第40話2-19セキ
「さあ、面倒なお客様にはお帰り願おうじゃない?」
『ふん、女用心棒か? しかし手加減はせんぞ!!』
レアアイテムの取り寄せを要求する魔王軍のライオン頭の人は取り寄せが困難というシーナ商会のシェルさんと双方譲らない押し問答になっていた。
そこへセキさんがにやにやしながら指をぽきぽき鳴らして割って入る。
ちょっと、セキさん良いの!?
「シェル、まだ店の中に入っていないからお客あつかいしないで良いわよね?」
「はぁ、セキ。それでも危害を及ぼさない人をお客様以外の扱いは良くないわよ?」
「無理難題を吹っかけて来てる時点でお客じゃ無いわよ!!」
セキさんとシェルさんはそれだけ言うとすぐに動き出す。
エマ―ジェリアさんが後ろでお店の前に【絶対防壁】を展開する。
シェルさんはすぐに風の魔法で周りの人に警告をする。
『シーナ商会にご来店のお客様、ただいま 当店玄関先で災害が発生しております。お客様におかれましては安全の為に当店内に非難していただきますようお願い致します』
これって災害なの!?
シェルさんのその広報に思わず聞きたくなってしまう僕だったけど次の瞬間納得してしまった。
ドガぁん!!
ばきっ!
ごばぁっ!!
凄い音がして見てみれば店先に砂埃が舞い地面はひび割れ砕石が飛んでくる。
エマ―ジェリアさんの【絶対防壁】が無ければお店の入り口に飾ってあるガラス張りの商品展示だって粉々になっていただろう。
「凄い! 流石セキさん!!」
姉さんが感嘆の声を上げる。
しかしあのライオン頭もすごい。
セキさんの攻撃を見事にかわしている。
『ふはははははぁっ! なかなかやるではないか女! だがこれが受けられるか? 行くぞ【閃光獅子牙】!!』
そう叫ぶとライオン頭の両腕が光って無数の光の線がセキさんを襲う。
「うわぁっ!」
しかしそれらの光の線をセキさんは大きく飛び上がってしかも背中に蝙蝠の様な羽を生やして大きく飛び上がる!?
『なに? 俺の【閃光獅子牙】を避けるか!? 貴様一体何者だ!?』
上空に羽をはためかせ浮いているセキさんにライオン頭は叫ぶ。
「名乗るほどの者じゃ無いわよ。それよりもよくもやってくれたわね! 今度はこっちから行くわよ! 【赤光土石流拳】!!」
セキさんは上空からまるで炎の土石流かのように沢山の拳を放つ。
それは逃げ場がないかのようにライオン頭を襲う!
『凄まじいが当たらなければどうということは無い!!』
ぶんっ!
一瞬ライオン頭の人が揺らいだと思うとセキさんの放った土石流の様な炎の拳が降り注ぐ。
流石にあれを喰らったらひとたまりもないだろう。
どごぉがぁががががががぁ!!
「どうだ!?」
セキさんは地面に降り立ち打ち込んだそこを見る。
しかしシェルさんが警告の声を発する。
「セキ! 後ろよ!!」
ヒュンっ!
つさっ!
「くっ!」
『ほう、よく避けたな? しかし悪魔の傷は容易には治らんぞ?』
シェルさんの警告に大きく飛び退いたセキさんだったけど左手に赤い一閃された傷が出来そこから真っ赤な血が流れ出る。
セキさんはそれを見てにやりと笑う。
「あたしの体に傷をつける奴なんて久しぶりね? でもこんなの何ともないわ!!」
そう言ってセキさんは何と口から炎を吐いて自分の左手を焼く。
真っ黒に焦げたそれはそれでも傷口の止血をした。
『炎を吐きその角、その尾尻に背の羽根。貴様ドラゴンニュートか!?』
「残念、あたしはドラゴンそのものよ!! 【煉獄相竜牙】!!」
そう言ってセキさんは両手を炎に包んだまま爪を伸ばしライオン頭に襲いかかる。
『おのれ! 【閃光獅子牙】!!』
またまたライオン頭の両腕が光って無数の光の線がセキさんを襲う。
しかし今度はセキさんは避けずにその光の線を全て炎の爪で弾き飛ばす。
「喰らえ! ドラゴン百裂掌!!」
セキさんは弾き終わったその瞬間炎をまとったその掌で目にも止まらない拳の嵐を打ち込む。
それは一つ一つがその爪で搔きむしるかのように打ち込まれていく。
『ぐおぉおおおおぉぉぉっ!』
どすっ!
「何っ!?」
体中に引っかき傷の様なダメージを受けたライオン頭は最後にセキさんが撃ち込んだ渾身の一撃を左手を犠牲にして受け止めた。
『我が心臓を狙ったその一撃見事だが届かぬわぁっ!』
「やばっ!」
ぐぐぐぐぅっ!
バキッ!!
左手に爪が刺さって一瞬動きを止めてしまったセキさんにライオン頭は残った右腕に筋肉を膨らませ殴り飛ばす。
それはセキさんの体を大きく吹き飛ばしシーナ商会の二階の窓まで飛ばされた。
がちゃーん!!
流石にエマ―ジェリアさんの【絶対防壁】は二階まで展開されていなかったのだろう。
セキさんはものの見事にお店の中に吹き飛ばされる。
『逃がさんぞ!!』
そしてそこへあのライオン頭も飛び込む。
慌てて僕たちも二階に上がるのだった。
*
『なななななななななッ!!!!』
「くうぅ~、やってくれたわね!」
階段で二階に上がってみると窓際の所でセキさんが商品を体中に引っ掛けたままよろよろと起き上がる。
でもなんかライオン頭の様子がおかしい。
『なんじゃここはぁっ!! にょ、女人の下着だらけではないかぁーーーー!!』
なんか顔を真っ赤にして叫んでいる?
あ、そう言えばこれって姉さんの下着と同じやつだ。
いっつも思うんだけどよくあんな三角の小さな下着で済んでるよね?
ライオン頭はふるふると頭を振って数歩後ずさる。
「何よ? 下着くらいで大騒ぎしてんじゃないわよ!!」
セキさんは頭に下着をかぶって肩や角に胸当てをぶら下げたままライオン頭に殴りかかる。
どがっ!
「へっ?」
『ぐぉおおぉぉぉぉっ! 駄目だ力が入らん、ここは俺には刺激が強すぎるぅーーーー!!』
ぱぁぁああああぁぁぁぁんッ!!
なんとセキさんの拳はすんなりとライオン頭の胸に突き刺さりその瞬間ライオン頭は青い光の粒子になってはじけ飛んで消えてしまった。
「あー、えっとぉ‥‥‥」
セキさんは体中に下着や胸当てをぶら下げたまま自分のその手を見ている。
「セキ、お店の下着売り場がめちゃくちゃじゃない? 全く。あいつの取り巻きもイーラやシータスたちが片付けたわ」
シェルさんは僕の後ろでその様子を見てため息をついている。
確かに売り場がめちゃくちゃだった。
「こ、この下着は! ねえねぇソウマ、これってお姉ちゃんに似合うと思わない!? あ、ここだとあたしの胸当てのサイズもある!!」
「ソ、ソウマ君は見ちゃだめですわぁっ! 男の子はあっち行ってですわぁ!!」
姉さんもエマ―ジェリアさんもなんか騒いでいる。
僕はまだしげしげと自分の拳を見ているセキさんを見ながら思う。
うん、あのパンチは効くんだよなぁ、ライオン頭の人もあれには耐えられなかったんだなぁと。
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