第3話 魔法の的役
風呂に入る前にイザベルの魔導書に捕まった。表現が変だが今回は拘束用の魔法だ。なるほど警官や自警団、騎士団が使えば犯罪者を捕まえるのに役に立つだろう。だが、魔術士も魔法士も法規組織には所属しない。というか出来ない予備役として軍に組み込まれるので魔法師団と云うくくりだ。
よってこの魔法は役立たずなのだ、戦場で相手を非殺傷で捕らえるのは高貴な身分な者だったりする。戦場は非情だ.それ以外は殺してしまってもしょうがないで終わりなのだ。
最近は魔法士の攻撃を軽減させる武具を作れる鍛冶屋や付与術士なども増えている。これで魔法士や魔術士は自分で自分を守る力を術を磨くようになってきた。王立魔法院にも剣道場があるし、魔法士は剣と盾を。魔術士は魔導書と杖を持って戦うのが基本スタイルになっている。
結論から言うとこの魔法は嫌がらせ以外には使えない。拷問するなら別だが。
「で、これから風呂に入る俺を何の為に拘束したのか簡潔に答えろイザベル」
「主人がお風呂に入る前に風呂に入るなんて生意気よ」
「いちゃもん付けんな、お前風呂嫌いだろ。水浴びでもしてろよ」
「こんな春の初めに水浴びしたら風邪をひいてしまうじゃない馬鹿なの?」
「掘った溜め池に焼いた石を入れて風呂にすることも知らない奴に馬鹿って言われたくない」
サバイバル経験もしている元学院生を舐めないで頂きたい。蛇が美味しいことだって知っているのだ。風呂の炊き方は心の平穏を得る為に有効な手段だ。
「そうやって馬鹿にして私だっていつまでも世間知らずじゃないのよ!」
「飯の炊き方だってしらねえじゃあねぇか!」
「人には得手不得手があるのよ!」
「モノは言い様だな! 研究馬鹿が、いいからこれ外せよ!」
「そこから出てみなさいよ。それでこの魔法式の問題点観測するから」
え? この拘束自力で解かないといけないの? 問題点を観察ってことはまだ完成してないはず。魔法式を見るんだ俺ぇぇ!
「手足の拘束の他に対象の魔術回路も乱す作用があるから」
「絶対ハズレねぇじゃねぇか!」
「ねぇねぇ、さっきまで同列と持っていた奴が遥か高見に居る事に気付いた今の心境を教えてくれない?」
「……。石化と同じだ、この拘束がある限り俺はここから動けない。すなわち学院内の雑事は全て履行不可能だ」
「つまり?」
「また、学院生に石やら腐った卵を投げつけられて、ガチ泣きした時が再来するわけだな」
「っ…………」
「ねぇねぇ、どんな気持ち? 持たざる者が持てる者に負けてると思ったら、他の全てに負けていた事実に気付いた時の気持ちは?」
無言で拘束が消えた。手足に違和感が無いか確かめ、魔術回路も正常な事を確認していると、
「これで勝ったと思わないことね!」
捨て台詞を吐いてイザベルが逃げていった。
「風呂風呂……」
いい加減死なないとは云え心は疲弊してるのだ一日の終わりぐらい風呂で終わりたい。このあと夜警だけど……。一日って何時間だっけ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます