10話 VS.ハルト part1
「誰だ……お前」
リオンは不意に話しかけてきた少年から距離を離をとる。
この時代で自分を知る者はいないはず、もしいるとしたならそれは……
「嫌だなぁ、忘れたの? 俺のこと」
「その話し方……ハルトか?」
そう、この時代でリオンを知る者は千年前から存在する者、魔族となった仲間立ちだけである。
「ははっ、覚えていてくれたんだね、先輩。どうやって生き返ったのかは知らないけど嬉しいよ」
フードを上げたハルトは心底嬉しそうな顔でリオンに笑いかける。
だが、その顔はかつてのハルトとは大きく変わっていた。褐色の肌、額には小さいながらも鋭い二本の角、何より鈍い金色の瞳が怪しい光彩を放っているのが目を引いた。
「随分と変わったな、ハルト」
「そう言う先輩は、全然変わってないね。ただの人間がどうやったのさ?」
「さあね、僕にもよくわからん。流されるままここにいるから」
楽しそうに話しかけてくるハルトにリオンはつまらなそうに答える。
「ハルト、僕になんのようだ? そんな話をするためにわざわざやって来たわけではないんだろう?」
リオンは、まだ無駄話をしたそうなハルトを制して続ける。内に秘める激情を必死に押し隠して。
だが、ハルトの返答はその内なる激情を爆発させるに十分なものだった。
「別に、ただ遊びに来ただけだよ。暇だったしね」
その瞬間、リオンは"
――ガキィィィィィン!!!!!!
だがその刃はハルトへと届くことはなく凄まじい金属音と火花を散らせた。
「せっかく千年振りに会ったってのに、もうやりあうの? もう少し話そうよ?」
逆手に持ったナイフでリオンの剣を受け止めたハルトは、軽い口調で続ける。
「その術式、凄いね。単なる収納術式とも違うようだしどうやったの?」
「お前に答える筋合いはない。そして、下らない話に付き合うつもりもなあぁぁ!!」
リオンは怒号と共に剣へと魔力を込める。
すると刃の根本から青白い雷撃が迸り、たちまち刃全体を包み込み全体が青白く発光し始めた。
そのまま押し込むと切り結んだナイフを赤熱化させ、溶断していく。
「やべっ」
ナイフに剣がめり込むのを見るが早いかハルトはナイフを放り捨て、屋根の上へと飛び移る。
「思ったよりやるね、先輩。こんなところじゃお互い窮屈だしさ、場所変えようよ」
そう言われ、リオンは我に返る。怒りで我を忘れていたが、ここは服屋の目の前だった。
周囲には騒ぎを聞き付けた者たちがパニックを起こして逃げ惑っていた。
(しまった……街中で闘いを起こしてしまった……)
「じゃあ、街の外で待ってるよ。早く来てね」
ハルトはそれだけ言って屋根づたいに跳んでいく。街の西側へと向かっているようだった。
リオンもすぐさま走り出し、あとを追う。
大きな門を抜けると昨日見たのと同じような荒野が広がり、そこかしこに転がる岩の一つにハルトが座って待っていた。
「待ってたよ先輩。さあ、はじめようか」
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