第55話3-14ソウマの実力


 気が付いた。

 


 えーと、僕は何をしていたんだっけ?

 まだぼんやりとする頭を振ってみるといろいろと違和感を感じる。


 まず両手両足が縛られているみたい。

 そしてどこかの倉庫か何かかな?

 床に転がされているけど部屋の端に色々なものが乱雑に積まれている。


 見える範疇で首を回し周りを見るけどいるのは僕だけみたい。



 「う~ん、これって村でいじめられた時の拉致監禁と同じかな? アノス君たちが良くやってくれたんだよなぁ。大体はミーニャがアノス君たちをボコって助けに来てくれるんだけど、これってサスボの村の人の仕業だよね?」



 姉さんやシェルさんたちも同じく拉致監禁されているのかなぁ?

 まあ姉さんならこの位の縄引き千切って大暴れするだろうけど。


 さてと。


 僕は手を縛っている縄の様子を見る。


 うん、麻紐か何かだね。

 この位なら引き千切れそうだね。

 もし鎖だったら僕じゃ引き千切れないもんな。



 ぶちっ!



 うん、簡単に引き千切れた。

 村で拉致監禁されていた時は鎖だったもんね~。


 さてと、足も麻紐だから引き千切ってと。



 ぶちっ!



 これでまずは自由に動けるっと。

 で、次に持ち物とか確認だけど流石にショートソードは取られちゃったね?

 他には‥‥‥


 うん、盗賊から奪った路銀やお財布がなくなってる。

 流石にこれは困るから返してもらわなきゃ。


 僕は部屋の中を確認するとやっぱり倉庫の様でジャガイモとかの食材なんかが置いてある。


 扉は勿論外からカギがかけられていて小さな窓が有るけど、どうしようかな?

 窓の格子に手を付けると鉄のようだけどこれくらいならもしかして‥‥‥


 「よいしょっと!」



 ぼこっ!



 あ、根元のレンガが壊れた。 

 だいぶ古いからもろくなっていたのかな?

 でもこれなら何とか這い出れそうだ。


 

 ぼくはその窓から出ると半分地下室になっていた倉庫か何かだったみたい。


 「とりあえず姉さんたちを探さないとだね」


 僕はすぐに「操魔剣」を使って脚力を上げ屋根の上に飛び上がる。

 そして村の様子を見るけど夜なので誰も出歩いていない。

 そして僕が捕らえられていたのはどうやらあの酒場の相向かいの小屋のようだった。

 人は住んでいる感じがしないのでもともと倉庫か何かだったのだろう。


 そこから相向かい酒場を見下ろす。

 どのくらい時間が経ったかは分からないけどもうすでにお店も締まっていて明かりもほとんど消えている。

 二階のとった部屋を見ても明かりがついていないからやっぱり姉さんたちもどこかに捕まっているのだろう。


 「参ったな、何処にいるのか分からないや」



 『ありゃ? 誰かと思えばソウマ君じゃない?? なになに? こんな夜更けに屋根の上で何してんのよ? もしかしてお姉さんとしたくなっちゃった? 良いわよぉ、さっきの男って淡白だったから食べ足り無かったのよねぇ~』



 いきなり声を掛けられてびっくりしたけど、何と屋根の上で僕に声を掛けてきたのはリリスさんだった。

 なんか心なしかお肌がつやつやしているような‥‥‥


 「リリスさん、大変だよ! 姉さんたちが捕まった! 僕もさっき拉致監禁されたところから逃げ出してきたんだ、姉さんたち探すの手伝ってよ!」


 『ありゃ? あのエルフたち捕まったの? またなんで??』


 首を傾げ僕と同じくしゃがみ込んで声を低くしてひそひそ話になる。

 

 「分からないよ。みんなで食事していたら急に眠くなって気付いたら拉致監禁されていたんだよ。多分姉さんたちも同じはず。宿屋の二階に明かりがついていないからきっとどこかに捕まっていると思うんだよ」


 僕がそう言うとリリスさんは宿屋を見てから僕を見る。


 『ふぅ~ん、あのエルフたちならほっておいても大丈夫だろうけど、君の姉が女にされちゃうのは困るんでしょ? あの聖女って女の子もそうよね? ああ、ドラゴンの化身もそうだっけ? まあいいわ、手伝ってあげる!』


 そう言ってリリスさんはひょいっと宿屋の屋根にまで飛び移る。

 そして窓の外にまで来ると中の様子を見てその姿をすぅぅっと体を薄く半透明にして中に入っていく。



 凄いな。

 悪魔ってあんな事も出来るんだ!



 僕は待つ事しばし、そのうちリリスさんがまた薄くなった状態で窓の外へ出てきた。



 『お待たせ、ここにはいないわね。君は何処に拉致監禁されてたの?』


 「ああ、この建物の地下です。もしかして姉さんたちもここかな?」


 「多分それは無いでしょうね。君の連れって美人ばっかだったからもっと他の所に連れられて行って、いけない事されちゃっているかもしれないけど』



 何それ?

 僕より扱いが酷いって事かな?

 あ、でもシェルさんはお金持ちだし、エマ―ジェリアさんも聖女様だからもしかして身代金要求されちゃうとか!?


 でも姉さんはお金持ちじゃないけどね。



 僕がうんうん悩んでいるとリリスさんはため息をついて言って来た。



 『仕方ない、あたしが宿屋のおやじから聞き出して来るわ。まあおっさんは加齢臭とかあってあんまり好きじゃないんだけど、ソウマ君の為だもんね。魔王様とやっちゃった後でいいからソウマ君もつまみ食いさせてね? さてと、サキュバスの本領発揮と行きますか!』



 そう言ってリリスさんはまた相向かいに宿屋に忍び込んでいくのだった。



 ……僕ってリリスさんに体つまみ食いされちゃうの?

 痛そうだし、食べられちゃたらその部分を【回復魔法】じゃ治らないよ?


 【回復魔法】は体の組織を活発化させ傷を早く治す魔法だけど、欠損した部分までは治らない。

 もし欠損部分を治すのならば【治癒魔法】か【蘇生魔法】が必要になるけど今僕らの中で【治癒魔法】が出来るのはエマ―ジェリアさん只一人だけ。

 【蘇生魔法】はまだできないとか言っていたけど【治癒魔法】は出来るもんなぁ。

 【治癒魔法】は外部から魔力を込めてその欠損部分とかを再生するから魔力を込めれば込めるほどその再生は完璧になる。


 ‥‥‥エマ―ジェリアさんと仲直りして【治癒魔法】をかけてもらえるようにしなくっちゃ。



 僕はひそかにそう思うのだった。

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