第25話 こ、このスライム潰れてる……。


 それからの俺は改めて受付の女性にお礼を言うと、仮でもらったギルドカードを手に、街の外へと向かうことにした。


 目の前に広がっているのは、晴れ晴れとした景色。

 どこまでも見渡せる草原で、そこからもう少し歩いて街から離れると、静かな場所へとたどり着いた。


 そして、ここで、


「んん〜ん、いい天気……っ」


 腕輪が光り、今まで腕輪に宿っていたテトラが姿を現してくれた。

 穏やかな風に揺れる草原に降り立つと、ぐっと背伸びをして、気持ちの良さそうな表情をしている。


「本当にいい天気だ」


「ねっ」


 俺たちは手を握り、目を閉じる。

 感じるのは暖かい陽気。それが肌をじんわりと温めてくれるかのようだった。


「さてと。それじゃあ薬草とスライムを見つけないといけないね」


「うん。一応、この辺りで見つかるはずだけど……」


 今回やることは、薬草採取10本に、スライムの討伐、三体だ。

 簡単な依頼だから、すぐに終われるはずだ。


「あ……あった」


 早速、一本目を発見。

 俺は地面に生えていたその草を抜いた。

 薬草採取は村にいた頃もやっていたし、結構得意だ。


「あ、こっちにもあったっ」


 同じように、薬草を見つけたテトラ。

 二人で地面にしゃがんで、探していくと、それほど時間がかかることなく、お互いに10本分の薬草を手に入れることができた。


「これだけあれば、十分かな」


 となると、あとは、スライムだ。

 スライム。弱くて、どこにでもいる魔物。それを三匹。


「あ、あそこに一体いるかも」


 テトラが指差した先にいたのは、まさにそのスライムだった。

 ゼリー状の丸い魔物だ。

 透明なその体内に透明な石が埋まっていて、あれがスライムの核だ。


 剣を手にした俺は、それをめがけてひと刺しする。

 カツン、と言う音がして、ひびの入った魔石が割れた。


 するとゼリー状の体が溶けるように地面に崩れていき、割れた核の中から一回り小さな魔石が出てきた。

 これはスライムの魔石で、討伐した証になるはずだ。


 ひとまず、あとは残り二体。


「あそこにもいた」


 早速、別のスライムを発見。

 せっかくだし、今度は別のやり方で倒してみよう。


 俺は持ち合わせていた魔石をバックから取り出し、スキルを発動する。


「この魔石を代償にして……」


「おお!」


 出てきたのは、眩く輝く淡い光。


「きゃ〜〜〜! やっぱりテオのスキル可愛い〜〜〜〜!」


 そのふわふわと浮かぶ光を見て、嬉しそうにするテトラ。

 その反応に俺は微妙な気持ちになる……。


 確かに可愛いのは可愛いけど、どちらかといえば……いや、やっぱり可愛いのならいいのかな……。

 どちらにしても、やっぱりテトラが喜んでくれるのは嬉しかった。


「でも、この前みたいに、眷属を作るのはまだできないのかも……」


「だね。テオのスキルには何段階かあるの。これは一段階目。魔石を代償に、魔石の力を具現化させるスキル。この可愛い光は魔力が凝縮されたもので、この前みたいに眷属を作るのは、魔石と、魔力、あと腕輪を通じて私の魔力も使ってくれたら、嬉しいかなっ。それに……お! あと少しで、眷属を出せるようになるみたいだよ! だから、それまでのお楽しみになるね……!」


 テトラが明るくそう言ってくれる。

 俺は作り出した光を動かして、そんなテトラの周りをぐるぐると回らせた。


「ふふっ」


 作り出した光は、自由自在に動かせるみたいだ。

 しばらくそれを試したあとは、地面にいたスライムへと発射した。


 光はすり抜けるようにスライムの体内に入っていき、俺が意識を込めると核に触れる直前にその力を解き放つ。

 バチィというかすかな音がしたものの……威力が弱かったみたいだ。


「ああ……! 惜しい……! だけどこの光は陽動とかには使えそうだね」


「うん。とりあえず……よいしょ」


 俺はスライムを剣で倒す。


 これで二体目を倒すことができた。残りは一体。


 そして最後のスライムはすぐに見つかったのだけど……。


「「……このスライム、潰れてる……」」


 草原の中に倒れていたのは、潰れたスライム。

 すでに息絶えようとしていて、所々ちぎれている。

 スライムは弱い魔物だ。だから、何をするでもなく、こうやって生き絶えた状態のものも発見されることが多々あると言われている……。


 俺とテトラはその側にしゃがみ、スライムの様子を確認した。


 そして……


「このスライムを回復させてみよっか……」


 テトラはそんなことを言うと、先ほど集めた薬草をスライムの体に押し込んだのだった。


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