29話 不死の終わり

「本当なのか……?」

エアリアが不安げにリオンへと尋ねる。実験体の異常な生命力を見ればその疑問も当然だった。

「ええ、あいつの再生能力のカラクリが分かったんです」

そう言って、実験体へと走り出す。

自身の周囲へ雷球を浮かべ、斬りかかろうとする実験体を牽制しながら叫ぶ。

「まずはこいつに再生能力を使わせます! 手伝いをお願いします!」

聞くが早いか、エアリアは炎剣を振りかざし実験体目掛け振り下ろす。

実験体はそれを躱しながら、エアリアに尻尾の一撃を叩き込もうと思い切り振りぬく。

「させるかっ!」

リオンがそれを杖から放つ雷の魔術で防ぐ。

尻尾は雷撃により中ほどから千切れとび、断面からどす黒い粘性の液体がボタボタとこぼれ落ちている。

「うおおおおおおお!!!」

エアリアはその切断面に炎剣を突き刺すと、怒号とともに魔力を一気に込める。

青白い炎が実験体の体のあちこちを突き破り噴き出している。まるで炎でできた剣山のようであった。



体内を焼き尽くされた実験体はそのまま地面に転がり動かなくなる、かに思えたがすぐに左目を強く輝かせるとその焦げ付いた肉体を再生させる。

「っ! 今だっ!」

それを見たリオンが杖に魔力を込め実験体の口内へ突っ込んだ。

「これで終わりだあああ!!」

再生を始めていた実験体の体がビクビクと激しく痙攣しだす。

さらに再生自体も異常をきたしていた。腕からさらに腕が生えてきたり、足から尻尾が生えたりとその体を異形のモノへと変貌させていった。


――ッッッ!!!


実験体が声にならない叫びを上げ、痙攣をさらに激しいものにしていく。

もはやその体は、生命体と呼べるような形状を為していなかった。

「うっ……」

エアリアはその光景のあまりの凄惨さに思わず顔を背けてしまう。

その直後、ボンッという軽い音がしたかと思うと、背けたエアリアの視線の先に実験体の腕が転がってきた。

全体に小さな手足がいくつも生えている“それ”を腕と呼べるのならだが。

「うっ……おぅえ……」

もろに見てしまって吐きそうになり、慌てて口元を抑えるエアリア。



「大丈夫ですか?」

リオンが傍まで来て尋ねる。

あれだけの光景を作り出したというのに特に堪えた様子もないのは、やはり経験の差であろうか。

「いや、すまない。 しかし凄いな、一体どうやって倒したんだ?」

もう再生する気配のないバラバラの肉片をなるべく視界にいれないようにしながら尋ねる。

あれだけ驚異的な再生能力を見せていた実験体を倒して見せたリオンの力、エアリアはこれからの戦いの為にも知っておきたかったがその答えは意外なものだった。


「回復術式を使ったんです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る