23話 見知らぬモノ
エアリアと戦っている魔族は、長い首にうろこ状の肌、太い尻尾など特徴としてはリザードマンによく似ていたが、特異なのはその左半身だった。
うろこ状の肌は機械で覆われほとんど見えなくなり、左腕は右腕に比べ肥大化してバランスを欠いていた。
その左腕は前腕部分が大きく裂け、そこから大きな斧の刃の部分だけが突き出たようになっていた。
さらに、左目は赤く光っていたがその光は人工的で無機質なものだった。
「エアリアさん! 大丈夫ですか!?」
リオンは叫びながら、謎の魔族に斬りかかった。
剣は確実に魔族の左肩をとらえていた、はずだった。
ーーギィイン!!
甲高い金属音とともに弾かれ、リオンは手が痺れて剣を取り落としてしまった。
「まずっ!?」
視界がぶれた。
尻尾の一撃により吹き飛ばされた、と気づいたのはそれから数瞬遅れてからだった。
リオンはそのままの勢いのまま壁に激突し、息が詰まる。
「がっ……はっ……」
体がミシミシと音を立てているかのような激痛に見舞われ、視界が明滅している。早く起きなければと思うほどに体は拒絶し痛みを訴えてくる。
(おかしい…… いくら不意打ちとはいえここまでダメージが大きいなんて……)
「よくもリオンを!」
エアリアが怒りの叫びとともに謎の魔族へと剣を振り下ろす。剣は炎の魔術により赤熱化し、受け止めた斧ごと左腕を溶断した。
だが、真に恐ろしいのはそこからだった。
ーーウゥ"オ"オ"オ"オ"!!
頭が割れそうになるほど非常に耳障りで奇怪な唸り声とともに、謎の魔族の左目が強く輝く。
すると、驚くべきことにたった今溶断したばかりの左腕の切断面から肉が蠢き、盛り上がっていき再生したのだ。
謎の魔族はシュウシュウと不気味な音を立てる左腕を一瞥すると、手のひらをエアリアに向ける。
「っ! まずい!!」
その判断は騎士としてのものか、はたまた本能がそうさせたのか、エアリアは勢いよく横に転がる。
その瞬間、謎の魔族の手のひらに取りつけられた赤い水晶体から光が迸った。
それは、術式により魔術へと成る前の純粋な魔力そのものだった。
今の今までエアリアが立っていた場所はその迸りを受け、グズグズに溶けて下の階が所々から覗いていた。
「こんのおお!! サンダーバスター!」
回復魔術を使い、動けるようになったリオンが雷の魔術を、怒号とともに放つ。
凄まじい雷光が謎の魔族を襲い、その右半身の大部分を消し炭に変える。
だが、左目がまた強い光を放つと消し炭と化した右半身を内側から押し上げ、新たな肉体を形成してゆく。
再び立ち上がり、こちらの姿を右の瞳に映す謎の魔族の姿に二人は戦慄した。
「な……こいつ、不死身か……」
「バカな……ここまでやっても死なないなんて、どうなっているんだ……」
謎の魔族は感情の見えない瞳をこちらに向けたまま、二人に突進してくる。
その勢いのまま左腕を振るうと、前腕部に一筋切れ目が入り、ガパッと音がするほどに勢いよく裂け刃だけの斧が飛び出てくる。
二人は咄嗟に剣で受け止めるがそれは悪手だとすぐに思い知らされた。
斧と剣とがぶつかり合った瞬間、謎の魔族は口を大きく開いた。
ヌラヌラと不気味に濡れる口内に、不釣り合いな光が灯っていた。それが、手のひらに付けられていた水晶体と同じものだと気づくのに時間はかからなかった。
「しまっ……」
二人の視界が眩い光で覆われ、何も見えなくなった。
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