俵万智著 短歌のレシピ新潮新書 2013年3月20日発行より

第10講 あと半歩のさじ加減を考えよう

115ページより


鉛筆を置く音がする窓ガラスに結露うっすらともう十二月


これも、よくまとまった完成度の高い歌だ。第二句の「音がする」のところで切れるのだろう。今までよりなんとなく鉛筆を置く音が響くこと。これに気づいたところが、まず手柄だ。そしてそのことと窓ガラスの結露とを、一首のなかでぶつけることによって、繊細な季節感というものが、うまく出された。


 惜しいなと思うのは「もう十二月」の部分である。確かに作者は、ごく自然にそう思ったのだろうが、この「もう」という感慨は、一首に必要ないのではないかと思われる。

これだけ繊細な季節感を表現できたのだから、「もう」という半歩は引っ込めた方がいい。


鉛筆を置く音がする窓ガラスに結露うっすらと浮く十二月

俵万智先生、推敲。

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