第72話4-3ベイベイの街


 ミーニャの待ち構える魔王城へ行く前にエマ―ジェリアさんの補給の為に聖地ユーベルトに行かなくてはならなくなった。




 「さてと、着いた。デルザ、ベーダ、アルフェ出迎えご苦労様です。こちらに変わりはないですか?」


 「はっ、各国の支店に出現しておりました魔王軍の輩も姿を消し、通常運営へと戻っております」

 


 シェルさんがゲートの魔法陣を操作して僕たちはベイベイのシーナ商会に戻っていた。

 そして戻ると同時にここの責任者となっている人たちがシェルさんの前に跪いている。

 


 「デルザ、これを」


 シェルさんはそう言いながらデルザさんに数個の小瓶を渡す。

 


 「おおっ! これが超レアアイテムの『ハーピーの雫』ですか!? 流石シェル様。我々ではどのような手段を取っても手に入れられなかったものをこうもあっさりと!」



 なんかデルザさんは大いに感動している。

 まあ普通だったら大変なんだろうなぁ。

 僕も危うくハーピーに食べられるところだったし。



 「してシェル様、すぐにでもティナの国に行かれるのですか?」


 「いいえ、エマの為に一旦ユーベルトに行きます。明日には出発しますからこちらの状況を教えてもらうのとこのレアアイテムについてスィーフ支店のゼーラたちと連絡を取りましょう」


 そう言ってシェルさんは執務室に行くと言う話になった。


 僕たちは仕事を邪魔しては悪いのでエマ―ジェリアさんについて街のお店行く事になるのだった。



 * * *


 

 「エマ―ジェリアさん、体は大丈夫なのですか?」


 「ええ、問題はありませんわ。補給と言ってもまだまだ余裕は有るのでそこまで急ではありませんわ」



 僕たちはベイベイの街中に出ていた。

 ここは真珠が安く手に入ると言う事で前から姉さんが欲しがっていた。



 「真珠も良いけどお腹すいたわね。エマ、途中の露店で串焼き肉買ってね!」


 「はいはい、分かっておりますわ。セキったら相変わらずお肉お肉と、ですわ」



 「ねぇねぇソウマ、あの美肌クリームって真珠の粉が入ってるんだって! こっちは真珠の粉入り飲料ですって!」


 「姉さん、何か怪しいグッズばかりに引かれてないで目的の品物買いに行こうよ」



 街中を散策しながら姉さんの変なグッズ購入を阻止する。

 僕たちだってそんなに懐に余裕がある訳じゃないんだから無駄遣いはだめだよ?



 「お姉ちゃんが奇麗になるのってソウマは嫌なの?」


 「そりゃぁ、奇麗な姉さんは僕の自慢だけどさ。だからと言って変なものにまで手を出さなくても姉さんは十分に奇麗なんだから良いでしょ?」



 「ソウマ! お姉ちゃん嬉しい!! 奇麗だなんてっ!!」



 「ぶっ!」


 しまった、余計なもの買わせたく無くて褒めすぎた?

 姉さんは街中でも容赦なく抱き着いてくる。



 「相変わらずソウマ君はお姉さんキラーですわ」


 エマ―ジェリアさんがプイっとそっぽを向く。

 何故怒っているかは分からないけど、助けてほしいんですけど!


 相変わらず姉さんの胸は息苦しくなる。



 「フェンリル、ソウマあそこの店よ。もぐもぐ」


 セキさんは両手で串焼き肉を持って食べながら小さいけど小ぎれいな店を指さす。



 「あの店は前にエマと来て奉納の舞を執り行う時に真珠の品をお願いしたけど、なかなかの腕前だった店よ。確か値段も安いってエマ言ってたし」


 「セキさんそれ本当ですか? 私イヤリングとかネックレス欲しいんですけど!」


 セキさんに教えてもらったその店に姉さんは僕から離れて早速見に行く。

 


 ああ、危なかった。

 セキさんのお陰で窒息しないですんだ。 



 「奉納の舞ですか、もうだいぶ前ですわね」


 エマ―ジェリアさんはそう言ってそのお店を見る。

 それをセキさんが後ろから軽くたたいて催促する。


 僕もその後を追ってお店に行ったのだけど‥‥‥



 「あらぁ! 聖女様では無いのぉ~!? お久しぶりですわねぇ~!!」




 化け物が出てきた!?




 「ソウマお姉ちゃんの後ろに下がって! なんでこんな所に悪魔が!?」


 「いやいやいや、これ人間だから、悪魔じゃないから」


 思わずなぎなたソードを構えそうになる姉さんをセキさんが止める。


 でも僕だって驚くよ。

 どう見てもあの悪魔と同じく筋肉隆々の青髭でブラウンの長い髪の毛で女性ものの服を着たのが出てくれば思わず身構えちゃうよ!



 「お久しぶりですわ。仲間がこちらで真珠を購入したくお邪魔させていただきましたわ」


 「もう、聖女様のお連れならお安くしちゃうんだからぁ! あら? 僕、可愛らしいわね? 聖女様、この子はだぁ~れ?」


 人間だと言うそのお店の人らしき人は僕を見るとまるで獲物を見つけた猫の様ににたりと笑う。



 ぞくっ!



 何故だろう、お尻に自然と手が行ってしまう。

 そして思わず姉さんの後ろに体が勝手に‥‥‥



 「その子も私の連れですわ。ソウマ君、フェンリルさんこの人がこの店の店主さんですわ。こう見えてもベイベイで一番腕の良い真珠職人さんですわ!」


 「はぁ、フェンリルと言います。よろしく」


 「ぼ、僕ソウマと言います」


 一応挨拶するけど「あらん、私はボニーと言うのよん! よろしく~」とあいさつを交わされて握手を求められたけど何故か僕だけ長々と握手させられ、やたらと腕とか肩とか撫でまわされたりもする。



 初めての経験だけど他の人に触られて鳥肌立つのってどう言う事!?



 そんな挨拶の後にお店に入る。

 そして僕も姉さんも驚く。



 「すごい! これ全部真珠ですか!?」


 「奇麗だね、姉さん!!」



 姉さんも僕も飾られている品々を見渡す。

 男の僕でさえ凄いものだと一目でわかる作品の数々。


 もう姉さんなんか飛びついて離れない。



 「うわっ、これも良い! あれもステキ!! ああぁん、迷っちゃう!!」



 「久しぶりに来ましたがいつみても素晴らしいですわね?」


 「そうね、あたしは金や銀、宝石の方が好きだけどこの店に来ると真珠も良くなってくるわよね?」



 女性陣は真珠の作品を見てうっとりとしている。

 でも男の僕には必要の無いものだから凄いとは思うけどそこまで飛びつくことは無い。



 「あらぁん、ソウマ君は真珠があまりお好きでないのぉ?」


 「いえ、凄いとは思いますけど男の僕には不要な物かと」


 僕がそう言うとボニーさんは目をきらーんと光らせて僕ににじり寄って来る。



 「そんなことは無いわよぉん! 男でも施術で使えばとぉってもステキになれるわよん! そうだソウマ君、私と試してみない?」



 意気込むボニーさんになぜか身の危険を感じ僕は引き気味に辞退する。



 「い、いえ。遠慮しておきます。何故だかものすごく後悔しそうなので」


 「あらん、残念。でも無理矢理はいけないものね~」



 ものすごくお尻をこの人に向けたくない。

 何故だろう、僕の本能がずっと危険信号を発している。




 「ソウマ君、お姉さんキラーだけでは無かったのですわね? まさかボニーさんまで手籠めにするとかですわ!」


 「いや、エマこの場合ソウマの方が危なかったんじゃ無いの?」




 歓喜している姉さんを横にエマ―ジェリアさんとセキさんは僕とボニーさんを見ながら何か言っていたかのようだった。   

  



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