでも聞こえてくる。 この会話の内容に、嫉妬や折角誘われているのに何故断るのか、と言った不思議な思いが蔓延していた。




「そう言わずに付き合って」


「ちょ、ちょっと! 」


 麻木は舞の手を強く引い手連れて行った。




「ここって、」


 連れてこられたのは、とてもキレに景色が見え、空気も美味しかった。 晴れた日には最高の場所で、こんなとこに入れることに驚きだった。

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