第23話 あれ、財団の方?1
「それで、こんな所に連れてきてどうするつもり? まさか、さっきの冗談を鵜吞みにして本気で私に手を出そうとしてるんじゃないでしょうね?」
クラスにいたら話がややこしくなると判断した俺は、屋上に向かう階段の踊り場に一道を連れてきた……のだが、人気のない場所を選んだせいあってか彼女に疑われてしまう。
「いや、別にやましい目的があってここをチョイスしたわけじゃねんだけど」
「はぁ……知ってるわ。話があるから、よね? 木塚君ね、あなたちょっとの下ネタでテンパりすぎよ。もうちょっと余裕を持って笑って流せるようになさい。でなきゃ一生モテず童貞のまま朽ちるわよ?」
なにコイツどこのママッ⁉ この上なく余計なお世話なんですけどッ! 失礼しちゃうわッ!
性行為の経験ない者同士のはずなのに、一道はちょくちょく俺を童貞だとイジってくる。これはまさか嫌よ嫌よも好きのうち的な意味合いが含まれているんではないか、一道は俺の童貞を
まさに世迷い言な考えごとをしている俺に、一道は
「表情がだいぶ騒がしく目まぐるしいようだけど、なに? また童貞特有の妄想に入り浸っているの?」
「浸ってねーし童貞とか今関係ねーからッ! ……つかお前、ほんとなに考えてんの? 俺と付き合ってるなんて嘘を言いふらしてなにがしたいの?」
「ふふ……わからない?」
「……そうだな、散々口酸っぱく言ったはずなのに約束を反故にするような真似をされたってことはつまり故意、お前はわざとやったんだ。動機はわからんがどうせ碌なことじゃないだろ。ほんと、信じた俺が馬鹿だったぜ」
自嘲する俺がおかしかったのか一道はくすりと微笑み、ゆるりと首を横に振った。
「わかってない、やっぱりあなたわかってないわ」
「じゃあなんだっつんだよ。もったいぶってないで教えろ」
俺が苛立ちを隠さず声に乗せて訊くと、一道は馬鹿にするような笑みを維持したまま答える。
「私はただ――あなたが望む理想をできる限り再現しただけよ」
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