第6話1-6エルフの珍客


 「とうとう見つけたわよ!」



 いきなりそう言ってその女性はフェンリル姉さんにびしっと指をさす。



 「わざわざ迎えに来てやったんだから大人しく付いてきなさいよ? って、あれ??」



 見ればその人は人間では無くエルフという種族の人だった。


 うわー、僕初めて見る!

 透明に近い金色の髪の毛、真っ白な肌、切れ長の目には深い緑色の瞳。

 そしてフェンリル姉さんにも負けない大きな胸!


 見た感じ姉さんより少し年上かな?

 ネミアさんと同じくらいに見える。



 僕はそのエルフの人があまりにも奇麗なので目が離せなくなってしまった。



 「え、ええとぉ、どちら様ですか? エ、エルフの方ですよねぇ?」


 「んんんん~~~~??」


 そのエルフの人は姉さんの顔に自分の顔を近づけ眉間にしわを寄せる。



 「ねえ、もしかして私を見ても分からない?」


 「あ、あのぉ~どこかでお会いしましたっけ?」



 姉さんがそう言うとそのエルフの人はにんまりと笑って腕組みをしながら嬉しそうにする。


 「そう、そうなのね! よっしぃっ! これならば仕方ないわよね!! そうか、あたしが分からないか! やったぁっ! じゃあ無理矢理は良く無いわよね! うん、うん」


 何やら一人で納得して嬉しそうに首を上下する。

 ポカーンとその様子を見ていた姉さんは恐る恐る聞いてみる。


 「あのぉ~、私たちに何か用でもあるんですか?」


 「ああ、ごめんごめん。用があるのはあなただけど、どうやら私が分からないようだから無理はさせちゃいけない事になってるしね。私はシェル。よろしく!」


 そう言ってそのエルフのお姉さんはフェンリル姉さんに握手を求める。

 差し出された手にフェンリル姉さんは渋々自分も手を出す。


 「さてと、それじゃあ今後どうするか決めましょう! とりあえず今の名前は何?」


 「は、はぁ、フェンリルと言いますけど‥‥‥」


 エルフのお姉さんは僕たちのテーブルに腰かけてきて姉さんと話しながらお店に果実酒と果物を頼む。

 

 「ふーん、フェンリルっていうんだ。じゃあフェンリル、あなた何処まで思い出した?」


 「はぁ?」


 勝手に話を進められているけど何を言っているのか分からないので姉さんは首をかしげる。

 するとさらにこのシェルさんは嬉しそうにしている。


 「いやいやいや、無理して思い出さないで! むしろ忘れたまま今の人生を過ごしてもらえれば彼女はまた当分私のモノ‥‥‥ ぐふっ、ぐふふふふふふっ!」


 なんか美人なのに変な人だな?

 もしかして美人の人って変な人が多いのかな?

 フェンリル姉さんもやたらと僕をかまうし、いまだに一緒にお風呂入りたがるし、ネミアさんもやたらと姉さんと仲良くしたがるし、ミーニャも僕をお嫁さんにするって‥‥‥



 「あ”あ”ぁっ! 姉さんそれ所じゃ無いよ!! ミーニャっ! ミーニャを早く何とかしないと!!」


 「あ”っ!」



 突然現れたシェルさんに危うくミーニャの事忘れさせられそうになった!

 僕がそう姉さんに言うと初めて僕の存在に気付いたかのようにシェルさんは僕を見る。



 「あれ? あんた誰?」



 「ソ、ソウマです! 私の可愛い弟ですっ!」


 シェルさんに聞かれ僕は返事をしようとしたら先に姉さんが抱き着いてきて隠すかのように僕を後ろにやり答える。

 姉さん、抱き着かれると胸で顔が埋まって息苦しいんだけど‥‥‥


 「ふ~ん、ソウマっていうんだ‥‥‥ フェンリルの弟? うーんと」


 そう言ってシェルさんは僕を凝視する。

 

 「あっ!」


 見られている僕はシェルさんの瞳が金色に変わったのに気付いた。

 そしてしばらくしてまた元の緑色の瞳になってにっこりと笑う。


 「そうかぁ、あの子だったんだ。えーと今はソウマだっけ? シェルよ、よろしく」


 そう言ってにっこりと僕に微笑みかける。



 どきっ!



 え?

 なにこれ?

 シェルさんの笑顔見ていたら心臓がどきどきと‥‥‥

 そして何だろうこの感じ。

 ものすごく昔から知っているような、憧れていたような‥‥‥



 「シェルさんでしたっけ? うちのソウマを誘惑しないでもらえます? ソウマは私のなんですからね!!」


 「え? あ、ああ、ティ‥‥‥じゃ無かった、フェンリルの大切な弟だっけ? ごめんごめん、ちょっと懐かしかっただけよ。別に取らないから安心して」


 そう言ってシェルさんは運ばれてきた果実酒を美味しそうに飲み始める。



 「さて、自己紹介が終わったところで今後についてなんだけど‥‥‥」


 「あの、シェルさん? 僕たちもの凄い大切な用事があるんですけど‥‥‥」



 話を勝手に進められそうになって慌てて僕は僕たちの言えない目的を言おうとするとシェルさんはきょとんとした表情で僕を見る。



 「あら? あなたたちも用事があったの? 困ったなあ、『魔王』が覚醒したから手伝ってもらおうとしたんだけど」



 「「え”っ!?」」



 シェルさんはいきなりとんでもない事を僕たちに言い始めたのだった。 


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