第31話麗奈さんとデートプラン

 ……どうやら、ゴールデンウィークに会うことが決定したらしい……。


 あれよあれよと話が進み、麗奈さんとプライベートで……。


 しかも……おそらく二人きりで。


 いや……己の思慮の浅さが原因だな。


 少し考えればわかることじゃないか……。


 食べさせるイコール……何処かで会う必要かあると。


 ……もしや……何処かで、そうなることを期待していた……?


 ……いや、そんなわけ……。




「君……水戸君……水戸君……!」


「はい?」


「大丈夫……?やっぱり、迷惑だったかな……?」


 松浦係長は縮こまって、俺の顔色を伺っている……。

 馬鹿か、俺は……俺だって腐っても男だ……。

 一度了承したことを反故にすることなど出来るか……!


「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、何にしようかなと思いまして……」


「ほっ……そ、そうだよね……何処に行けば良いかな?私、あまり遊んだこともなくて……」


 ……ん?何かおかしい……。

 何処に?遊んだことない?

 ご飯を食べるだけじゃないのか?


「えっと……ご飯を食べるのでは?」


「え……?ご、ごめんなさい!!あぅぅ……」


 なんだろ、この可愛い人。


「あの……どうしましたか?」


「ち、違うの!勝手に、その……遊んだりした後に、ご飯を食べるかなぁって……」


 まるで少女のような反応だな……。

 あわあわしてて可愛いな、おい。


「遊ぶですか……」


 まいったなぁ……それでは、完全にデートになってしまうぞ?

 会社の上司とデートとか……断るか?

 いや、しかし……。


「ぜ、全然良いの!忘れて!」


 ……まあ、良いか。

 今朝も思ったけど、人となりを知る良い機会かもな。

 何より……自分の気持ちがわかるかもしれないし……。

 それから考えるのでも遅くはないか……。


「良いですよ、何処か行きましょうか?」


「え……?良いの……?」


「ええ、麗奈さんが嫌でなければ……」


「行きたいですっ!わぁ……!プライベートで遊ぶなんて久しぶり……!」


 ……おっと、いけない。

 また、勘違いするところだった。

 そういうことか……仕事の激務でストレスが溜まっているのだろうな。

 確か……友人も結婚して遊べないって言ってたし……。

 よし、普段からお世話になってるんだ。

 ここは、松浦係長が楽しめるように全力を尽くそう。

 俺の気持ちなど二の次でいい。


「では……何かしたいことでもありますか?」


「……うーん……あまり、経験がなくて……勉強や、家族のことで忙しくて……趣味とかもあんまりなくて……つまらない女なのです……」


 な、泣きそうになってる……!?

 いかん!事情はわからないが——とにかくフォローを!

 それに俺でも理解できることはある!


「いえ、気持ちはわかります。俺も家の手伝いで、大学生までは趣味とか言ってる場合じゃなかったので……」


「あっ——ご実家のお手伝いをしてたんだもんね。私は大学に入ってからも、あまり遊ぶ時間もなくて……大学生って何をするの?」


「例えば……映画、カラオケ、ボウリング、ショッピングとかが定番ですかね?」


「うわぁ……!憧れのものばかり……!」


「……二つくらいなら行けますかね……どうしますか?」


「むぅ……迷う……カラオケとかボウリングってリア充っぽい……」


 ……久々に、その言葉聞いたな……。

 今は死語……っていうほどでもないか。


「その二つにしますか?」


「……はいっ!」


 うわー、満面の笑みがこぼれてるー。

 氷の女王の面影がまるでないのですが?

 俺は、今まで何を見ていたんだが……。

 きっと、無理をしてああなったのだろうことは……予測がつく。

 よし……少しでも安らげるように、癒しの空間を提供しなくてな。


「では、決まりですね。あと、俺にして欲しいことはありますか?」


「えぇ!?し、して欲しいこと……でもでも……」


 はて?何故頬を赤らめているのだろうか?

 相変わらず、女性っていうのはわからない……。

 こんなんだから……いや、過去のことは思い出したくない。


「なんでも良いですよ?」


「……じゃ、じゃあ……私の部屋に来ませんか……?」


「…………はい?」


 今、なんと言った……?

 俺の妄想か?幻聴か?

 こんな美人に誘われるわけが……。


「……あっ——!違うのよぉ〜!そ、そういうアレじゃなくて……アレっていうのはアレで……」


 ……どうやら、また勘違いしそうだったな。

 フゥ……これだから、経験の浅い男は……。


「落ち着いてください……ゆっくりで良いですから」


「え、えっと……料理を覚えたいなって思って……少しでも作れたらお金の節約にもなるし……だから、私の家でも作れるような料理を教えてくれたらって……」


「なるほど……オムライスは良いかもですね。あれなら、そんなに難しくないですから」


「え?ホント?なんか、難しいイメージ……こう、フライパンの取っ手を叩くやつ?」


「とんとんとんってやつですか?」


「そう!それ!」


「あれ以外にもやり方はありますよ。では、そうしましょう」


「か、頑張ります……!」


 ……こうして、デートから食事を教える流れになった……。


 後は……当日楽しんで頂けるように、全力を尽くすだけだ。

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