第12話 友人と心配

「で、何がどうしたらデート対決になるのよ」


エリーザにじっと見つめられて苦笑いをする。

彼女には忠告を貰っていたのにどうする事も出来なかった自分が情けない話だ。


「私だって嫌なのよ」


断れるものなら断りたいが侯爵令嬢の私が無駄に盛り上がっている王太子二人を止める事は出来ない。

エリーザは紅茶のカップをソーサーに置くと私をじっと見据えた。


「良い?デートするのは良いけど絶対にバレちゃ駄目よ?あの馬鹿王太子達にも言っておきなさい」

「ちょっとエリーザ!あの二人を馬鹿呼ばわりは…」


元婚約者様だけを馬鹿呼びするならまだ良いけどクリストフ様達は決して馬鹿ではない。ちょっとおかしい人達だけど。私が注意しようとするとエリーザは目を大きく開いて詰め寄ってくる。


「一人の女の子を困らせているのだから馬鹿で十分よ!」

「そ、それは…」

「大体デート対決って何?どうやったら勝ちなのよ」

「それは私が聞きたいわよ」


エリーザは「はぁ?」と淑女らしからぬ声を出した。

周りに人が居なくて本当に良かったと思う。

名門貴族のご令嬢がこんな声を出していると知られたら馬鹿にされるに決まっているからだ。


「全くあの馬鹿二人は…!一回しばいてやろうかしら」

「相手は王太子よ。駄目に決まってるでしょ」


段々と口が悪くなる友人に頭が痛くなる。

注意すると「つまらないわ」と紅茶を飲むエリーザに溜め息を吐く。私の事を思ってくれているからだろうけど彼女は時々過激な事を言い出すのだ。それこそ国を敵に回すような事まで言う時もある。

気持ちはもちろん嬉しいが落ち着いて欲しいものだ。


「リーザには落ち着いた婚約者が必要よね」


昔から常々思っていた事だ。

小さく呟くとエリーザには睨まれてしまう。


「どういう意味よ?」

「私の事を心配してくれているけど、私だってリーザの未来を心配しているって事よ。誰か良い人は居ないの?」

「前にも言ったけど考えた事はないわ」


手を振って「ないない」と返してくるエリーザを見ていると本当に恋愛とか結婚に興味がないのだろうと思ってしまう。

本当にそれで良いのかしら。


「大体今はリアの事の方が心配なの!私の話はまた今度ね!」

「そっちに話を戻すのね」

「誤魔化そうとしても無駄だからね」


別に誤魔化そうとしたつもりはないのだけど。

つい目を逸らしてしまったのは無意識的に誤魔化そうとしていたからかもしれない。


「とりあえずデート対策をするわよ!」

「そうね」


当日、雨が降ったら良いのに。

そう思いながらエリーザと対策会議を開いた。




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