第83話4-14記憶の断片
「シェル様、セキ様、そしてティアナ様本当にありがとうございました」
戦場から戻ってきた僕たちはお城に戻っていた。
そして状況をアナス王女様に報告したら手を取ってシェルさんたちは感謝されていた。
姉さんは「ティアナ様」とか言われちょっと引きつった苦笑を受けベている。
「とりあえずはリリスが魔王にソウマが行くって事を伝えたから魔王軍の侵攻はいったん休憩ね。でもアナス、守りは厳重にね。あの魔王は強いわ」
シェルさんはそう言ってアナス王女様の頭を撫でる。
執務室で他に人が少ないからかな、ずいぶんとシェルさんがアナス王女様に優しい。
「ううぅ、うらやましいですわ。私も頑張ったのに、シェル様ご褒美くださいですわ!」
指をくわえてその様子を見ていたエマ―ジェリアさんはシェルさんにそう要求する。
「しかし、あの魔王軍確かに今までの悪魔どもと質が違っていたわね? あたしには敵わなくともそこそこの連中がいたもんね」
「それだけ本気だったって事よ。でも魔王自体は部下に任せっきりってどう言うつもりかしら?」
僕はそれを聞いて思い当たる節があった。
ミーニャって気分屋だし面倒な事は結構他人任せにするんだよなぁ~。
でも僕が戦争に関わるなら侵攻を止めるとか、何処まで本気で世界征服するつもりなんだろうか?
もしかしてそろそろ飽きて来た?
ありうる。
ミーニャってばつまらなくなると放り出す癖もあるし、興味のあること以外は全然やる気が無いしなぁ。
僕がそんな事を思っていると姉さんがシェルさんに聞く。
「それでシェルさん、すぐにでも北の元ルド王国ってところへ向かうのですか?」
「それなんだけど、ホリゾン公国のゲートはどうやら潰されてしまった様なのよ。他にも北の大陸にあるゲートを調べてもらったのだけど何処もかしこも使えなくなっているらしいの。となると、陸路を進むしかなくなるのだけどね」
シェルさんはそう言ってアナス王女様を見る。
「私たちが行っちゃうとすぐには助けにはこれないわ。大丈夫アナス?」
「シェル様、ありがとうございます。しかし私もこの国を治める者、次こそは遅れをとりません。ティナの国の国庫を開き更に『鋼鉄の鎧騎士』を、そしてユーベルトの叔父様にも連絡をしてマシンドールたちを都合してもらいます。大幅に戦力を増強します!」
アナス王女様はそう言ってぐっとこぶしを握る。
シェルさんはそんなアナス王女様の様子を見て優しく微笑み、そっと頬に手を添える。
「アナスは昔から頑張り屋さんだものね、分かったはこの国はアナスに任せる」
「はいっ!」
シェルさんにそう言われアナス女王様はとても嬉しそうにする。
「うううぅぅぅっ、うらやましすぎますわぁっ!」
エマ―ジェリアさんがハンカチを噛んでキーっとかしている。
「陸路かぁ。北の行った事の無い所へ‥‥‥ そして宿屋で泊まるとなればこれは絶好の機会ね! ソウマ、お姉ちゃん頑張るからね、ちゃんと優しくリードするからね!!」
「はぁ? まあ、ミーニャの所に行く前に鍛錬で鍛えてもらうのは良いんだけど」
なぜか興奮する姉さんに首をかしげる僕だった。
* * * * *
「ソウマ君、でしたね? 少しいいでしょうか?」
「はい? ああ、アナス王女様、何か僕に?」
魔王軍を撃退したと言う事でお祝いの宴が開かれていた。
ティナの国は小国だと言うのに食べ物もおいしくお酒もセキさんが喜ぶ強いお酒とかも有ってとても盛り上がっていた。
僕はちょっと疲れたのでベランダで少し涼んでいたらアナス王女様に声を掛けられた。
「あなたのお姉さんであるフェンリルさんはティアナ様の生まれ変わりと聞きますが、その、記憶は本当に戻っていないのでしょうか?」
「はい? 姉さんですか? さあ、僕も良くはわかりませんが姉さんはなにも思い出していないと言ってますけど」
「そうですか‥‥‥ 実はこの城にはティアナ様にしか扱えない『鋼鉄の鎧騎士』が封印されているのです。『赤の騎士』になるのはフェンリルさんの命に係わるとは知りませんでした。それで、もしよろしければ封印されている『鋼鉄の鎧騎士』をお渡しした方が良いのかと思いまして‥‥‥」
僕は宴が開かれている会場を見る。
姉さんはセキさんと一緒に杯をかかげながら美味しそうに肉にかぶりついていた。
「それって、姉さんを呼んで来た方が良いですか? それともシェルさん?」
「あ、いえ、その、封印されている『鋼鉄の鎧騎士』はティアナ様の記憶が戻らないと解けないと言い伝えされているのです。その力はオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』の中でも破格で空でさえ飛べたとか」
えっ?
「鋼鉄の鎧騎士」が空飛べるって、もしそれが本当ならとんでもない事じゃないか!?
ただでさえ強いのに空まで飛べたら竜族だって敵わないんじゃないだろうか?
「あの、だったら余計に姉さんを呼んで来てその『鋼鉄の鎧騎士』の封印を解いた方が良いんじゃないのですか?」
「ええ、私もそう思いますが‥‥‥」
アナス王女様はそう言ってちらりと宴を見る。
「それにはフェンリルさんがティアナ様の記憶を思い出さなければならないのです。シェル様は無理矢理に記憶を呼び戻すと今の人格と昔の人格がぶつかり合って最悪は心が破壊されてしまう可能性があると仰っています。なので私もどうしてよいのやら‥‥‥」
アナス王女様はそう言って申し訳なさそうにする。
でも、もしそれが本当なら試してみる方が良いんじゃないだろうか?
「アナス王女様、それでもやっぱり試してみる価値はあると思います! 姉さんたちを呼んできますね!」
僕はそう言ってすぐに宴の中に戻って行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます