第94話4-25町の様子
エダーの港町はウェージム大陸からの玄関口で古くからある町だった。
「ここで古い女神様と異界の神が戦ったって本当ですか?」
朝みんなで食事をしながらシェルさんに聞いてみると頷きながら教えてくれた。
「あの時は結構やばかったわ。本当に異界の神が召喚されてね。この町や隣のサボの港町、そして対峙していた軍隊の多くが異界の神召喚の生贄としてその魂を持っていかれたのよ」
シェルさんは少し憂鬱そうな顔をしてその事を思い出している。
セキさんもソーセージに突き刺すフォークが荒くなった。
ざくっ!
「今はほとんど姿を見ないけど秘密結社ジュメルってのがいてね、そいつの幹部だった神父がやってくれたのよ! 思い出すと腹立たしいわね」
ぱきっ!
音を立ててソーセージをかじる。
と、そこまで聞いて姉さんがびくっとなる。
「あの神父か‥‥‥ そう言えば最初の私が死んだ原因でもあったわね‥‥‥」
「ん? 姉さん??」
「ああ、何でも無いわよソウマ! それよりソウマったら酷いよ、今朝も優しく起こしてあげようと思ったのにぃ~」
「!?」
なんかエマ―ジェリアさんがびくっとなってこちらを見る。
部屋でも朝から姉さんは僕に絡んできていた。
しつこいからとっとと起きて着替えて顔を洗って下の食堂に来たけど置き去りにされた姉さんはここでも騒いでいた。
「ソ、ソウマ君たちって、その、昨日はもしかして‥‥‥」
「はい? 昨日は別々のベッドだったからよく眠れましたよ。姉さんが抱き着いて来ないからよく眠れたし」
なぜか顔を赤くしたエマ―ジェリアさんは僕のその話に大きく息を吐き何となく嬉しそうにする。
そしてパンにバターを塗って僕に渡してくれる。
「ありがとうございます」
「た、たまたまですわ。ソウマ君の所からだとバターを塗るのが大変ですからついでですわ!」
そう言ってプイっとそっぽを向く。
その様子をセキさんはカラカラ笑って見ている。
「さて、それじゃぁこの後は移動する為に乗合馬車かキャラバンがあるかどうか調べてみましょう。最悪は自前で馬と馬車を調達するわ」
シェルさんはそう言って椅子から立ち上がる。
僕たちも食事を済ませシェルさんと共に行動を始めるのだった。
* * * * *
「なにこれ?」
セキさんが乗合馬車の所で張り出してある紙を見てそんな事を言っている。
僕も気になって一緒に覗き込むとお尋ね者かな?
紙には数人の似顔絵が書かれていた。
「なになに? 『魔王軍は以下の者を探している。十二歳くらいの美少年。赤毛の凶暴そうな女。胸のでかいエルフ。こめかみにトゲを持つ少女。赤竜。大型マシンドール。見つけ出し引き連れてくれば褒美を取らせる』ですって?」
セキさんはそれを読み上げ似顔絵の前で首をかしげる。
張り紙の中にはやたらと瞳のキラキラした美少年、胸が大きく描かれた凶暴そうな赤髪の女、胸だけやたらとでかいエルフ、どう考えてもこめかみから角の生えた少女、赤い色の竜、見上げるほど大きなマシンドールが描かれていた。
少年以外は悪魔かと思うような怖そうな顔ばかり。
僕たちはみんなしてもう一度首をかしげる。
「お尋ね者ね?」
「魔王軍が探しているほどなのですの?」
「何このへんてこな赤い竜?」
「うーん、なんとなくこの美少年ってソウマに似ているわね?」
「え~? 僕ってこんなに目がキラキラしてるの、姉さん?」
世の中広い物で魔王軍が探す程のお尋ね者もいる事だ。
ちょっと関心しながら乗合馬車を確認すると今は無いとの話。
キャラバンも当面は中止らしいのでシェルさんは交渉して馬と馬車を入手した。
「とりあえずは移動手段は手に入れたわ。早いところ荷物を積んで出発しましょう」
言いながらどんどんと荷物を積んでいく。
そして僕たちはエダーの港町を出発するのだけど、僕は最後にあの張り紙をもう一度見る。
「うーん、こんな怖そうな連中とは出会いたくないなぁ。まあノージム大陸も広いしそうそう出会うことは無いだろうけど」
「ソウマぁ、出発するよ~」
「はいはい、今行くよ姉さん!」
姉さんに呼ばれて僕は急いでみんなの元に戻るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます