第5話 給仕のお仕事
食事を作って終わりではないのが最近の悩み。新入生が給仕係をするのが常なのだが。これは他の学院生が主に先輩の顔と名前を知る機会を増やした方が良いと言う俺の独断と偏見だ。魔術師団には連携感が何より尊ばれる。顔見知りの人間が居た方が何かと便利なのだ。俺は魔術師団には知り合いが多いから良くその手の話を聞く。その給仕係が体調を崩してしまったのだ。インフルエンザだと言うので隔離してある。
「フレイヤ、給仕手伝って貰ってありがとな」
「大丈夫ですよ、レオニスさんの仕事量に比べればこれくらい楽勝です」
「俺の仕事量に比べられてもな……」
「……あはは」
給仕の前は朝食の準備の仕事していたし、その前は朝食の仕込みをしていた。その前は夜警していたし、その前はイザベルの魔法の的で逃げ回っていたし、その前はなんだけっけ? 風呂の前の記憶がない。同じ事の繰り返しで、増えて行っているのは給料と生徒の顔と名前。魔法理論の基礎は付いたと思う。応用は厳しいが、初年度生に基礎を教える事もたまにしている。本当に教員が病欠の場合とかだが、帝国、共和国、秦国合同の魔法力学の学会の発表がある時などのっぴきならない場合のみだ。
「レオニスさんは何でも出来るイメージです。出来ない事の方が少ないんじゃないですか?」
「まあ、幼少期の頃からランドルフ古流剣術覚えて、接近戦のロイ拳法覚えてから入学してから時間だけはあったから先人たちの偉業をなぞる形で覚えていった感じ。確かに出来るない事の方が少ないな」
「じゃあ、ドラゴン退治とか……」
「あ、ウチの家系ドラゴンと友達だから退治できないんだわ、下竜言語習わされるし」
「さすがエリート集団ブラッド家ですね。一大勢力で三国同時に攻撃されたとしても退けられると言われるだけありますね」
「創始者がバケモンだから。医学、政治、法律、武術、言語、財力、運。全てに愛された男とか呼ばれてんだぜ? 賭けで負けたことが無いっていうのはフレイヤも聞いたことが有るんじゃないか?」
「え? 不敗の男ってブラッド家の創始者なんですか?」
「モテるは、負けないわ伝説の男なんだわマジで」
「へ~。それでか……」
「ん?」
「いや、何でも無いですよ?」
「それならいいけど。この仕事を楽しくする方法考えないとな……」
「制服を可愛くするとか? 可愛い女の子に接客されて嫌な気持ちになる人は居ませんし、可愛い制服が着たい子が増えて給仕が楽になるかも」
「採用したいんだけど、俺が考える可愛いと女子が考える可愛いが合っているのか疑問が残る」
「なぜですか?」
「その制服は外注せずに俺に回って来るから、デザイナー雇う予算が有ればなぁ」
「そこはほら、みんな大好きレオニス金庫にお願いすれば!」
「うん、俺の給料から出てるねそれ」
「どうせ使い道無いんですし、これを機に使うのはどうです?」
「学院生に殺意を覚えたのはこれが六度目だわ」
「あら、意外と少ない。生徒思いですね」
「学院生は宝だからね!」
「えぇ、そんな事言われるとレオニス基金が出来ますよぅ。そのお金で制服を外注しましょう」
「うん、もうそれでいいや」
給仕の仕事が一段落した合間の時間であったが、フレイヤの話を聞きレオニス基金は設立し、可愛い制服が外注されたのはこの二か月後の話だった。
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