第75話4-6エマ―ジェリア補給完了


 エマ―ジェリアさんとセキさんは補給の為に別の場所へ行った。



 「フェンリル、あなた何か思い出したの?」


 「いえ、私がそのティアナ姫だったと言いますけど全くと言って良いほど何も思い出していませんよ」



 姉さんがそう言うとシェルさんはにんまりと笑う。

 そして腕組みをして言う。



 「まあ無理して思い出さなくて良いわよ。むしろ私はその方が助かるからね」


 「は、はぁ?」



 なんでシェルさんが助かるのだろう?



 「コクの奴、たまたまあの人の子供を授かったからって有頂天になって! 見てなさい、この件が終われば私だって彼女に愛されまくって絶対に子供産むんだからね!」


 「あの、シェルさんそこがとぉっても気になるんですけど、女神様って女性ですよね? なんで女性同士で子供が作れるんです?」



 「それはね‥‥‥」



 シェルさんは姉さんを呼び寄せ耳元でこしょこしょと何かを話す。

 途端に姉さんが「ぼんっ!」と言う音を立てて真っ赤になって汗を流し始める。



 「なななななっ、何ですってぇっ!? 付いてるんですか!?」


 「そうよ、だから大丈夫なのよ!」



 姉さんはめまいでも起こしたかのようにふらふらと僕の所まで戻って来る。

 そして姉さんにしては珍しくぐったりとして僕に寄りかかって来る。


 「どうしたの姉さん? 大丈夫??」


 「ありがとうソウマ、理解の範疇を超える事だったのでめまいがしたわ。でもこれでわかった、私はやっぱりソウマが良いし今の女神様には近寄らないでおこう。うん」

 

 何やら一人で納得してうんうん頷いている姉さん。



 なんなのだろうね?



 僕はエマ―ジェリアさんに似ている女神様の像を見上げる。

 ホント、今の女神様って昔からとんでもない人だったよなぁ‥‥‥



 ん?

 なんで僕はそんな事を知っているのだろう?



 女神様の顔は僕に思い出せない感情を呼び戻させる。

 でも、そう言う人だった気がとてもする。



 僕は女神様のその顔を見ながら首をかしげるのだった。



 * * * * *



 「お待たせしましたわ、補充が終わりましたわ」



 エドガー大司祭さんと応接間でお茶をしているとエマ―ジェリアさんたちが戻って来た。

 するとセキさんはさっそくニヤニヤしながら僕の近くに来る。



 「ソウマ、ソウマ! 良い事教えてあげる! エマったら去年より胸が大きくなっているのよ! 補給する時に去年よりきつくなっていてちゃんと成長してるみたいよ!」


 「は、はぁ?」



 エマージェリアさんもまだ成人していないし、姉さんもあのくらいの頃からどんどん大きく成っていたから普通なんじゃ?



 「セ、セキぃっ!! 余計な事を言うのではありませんわぁーっ!!」



 「はははは、聖女様もソウマ君の前では年相応になるのですね。良い傾向です」


 「だ、大司祭様までからかわないでくださいですわ!」


 エドガー大司祭は心底楽しそうにそう言う。

 そして僕に向き直り頭を下げる。



 「ソウマ君、エマの良い友になってやってください。彼女は幼い頃より試練ばかりでした。セキ様を従えられる聖女として皆の期待を背負い、女神様再来とも噂されていました。エマの笑う顔など今までこの神殿で見た事が無い。ソウマ君、エマはあなたといると本当に生き生きしている」


 「はぁ、そうなんですか? 僕ってエマ―ジェリアさんに嫌われていると思うんですけど?」


 「そ、そんな事はありませんわ! ソウマ君はその、手間のかかる弟のようなモノですわ!!」



 ぷいっ!



 エマ―ジェリアさんはそう言ってそっぽを向く。

 その様子を見てエドガー大司祭様もシェルさんもセキさんも笑う。



 「エマ―ジェリアさんってシェルさんが好きなんですよね? まさかソウマの良さに気付いちゃったんじゃないでしょうね? 駄目ですよ、いくらエマージェリアさんだってソウマはあげませんからね」


 何故か姉さんはすっとエマ―ジェリアさんの横に移動してそんな事を言っている。


 「なっ、わ、私はシェル様が好きでソウマ君の事なんか‥‥‥」


 「本当ですか?」


 姉さんにそう言われエマ―ジェリアさんは僕の顔を見ると何故か赤くなる。




 「怪しい‥‥‥」



 姉さんがそうつぶやいていると周りがまた笑い声をあげる。

 うーん、そうするとエマージェリアさんは僕を嫌っている訳じゃ無いのかな?


 やっぱり女の子って良く分かんないや。

 ミーニャもそうだったけど。



 僕は何となくみんなにいろいろ言われているエマ―ジェリアさんを見ながらミーニャの事を思い出していたのだった。 


 

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