第129話5-30魔王の間
「さて、これが最後の忠告だよ。悪魔の王よ大人しく自分の世界に帰れ!」
アガシタ様は真っ赤に血で汚れた手で指さしながら麒麟にそう言った。
『‥‥‥引けぬな。我にも意地がある。そして魔王様への忠誠もな!!』
言い終わる前に麒麟が動いた。
三又の槍を振りながらアガシタ様に襲いかかる。
「残念、僕は平和主義者だって言うのにな!」
言いながらアガシタ様は麒麟のその槍を見えない壁で防ぐ。
がんっ!
「アガシタ様!」
「もう、始めちゃうんだから! ティアナたちは下がって!」
アガシタ様は麒麟の攻撃を防ぎながら楽しそうにしている。
そして二人のメイドさんもアガシタ様のすぐ後ろに行きながら叫ぶ。
「フェンリル、ソウマ、エマ、リュード下がりなさい! あの女神暴れる気よ!」
シェルさんが警告を発し僕たちはすぐにその場から下がる。
「よし、それじゃあ楽しませてもらうか!!」
「アガシタ様、平和主義は何処行ったんですか?」
「暴れるならこっちに被害が来ないようにしてくださいよ!!」
「うっさいなぁ! 久しぶりの登場なんだ、好きにやらせろよ。ライムとレイムはティアナやシェルたちを守ってやれ! さあ、行くぞ悪魔の王よ!!」
どんっ!
言うが早いかアガシタ様が光って大きくなる。
それは銀の髪の毛を長くして背丈も姉さんくらいに大きくして、そしてまさしく戦乙女の様な鎧で大きな胸と身を包んでいるも気高く、そして美しい。
まさしく女神様の姿になる。
「この程度か悪魔の王よ!?」
『ふん、例え女神であろうと実体が有り、この世界で幾多の魂を喰らった我は無敵!』
麒麟はそう吠えると同時に口を開き光る弾を吐き出す!
しかしアガシタ様は左手に持つ大きな盾でそのれをあっさりと防ぐ。
どがぁぁあああぁぁぁんっ!
「そんなモノじゃこのオリハルコンの盾は破壊できないよ? まさかこれで終わりじゃないだろうな!?」
『まだまだ!』
言いながら今度は目にも止まらぬ速さで三又の槍を連続で打ち込む。
アガシタ様もその大きな盾で防ぐも、時折身にまとった鎧をかすめる。
「なかなか! だけどこちらだって!」
だっ!
一旦大きく下がって腰につるされた剣を引き抜く。
「今度はこちらの番だ! はっ!」
アガシタ様は剣を振ると光の刃となって飛んで行く。
『ぬっ!』
がっ!
しかしそれを麒麟も三又の槍で弾き大きく飛び退く。
「アガシタのやつ、本気で遊んでる!」
「えっ? あれで遊んでいるって言うんですかシェルさん!?」
アガシタ様と麒麟の凄まじい攻防を見ていたシェルさんがぎりっと奥歯を鳴らしてそう言う。
僕にとっては信じられない程の戦いだっているのにアガシタ様が遊んでいるだって?
するとセキさんは頷きながら言う。
「まあ、人のサイズでいてあの程度じゃぁ、アガシタ様は遊んでいるって感じよね~」
「そうでも無いのよ。アガシタ様の力は完全には回復していないのよ」
そういきなり話かけてきたのはピンク色の姉さんと同じ年くらいのメイドさんだった。
「そうですね。それでもあんな悪魔の王くらい簡単に葬り去れるはずなのに‥‥‥」
同じくメイドさん姿の青い髪の僕たちと同じ年くらいの女の子はつまらなさそうに言う。
「ライムもレイムも今までどこ行ってたのよ!? この千年間私たちがどれ程苦労したか!!」
「吠えない、吠えない。こっちにも事情が有るのよ」
シェルさんはどうやらこの二人も知っているみたい。
ピンク髪のメイドさんは手をひらひらと振る。
「僕たちは僕たちなりにこの世界の裏方で動いていたんですよ。君の様に半神格化した神の使いにはわからないでしょうけどね」
青い髪の女の子もそう言う。
するとシェルさんは二人を睨んでから大きく息を吐く。
「はぁ、まあいいわ。それよりアガシタってあの悪魔の王を倒せるの?」
「そこはまあ、腐っても元女神。大丈夫よ」
「そうですね、もしこれでアガシタ様がピンチになるなら僕が出ますよ」
時折飛んでくる光の刃や麒麟の吐く光の玉をこの二人は何でもなさそうに弾いている。
「ライム様、それにレイム様まで来るなんて‥‥‥ はっ!? まさかあの人にこの事を伝えたんですか!?」
姉さんはピンク髪のメイドさんに対して何か思いついて慌てて聞く。
「うん? エルハイミには伝えてないわよ? 彼女まだ世界の壁修復で忙しいんでしょ?」
「まったく、彼女の力をもってすれば修復なんてすぐなのに何をちんたらと」
「それは‥‥‥」
姉さんまでこの二人の事を知っているみたい?
どう言う事か聞こうとしたらエマ―ジェリアさんが声を上げた!
「ああっ! あの女神様がですわ!!」
ドカーンっ!
麒麟の攻撃を受けたらしきアガシタ様は何と天井を突き破り上の階に行ってしまった!?
『しまった! 魔王様の間に!! ええぇぃ! 魔王様!!』
そう叫んで麒麟も慌ててその天井の穴に飛び込んでいく。
それを見た僕たちは顔を見合わせてから部屋の奥にあった階段に走り始めるのだった。
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