152話 妹と訪問者
1月×日
眼前には美少女ゲームの声優であり、最近ではVTuberとしても活動を始めた
「来ちゃった(はぁと」
「…………」
「露骨に嫌そうな顔しなくてもいいのに」
「え゛……そんな顔に出てましたか?」
「いえ、当てずっぽうに言ってみただけ」
「弁明させてもらえるのであれば嫌とかそういうのではなくてですね……」
私は体勢はそのまま首だけを動かして背後の方へと目をやる。扉の影からこちらを「ジーッ」と観察しているマイシスターの姿がそこにはあった。家政婦さんが見ているようなスタイルだ。そんな訝しむような表情で観察するのは止めてくれないだろうか。この後の弁明というか状況説明を考えると少しだけ気が滅入る。余計な勘違いをして欲しくはない。私にとっていつだって一番はお前なんだ、妹よ。
「なんか前もこんなことがあったような……」
「あのときは素顔が見えていなかったんじゃないですかね、位置的に。あるいは私の丁度陰になっていたとか」
「所謂大好きなお兄ちゃんに近付く怪しい女Aってところかしら……嫉妬してるんだ。かーわいー」
「でしょう?」
「本当にリアルでも妹トークになると満面の笑み……あんだーらいぶさんのトラッキング技術流石ですね」
どうやらリアルでもバーチャルでも妹トーク中は笑顔らしい、私。これっぽっちも意識してなかった。確かに最近「表情豊かになったね」みたいなご意見をいただくことが増えた。これは葵さんの言うように、ガワ――所謂2Dの身体の方も新衣装実装と併せてアップデートされていたのが大きいだろう。少しだけ稼動域が増えたので、左右に身体を動かしてもそれにあわせて多少立ち絵も動いてくれる。流石に上下や前後などの動きまでは未だに未対応ではあるが、表情も前よりパターンが少し増えた気がする。自然になったって感じだろうか? 窓辺さんに聞いたけどそこまでその辺弄ってないって話ではあったんだが……ふぅむ。
「それだけお兄ちゃんが心配だったってことじゃないですか。愛されてる、ひゅーひゅー」
「いやぁ、照れますねぇ」
「いや、そこは否定するところでしょう……アニメや漫画以外でここまでシスコンの人初めて見た」
先程からのあの熱い視線……それだけお兄ちゃんが心配だったということか……ッ! いやぁ、何だかんだブラコンだなぁ。ふへへ、しょうがないなあ。
「あ、これお土産です。今後流行るかもしれないスイーツ。生ドーナツ」
「生……ドーナツ? 初めて聞く名前ですね。これまたハイカラな」
「ハイカラって最早死語じゃないです?」
その手の流行りに疎い私ではあるが、背後の妹が身を乗り出す勢いで反応しているところ見てついつい表情が緩んでしまう。ドーナツって揚げてるよな? それなのに生とはこれ如何に。ドーナツは割とおやつとしては作る選択肢にあるものの、カロリーの高さ、油の後処理など考えると自宅で作るのは敬遠してしまっている。揚げないタイプのドーナツだとか豆腐やおからを使う工夫とかもやってみたが、結局ドーナツ店には勝てないんだよなあ……何よりお手軽だ。妹もチェーン店や既製品でも喜んで食べるが、それが続くと若干何か言いたげな顔をしている場合がある。お兄ちゃん的には作ったお菓子を満面の笑みで食べて「美味しい美味しい」言ってくれる姿が見たいのもあって、ついつい甘やかしてしまう。
「ほーら、ドーナツだよぉ~」
「動物のエサで釣る、みたいな真似を人の妹で実践するの止めてもらっていいですかねぇ……?」
「いやぁ、反応が可愛いからつい……」
彼女が手に持った生ドーナツなる奇怪な名前のおやつが入っているであろう紙箱を掲げて左右に動かしている。少し口を開けてその箱の行方を目で追うマイシスター。可愛い。他所で食べ物に釣られて変な人に
いつまでも立ち話というのも失礼かもしれないので一応客間に通したのだが、玄関先のベンチで続けた方が良かっただろうか? 男性に少しばかりの不信感と言うか、苦手意識を潜在的に抱えてしまっている彼女への対応としては失敗したかもしれない。
「ごめんなさいね。兄妹水入らずのところ、お邪魔しちゃって」
全然悪いと思って無さそう、さっきからこっちでなくてずーっとマイシスターの方をニコニコと笑顔で見ている。丁度いただいたドーナツをスマホで様々な角度から撮影している。十六夜嬢にでも送るのだろうか? いちいち仕草が可愛い。確かについつい目で追いかけたくなるくらい可愛いのは分かるが……
「もしかしてウチの両親不在なの分かってて来てたりしないですか?」
「まっさかぁ」
車庫の車とか見て判断してたりしないだろうか? と言うのは深読みのし過ぎか。まあ、彼女からしたらご近所付き合いの一環でしかないのだろう。その辺深く気にしすぎるのも失礼にあたるか。他人の好意を好意と素直に受け入れられないのは昔からの悪癖だな、本当に。
「美味しい?」
「コクコク」
「よく噛んで食べるんだぞ」
「おいひい」
小さいお口いっぱいにドーナツを頬張るマイシスター。ハムスターみたいで大変愛らしい。冗談抜きに目に入れても痛くないと思う。
「でも、まさか……タヱ子さんのお孫さんが声優さんで、お兄ちゃんともお仕事してたなんて。嘘かと思ったけどマジっぽいし。てっきり変なのに騙されているのかと思ってた」
「話が出来過ぎてるのは認めるけど、もう少し信頼してほしいかなって……」
「ご、ごめんなさい。兄に近付く女の人って大体
「あー……なるなる」
「いや、なんでそこで納得するんです……? 私って一体どんな印象なんですか……」
「いやぁ……だって」
「ねー?」
妹が目配せして、それに同意する葵さん。急に仲良くなるじゃん。女性の距離感の詰め方拙者よく分からないでござる。しかし、彼女にお菓子をいただいてしまった以上、何かしらお返ししなくてはな。ウチに今何か人様に差し上げられるような気の利いたものあったっけか……? おー、そう言えば地元銘菓のおせんべいの詰め合わせがあったんだった。後は貰うだけもらって飲む人のいない酒類あたり? あればあったで父さんや私が処理するんだが、積極的に呑むわけでもないしな。適当に東京土産買って帰って来たときに貰った紙袋にでも詰めて渡せばよかろう。うむ。
しかし確かに口頭で説明すると信じてもらえなさそうな縁だな。ご近所さんがVTuberと声優兼VTuber。更に妹の友人もVTuberで……あれ? この職業ってそんな一般的だったっけ? と錯覚しかねない勢いである。VTuberのバーゲンセールだ。まるで後半のドラ〇ンボールにおけるスーパー〇イヤ人並みにお気軽に出てくる。なんてご都合展開なんだろうか。もうちょっと捻った方が良いと思う。
「爪すごいきれー!」
「こっち帰ってくる前にネイルサロン寄って来たの」
何だかんだ女の子同士、話題には事欠かないか。彼女へのお返しを準備している間にも仲は深まっているらしい。何だか2人並んでいると姉妹みたいでちょっぴりほっこり。人様の爪先までじっくりと観察はしていなかったが、確かにとっても艶々していた気がする。女の人ってああいうのにも気を遣わなくちゃならないのかぁ。大変だな。まあ男性でもその辺気にする人いるみたいだが。身近なところで言うと朝比奈先輩とかは多分お手入れしているんだろうなって言うのは何となく分かる。オフでたまに会う時爪綺麗だし。他女性メンバーはあまりじろじろ見ないようにはしているし、そもそもオフで会う機会があまりないのでよく分からないので、比較対象は主にあんだーらいぶの男性メンバーのみだ。
「ふぇー、すごいな。他に何か用事あったんです?」
「いや、特にないかなぁ。お祖母ちゃんの家で一晩泊まって、都内へ戻る感じかな。まあ戻っても仕事ないから配信でもやるかなって。売れてないんで」
「へー、それで
「ふえ……?」
「他に誰とも会う用事が無いのに。髪もヘアサロンで気合入れてきた、と」
「……ほ、ほら髪とか爪のお手入れって常日頃から大事だから」
「ふーん、へえー。なるほどです。ちなみに兄はゴテゴテしたのは嫌いです。シンプルで清潔感のあるのを非常に好みます」
「へ、へぇ……さ、参考になります」
お兄ちゃんの存在なんかもう忘れられてそうなので、手持ち無沙汰を解消するためにセーターの毛玉を取る作業に移ろうかと思います。こう言うのって始めると結構楽しくて夢中になっちゃうんだよね。
「基本過剰な装飾などはアウトです。派手な色合いよりは白とかの服着ると喜びます。露出とか多いのは減点されます。香りの強い香水なども苦手です。約束を守らない人は論外です。初対面で馴れ馴れしく距離を近づけてくるタイプも苦手です。あ、食事を美味しそうに食べる人は多分好きです」
「それもう全部実体験だよね」
「う゛ぐ……い、妹なので兄の事は誰より分かっているんですぅ」
「へー、お兄ちゃん大好きなんだね」
「別にそんなんじゃないもん。普通だもん!」
「えー、毎日お兄さんのSNS張り付いて、エゴサまでして? 褒めてるツイートにほぼ即ファボしてるのに? たまに惚気みたいなお兄ちゃん自慢ツイートとかするのに?」
「お兄ちゃん! わたしこの人苦手!!」
「ふっ、今回は引き分けってところね」
楽しそう……であってる…………? マイシスター基本的に私と女性が仲良くするの滅茶苦茶警戒するんだよなあ。流石はブラコンちゃん。愛されてるな、私。果報者め。苦手とか言いつつ初対面でここまで話が弾むって言うのは中々ないと思うけれども。
「にゃー」
「おっ、噂のコタちゃん! ほらー、おいでー」
「んにゃ?」
虎太郎がひょいっと葵さんの方へととてとてと短い体躯を目一杯使って駆け寄っていく。ある一定のところでピタッと静止。じぃーっと値踏みするように彼女の顔を見据える。数秒、そのまま見つめ合った後前足でちょんちょんと彼女の太ももを猫パンチ。特に怒る様子も見せずに手招きする彼女。
恐る恐る虎太郎の頭を撫でる葵さんに対し、特に嫌がる様子もなく難なく受け入れる。昔に比べて随分警戒心はなくなったな。初対面の相手にもアッサリと心許している。あの子なりに顔をじっと見据えて人となりを判断しているのかもしれない。
「うりゃー、よしよしよし」
「うにゃ」
「なんかわたしより懐いてない……? 実は面食いなの? こやつ」
「でも親父や私にも割と懐いてるぞ?」
「にゃんでぇ……?」
多分お前が構いすぎるせいだと思うの。まあ可愛いからついつい構いたくなってしまうのは分かるが。私が妹に対するそれと一緒だろう。
「はいチーズ」
「ニャ?」
初対面相手に腹を見せるのか。お前、野生はどこへ行ったの……?
「SNSにはアップしないで下さいよ?」
「そんな炎上確定なことしないですよ、流石に」
私が高頻度でこの子の写真をSNSにアップしまくっているせいで、毛皮の模様や表情とかから容易に特定されちゃうだろうし。バレたらえらい騒ぎになる。絶対。流石に彼女もその辺理解しているらしい。同業者だしな。配慮助かる。
「えーっと、ルナちゃんと灯ちゃんに送信っと」
「あの、ちょっと待ってもらって良いですかね……?」
「いや、メル友なんで」
「えっ、なにそれ楽しそう」
「滅茶苦茶他人事で楽しむの止めてもらっていいかな、マイシスター?!」
ちなみにその数分後。
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ルナ・ブラン
今少しよろしいでしょうか?
――――――――――――――――――――――――
日野 灯
すこし確認したいことがあります
――――――――――――――――――――――――
わーお、反応はやーい。サラマンダーよりはやーい。
◇◆◇◆◇◆
あんだーらいぶを語るスレ XXX配信目
21 名無しのライバー ID:MoBthread
悲報 忍ちゃん台パンの衝撃でエナドリをぶちまける
――――――――――――――――――――――――
常闇 忍@台パン控える@shinobu_underlive
あ、あ、あ、
たすけて
たすけて
pbs.twimg.vcom/media/daipan
――――――――――――――――――――――――
622 名無しのライバー ID:YtydYc1N6
>>621
草
623 名無しのライバー ID:BJBA4I2Q4
>>621
結構派手にこぼしたな……
624 名無しのライバー ID:v+GlP9ueh
>>621
なんで配信外でも台パンしてんだよ……
625 名無しのライバー ID:qsEYXs92l
>>621
悠長に写真アップする余裕はあるのな
626 名無しのライバー ID:ShRq9ZriE
え!! 配信外で台パンを!?
627 名無しのライバー ID:cB1rKbQiK
出来らあっ!!
628 名無しのライバー ID:TFrgtZt3R
忍ちゃん推しには朗報だな
裏表のないキャラだったってことやぞ
629 名無しのライバー ID:Z4bm6uW+B
そこォ?!
630 名無しのライバー ID:B1a6aCCI/
あ、あの……
「台パンはキャラ付けのために仕方なく」
昔そう言い訳してませんでしたか……?
631 名無しのライバー ID:MCvPDEf8n
そこは触れないであげて
632 名無しのライバー ID:U93Ci6Tyu
素じゃないぞ、きちんとRPロールプレイのためだぞ
――――――――――――――――――――――――
常闇 忍@台パン控える@shinobu_underlive
今日のキレの確認しようとおもっただけなのに
スペースの確保とか色々気を遣ってるんだよ……
pbs.twimg.vcom/media/daipan
――――――――――――――――――――――――
633 名無しのライバー ID:ZoGuoPZze
キレの確認ってなんですか……?
634 名無しのライバー ID:uYfhfEle6
配信前に本日の台パンの具合を確認する
職人か何かですか??
635 名無しのライバー ID:uiZKPprrR
台パン職人の朝は早い
636 名無しのライバー ID:MWytF56F3
朝(午後3時)
637 名無しのライバー ID:Spabm9s4S
おやつの時間に起床してる台パン職人
638 名無しのライバー ID:MoBthread
エナドリ博士がお通りだぞ!
――――――――――――――――――――――――
御影 和也@kazuya_underlive
これは怪物元気の水色缶
色で分かる
カロリーオフなので女性にもピッタリだぜ
――――――――――――――――――――――――
639 名無しのライバー ID:qxbUk7CUN
>>638
いや、お前なんで分かんだよ……
640 名無しのライバー ID:GtOcWDr1L
>>638
エナドリ博士草
641 名無しのライバー ID:zKMwQPfJW
>>638
こぼれた液体の色からメーカー名まで当てるの冷静にヤバイだろ
642 名無しのライバー ID:Y38i5nHrr
テキトー言っとるだけやろ
643 名無しのライバー ID:PGUrhjUwQ
――――――――――――――――――――――――
常闇 忍@台パン控える@shinobu_underlive
なんでわかるんだ……
えっ、こわいんだけど
後サラっとゼロカロリーをバラすのやめろ
――――――――――――――――――――――――
東雲 愛莉@airi_underlive
これって匂わせってやつですか??
――――――――――――――――――――――――
644 名無しのライバー ID:8lqfE9iMc
あっ……(察し
645 名無しのライバー ID:ula9xZQ8i
ちょっとカロリー気にしてるの可愛いじゃん
646 名無しのライバー ID:TufbvyoVb
燃える? 燃えちゃう?
647 名無しのライバー ID:BlchgpQaw
そういうのは脱サラの役目でしょ……
648 名無しのライバー ID:O2Agut4Jz
――――――――――――――――――――――――
御影 和也@kazuya_underlive
流石の俺でも匂いだけで判別は難しいなぁ……
ってか、エナドリ検定とかってこの世に存在しないのか?
就職に有利になったりすると尚良
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649 名無しのライバー ID:huXWo9x8Y
違う、そうじゃない
650 名無しのライバー ID:qZMOotaZQ
悲報 エナドリ博士匂い判別は不可
651 名無しのライバー ID:OtqIVNx4y
草
652 名無しのライバー ID:WOr8oB0tK
エナドリ案件いつかもらえそうだよな、とマジレス
653 名無しのライバー ID:sM7aC15ki
割とマジであり得そうだから怖い
654 名無しのライバー ID:c/jS4GE/V
就職に有利に働く事はなさそうやな
あったらエナドリ推奨のエグいブラック企業なんじゃ……?
655 名無しのライバー ID:6IsDHuO76
なんて不健康そうな……
656 名無しのライバー ID:DFN+SKvpb
配信者皆気軽にどんどん飲んでるけどカフェインの過剰摂取は毒でしかないぞ
657 名無しのライバー ID:tKayZesBZ
ライバーに健康診断させろ定期
658 名無しのライバー ID:MoBthread
全員に健康診断させて特番作ればええやろ
スリーサイズも勿論公開でなァ!
659 名無しのライバー ID:x04rTSaln
うっわ
660 名無しのライバー ID:gckineki/
きっしょ
661 名無しのライバー ID:3oRn4Xyyr
一行目までは同意できるけど
662 名無しのライバー ID:GN5XCz8hd
あれ? もしかして炎上しないの……?
663 名無しのライバー ID:6oo2qarpu
流石にしないしない
エナドリ狂いなのは元々の設定だし
接点らしい接点は今回初だしな
664 名無しのライバー ID:3DKYiQVKh
そういうの期待するんじゃないの
665 名無しのライバー ID:UgG7pBZMQ
身体は炎上を求めちゃうからネ
666 名無しのライバー ID:NBV8O4W7a
いや、あの……これ……
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ルナ・ブラン@1/X コラボ配信!@luna_underlive
明日、あーちゃんと怜さんとコラボします!
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日野灯@akari_underlive
明日19時~
るーと、怜先輩の三人でコラボします!
ありそうでなかったコラボ
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667 名無しのライバー ID:bgPr1kQY2
あっ……
668 名無しのライバー ID:Dc8HhQ++y
マジで……?
669 名無しのライバー ID:1Zwcr8qad
ファ?!
670 名無しのライバー ID:gckineki/
お兄ちゃんムーブで構ってあげる様を見せろ、オラァ!
◇◆◇◆◇◆
「さっきはその……失礼な態度でごめんなさい」
「ああ、いいのいいの。
「む……だいすきじゃない」
「えっ。じゃあ嫌いなの?」
「ふつう……だもん」
「私は合格かな?」
「別にそんなんじゃないです……ただ、わたしはお兄ちゃんが心配だっただけで。本当に今までそういうのには恵まれなかったから」
「ザ・良い人を絵に描いたような人だからねぇー、良くも悪くも彼は――」
「誰にでも優しいのよね」
「誰にでも優しいから」
私が言葉を紡ぐと同時に彼女も全く同じ言葉を口にしていた。お互いに顔を見合わせて思わず顔をほころばす。
「少なくとも私含め、今の彼――神坂 怜と関わっている人たちはそういうのとは無縁だと思うよ。世の中悪い人は多いけど。そう言う人ばかりでもないから」
「そうであってほしいとわたしはおもっています……もう裏切られたくはないから……」
本当に、どうしようもなくこの兄妹は……どうしてこうも何とかしてあげたいなんて思ってしまうのだろうか。どうしてだろう。ほんとうに。どうしてなんだろうか。
私は深く考えるのを止めて、雫ちゃんと他愛のないファッションの話とかしながら虎太郎くんを膝の上で撫でまわすのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
『アラサーがVTuberになった話。』第3巻発売中です。
3巻の重版決定しました。
ありがとうございます。
■特典情報■
■メロンブックスさん
特典SS『新衣装 ルナ・ブランの場合』
書き下ろし小冊子付き限定版『それでも太陽はあなたの隣を歩みたい』
■ゲーマーズさん
特典SS『新衣装 日野灯の場合』
書き下ろし小冊子付き限定版『それでも月は寄り添いたい』
■アニメイトさん
特典SS『御影和也のあんだーらいぶ裏事情』
■BOOK☆WALKERさん
特典SS『東雲 愛莉のつぶやき』
引き続き応援をよろしくお願い致します。
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