第27話 カバーストーリー1
「それで――なんの用だよ伊代。もしかして自慢か?」
不貞腐れたような声で言ったのは速川だった。
一時限目休み、俺と速川は今、一道に呼ばれて体育館裏へときていた。
「違う違うそんなんじゃないって。つか俺もこの状況についていまいちよくわかってねんだよ」
俺が言うと速川は「ほんとかよ」と疑わし気な目で睨んできた。そう怪しまれても知らないというのに。
おいおいめちゃ不機嫌じゃんか速川のヤツ……なに企んでるか知らねーけどマジ頼むぜ一道! お願いだから平和的解決を! 下手打って誤解を加速させるだけは勘弁で!
心の中で手を合わせ拝み、俺は呼び出した張本人に救いの視線を投げた。
「伊代君を疑うのはお門違いよ、速川君」
俺の隣まできた一道が速川に向かってそう言い放った。
「…………」
黙る速川だが納得したようには到底見えなかった。それでもヤツが俺から視線を外してくれたのは紛れもなく一道のおかげだろう。
「それで一道さん――俺たちになんの用? 朝の件、ようやく冗談だって認めてくれるのかな?」
じ、つ、は、作り話でした~! チャンチャン! となるよう俺はさりげなく誘導するが、一道は小馬鹿にするよう鼻を鳴らし、俺に目もくれず首を横に振った。
「私があなたたちを呼び出した理由はズバリ速川君――あなたよ」
「え、俺?」
自分を指差し確認する速川に、一歩前に出た一道は笑顔で頷く。
「ええ。私と伊代君が付き合うことになったいきさつを聞いてほしいの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます