乙女とお姉様(ぼく)に祝福を
@pon0610
第1話女子校に転校しちゃいました
僕の名前は綾小路伊澄。綾小路財閥の会長の孫だ。
僕が生まれてすぐに事故で両親を亡くしてから、会長である祖父が唯一の肉親だった。
そんな祖父が突然病でこの世を去った。
祖父の葬儀を終えて、数日が経過したある日のことだった。
僕のもとへ弁護士が訪ねてきた。
「本日は会長の遺言書を持って参りました」
「え?遺言書があったんですか?」
「はい。こちらになります」
「拝見いたします」
そして僕は遺言書に目を通した。
そこには祖父の遺産は全て孫である僕に相続させるという内容だった。
しかし、その後に記されている内容に目を疑った。
「伊澄にはお前の母さんの母校である聖ビブリア学園に通ってほしい。それが私の最後の願いだ」
と書いてあった。
「えっ!?これって・・・」
僕は現在進学校である海星学園の三年生だ。
「はい。会長の遺言通り、転入の手続きをさせて頂きます」
弁護士はそう言いながら転入の書類を広げた。
「ちょっと待ってください!急にそんなこと言われても・・・。それに、聖ビブリア学園は『女子校』ですよ!?男の僕が通えるわけないじゃないですか!」
するとガチャリとドアが開いた。
「それなら問題ないわ」
「エリカ!?」
入ってきたのは幼馴染でいとこの神崎エリカだった。
「ちょっと伊澄をお借りしますね〜」
エリカにそう言われ連れて行かれた。
しばらくして応接間に戻ると弁護士は驚いていた。
「これは驚きました!どこからどうみても女性にしか見えませんよ」
エリカは僕の顔に化粧を施し、胸にパットを入れ、女子の制服を着せたのだ。
「そうでしょう?これなら絶対にバレないわ!」
鏡を見て驚いた。
「これが・・・僕?」
鏡の中には美少女がいた。
「私もサポートするから、頑張りましょう?」
僕としても祖父の願いは叶えたい。
「しかたない・・・でもほんとに大丈夫かなぁ・・・」
こうして僕、いや私は聖ビブリア学園に通うことになった。
そして転入初日。私は理事長室にいた。
「あなたが綾小路伊澄くんですね。まぁまぁ、まるで伊織さんの生き写しですね」
シスターの格好をした理事長が私を見てそう言った。
「母をご存知なんですか?」
「それはもちろん。伊織さんは私の教え子でした」
「そうなんですね。綾小路伊澄といいます。よろしくお願いします」
「はい、事情は聞いています。綾小路会長には生前ずいぶんとお世話になりましたからね。安心してください。あなたの秘密は神崎さんを除いてこの学園では私と担任の牧瀬先生しか知りません」
すると、隣に立っていた若い女の先生が口を開いた。
「私があなたの担任の牧瀬奈緒美よ。あなたのことは私もできる限りサポートするから何かあれば何でも相談してね」
「はい、よろしくお願いします牧瀬先生」
「あと、私のことは奈緒美先生って呼んでちょうだいね」
「わかりました、奈緒美先生」
そして転入の手続きを終えて私は奈緒美先生に連れられて教室にやってきた。
(ついに来てしまった・・・大丈夫かなぁ・・・緊張する・・・)
私は意を決して教室に入る。
ちなみにここは3年A組で、エリカは隣のB組だ。
「皆さん、彼女が新しくこのクラスに転入することになった宮村伊澄さんです」
「はじめまして、宮村伊澄です。よろしくお願いします」
私は自己紹介をして一礼する。
みんな静かに私の方を見つめている。
(あれ?失敗した・・・?)
「では宮村さんはあそこの空いている席に」
「はい」
言われた通りに私は自分の席に座る。
ふと隣を見ると、おしとやかで美人で綺麗な長髪の子が座っていた。これぞ大和撫子という感じだ。
「はじめまして、わたくし九条千早と申します。よろしくお願いしますね伊澄さん」
小声で話しかけられた。
「こちらこそよろしくお願いします、千早さん」
そしてホームルームが終わり、奈緒美先生が教室を出て行った途端教室中から黄色い声があがった。
「なんてお綺麗な方なのかしら」
「宮村さん、転入試験を満点でクリアしたというのは本当ですか!?」
「以前はどちらの学校に?」
みんなが一斉に私に質問を浴びせてきた。
「えっと・・・転入試験の点数は知らさられてないので何点だったかはちょっと・・・」
とりあえず一つ一つ質問を返す。
すると隣の千早さんが口を開いた。
「皆様、伊澄さんが困っていますわ。質問攻めはその辺にしてあげてはどうですか?これから同じクラスなんですから、ゆっくり仲良くなっていけばよろしいですわ」
「千早さまっ!?はい、すみませんでした」
「宮村さんもごめんなさいね」
千早さんの一声ですぐに騒ぎは収まった。
一体千早さんって何者なんだろう。
放課後になり、私は急いでいた。
「あっ、伊澄。一緒に帰りましょう」
途中でエリカに会った。
「ごめん、急いでるんだ」
「ちょっ、伊澄!?」
私は走って寮まで帰ってきた。
ジャー。
「ふぅ・・・すっきりした」
何とかトイレに間に合って良かった。
「あっ、あなたが今日から入る宮村さんね?」
トイレから出たところでポニーテールの女の子に声をかけられた。
「あっ、はい。宮村伊澄といいます。よろしくお願いします」
「私は寮監の倉科愛花です。荷物はもう届いてますよ。早速案内しますね」
そして愛花さんに案内され、二階の奥の部屋にやってきた。
部屋の中を見て目を疑った。
部屋中がピンクやらレースやらで溢れていた。
ベッドにいたっては天蓋付きのお姫様ベッドだ。
「すごく可愛らしいお部屋ですね〜。伊澄さんこういうのがお好きなんですね」
「えっ、と・・・そうなんです。私、可愛らしいのが大好きで・・・」
ああ、もう死んでしまいたい・・・。
「じゃあ、片付けが済んだらリビングに降りてきてもらえますか?説明がありますので」
「はい、わかりました」
とりあえず私は届いた荷物を整理する。
もちろん女物の服しかない。
するとドアを叩く音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
ガチャリ。
「伊澄、さっきは一体どうしたのよ!?」
「ああ、エリカごめん。ちょっとトイレに行きたかったから・・・」
「トイレ?あんたまさか・・・」
エリカはそう呟くと急いで部屋を出て行った。
そしてすぐに戻ってきた。
「あんたやっぱり便座を上げっぱなしにしてたわね!」
「あっ・・・」
「全く・・・気をつけなさいよね。あと、これからトイレは絶対に座ってすること!」
「はい・・・わかりました」
そうか。トイレ1つでもバレるかもしれないのか。気をつけなければ・・・。
そしてリビングに降りると、色々と寮のことを教わった。
朝食と夕食の時間や入浴の時間など。
昼食は前日にホワイトボードに名前を書いておけばお弁当を作ってもらえる。
なお、お弁当箱は前日に必ず返さないと翌日のお弁当は作ってもらえないそうだ。
入浴は23時までで、22時以降に入る人はほとんどいないそうだ。
よし、入浴は22時50分くらいにさっと済ませよう。
こうしてとりあえず初日を乗り切ったのだった。
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