第59話3-18登山
サスボの村では何だかんだ言って色々あったけど僕たちの持ち物やお金も返してもらってさらにお詫びとして贈り物もいろいろともらってからエデルの村に向けて出発をする事になった。
「それではこの者がエデルの村まで道中案内をいたします。ダグスこちらへ」
「ダグスと言います。エデルの村まで案内をさせていただきます」
ハリボ村長にダグスと呼ばれた男の人はシェルさんやセキさんを見てびくびくしながら挨拶をした。
「ふぅうぅん、ずいぶんとガタイの良い人ね?」
セキさんはダグスと言う人を見上げそう言う。
「エ、エデルの村は険しい山の崖上に有るのでそこまで行くには体力のある者でないと行けないのです」
ハリボ村長は慌ててそう言う。
「まあいいでしょう。ちゃんと案内してね? じゃないとセキをけしかけるわよ?」
「ひぃぃぃぃっ! も、勿論でございますぅ! ダ、ダグスよ、粗相の無い様にご案内するんだぞ!」
「わ、分かっております村長!!」
二人ともガタガタ震えながらシェルさんとセキさんを見ている。
うーん、一体この二人ってどんな風に噂が伝わっているのだろう?
僕は改めてこの二人を見てからエマ―ジェリアさんを見ると自分を指さしてからパタパタと手を振って「私は違いますわよ!!」と言わんばかりの顔をする。
『この村でもたらふく食わせてもらったから当分大丈夫ね!』
リリスさんはなんか肌のつやがもの凄く良くなっている。
きっとたくさんの人の血を吸ったのだろう。
死人が出てなきゃいいのだけど。
「うーん、流石にアイミを引っ張り出してみんなを乗せて飛んで行くのは無理っぽいわね?」
姉さんはみんなを見てからそう言う。
確かにいくらアイミが大きいからってこの人数を乗せて飛べるわけではない。
するとエマ―ジェリアさんはセキさんを見る。
セキさんはきょとんとしてから嫌々と首を横に振る。
「嫌だかんね、みんなを背中に乗せて飛ぶなんて事! 第一竜の姿になるには結構魔力使うしお腹減るから嫌よ!」
赤竜なのに竜の姿になるのに魔力使うんだ。
僕はきょとんとセキさんを見る。
すると僕気付いてセキさんは面白くなさそうに言う。
「昔、母さんたちに負けて再生した時に魔力を与えられて今の人の姿で生まれたの。記憶は残っているけど姿形は母さんたちのおかげでこの通り。まあ黒龍のコクも同じなんだけどね」
「黒龍?」
「あたしと同じ太古の竜だけど今は女神様の僕で女神様の子供産んで子育てに忙しいのよ」
うーん、女神様って女の人だよね?
なんでセキさんみたいな竜の女の人に子供を産ませられるの?
「そのうち私だってあの人の子を産むわよ!!」
シェルさんもやって来て何故か熱く語る。
いや、シェルさんは女性だよね?
でも女神様の子供って一体どう言う事!?
僕はまたまたエマージェリアさんを見る。
すると、ふふふんっと笑ってびしっと僕を指さす!
「ソウマ君の疑問は簡単ですわ! 女神様だからできるのですわ!!」
「そう言うモノなんですか?」
「そう言うモノなのですわ!!」
思わず姉さんも見るとなんかぶつぶつ言っている。
「本当にそう言う話を聞くとイラついてくるのはなんでだろう? なんかその女神様に体にいろいろ教えないといけない気がしてくるのはなんでなんだろう??」
まあいいか。
僕がそんなこと考えても仕方ない。
「あのぉ~、そろそろ出発してもよろしいでしょうか?」
僕たちの全く関係ない話に申し訳なさそうにダグスと言う案内の人は話しかけてくるのだった。
* * * * *
サスボの村を出発してはや半日、山を登り始めたけどだんだんと険しくなってきた。
「なんなのですのぉっ! こんな所に村なんてあるのですのぉっ!?」
びゅぉぉぉおおおぉぉぉ~
エマ―ジェリアさんが叫んでいる。
まあうちの村と同じく他の場所行く時って大体がこうだよね?
僕たちは断崖絶壁の岩場を登っていた。
うちの村、ジルの村もティナの国や他の場所に行くには断崖絶壁に出来た脚幅の細い道を行かなきゃならない。
落ちると谷底で結構高いから受け身を失敗すると骨折しちゃうんだよなぁ。
エデルの村もうちの村と同じような感じなのかな?
「はいはい、みんな頑張ってね」
シェルさんは一人精霊魔法で空に浮き上がってゆっくりと上昇している。一応落ちた時の為の保険とか言っている。
「うーん、登るのは別にいいのだけどやっぱり胸がつかえるのよねぇ」
「ああぁ、わかる。人型だとこういう時に胸って邪魔よね」
「お、大きければいいと言うモノではありませんわぁっ!!」
『はぁ、魔王様の命令とは言えこのあたしがこんな苦労をしなきゃなんてね』
みんな文句言いながらこの断崖絶壁を登っている。
「み、皆さんもう少しで休憩できる所です!」
先頭を行く案内役のダグスさんはそう言って真上にあるくぼみに入っていく。
僕たちもそこまで行くと確かに広々とした場所に出る。
「ぜぇーはぁーぜぁはぁー、こ、こんな所に人なんか住めるのですのぉ?」
「僕たちの居たジルの村も似たような場所に在りましたよ?」
「そうそう、気をつけないと谷底に落ちるのよねぇ~」
肩で息をしているエマ―ジェリアさんに水筒を渡しながら僕たちはジルの村の事を思い出す。
ずっと自分たちのジルの村は田舎の村だと思ったけど、やっぱり他の村も同じ様な所にあるもんだよね?
「いや、ソウマ君たちは特別ですわよ。あの村自体も特別なのですわよ!」
「そうなの?」
「そうなんだ??」
姉さんも僕もそれがあたりまえだったのできょとんとしてしまう。
「まあジルの村は確かに特別よね。だから余計に手をかけてあげなきゃなんだけどね」
シェルさんはそう言いながら遠くの方を見ている。
既に日も傾いてきて今日はここまでになりそうだ。
「皆さん、明日にはエデルの村に着きますが今日はここで休みましょう」
ダグスさんがそう言って今日はここで野営する事になった。
僕はシェルさんと同じく遠くに沈み始める夕陽を見るのだった。
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