第漆拾漆話 支店オープン

 私たちが、護衛依頼を受けている間に店舗の内装工事も料理人のレシピを習い終わり、いよいよ貴族区域のレガール支店のオープンの準備が整った。

 支店の店名は、フルールに決まったらしい。



「レオン兄さん。いよいよオープンですね。ダニエルさんも研修にきた料理人さんは、レシピを伝えただけで、自分たち以上の味にしてしまったので、教えることがなかったと言ってました。

相手が公爵家の料理人でも負けてられないとも言ってました。」


 公爵家の料理長や料理人なので、腕がいいのは同然ですよね。

 でなければ、貴族家の料理人として雇われるわけないですからね。


「料理長のマックスもレガールの料理人は手際がよく、腕もそれなりだから雇いたいとか言っていたぞ。

 まあ、店があるから店長のダニエルは難しいかもしれんが、レガールで雇われている料理人は、本人がやってみたい気持ちがあれば支店で、経験を積ませ王族や貴族の対応を学べば、王宮料理人として働くことも出きるかもしれないぞ。」

「マックスは、元々は王宮料理長を務めていたのだが、現王宮料理長の腕が自分と同じくらいになったからと王宮料理長を辞めて、うちの屋敷の料理長になったんだ。

レガールの料理人は、アオイと出会ったことにより、コネができ、料理人として名誉である王宮料理人という高みを目指せる可能性ができのだからな。」


 うわぁ、王都の公爵家の料理長は、元王宮料理長だったのか。

 ダニエルさんがそれを知ったら大変だろうな。

 一般区域の食堂の店長が元王宮料理長にレシピを教えていたのだから……

 そういえば、私もお城で、マルクさんにレシピ教えたな。

 何気なく教えちゃってたけど、マルクさんは、王宮料理長ってことだよな。


「どうしたアオイ?困惑したような顔をして」


「えっと、ダニエルさんがレシピを教えていたマックスさんが元王宮料理長だったと知ったら大変だろうなって思ったけど、私もお城で、マルクさんにレシピを教えたけど、マルクさんは現王宮料理長だよなって考えたら大丈夫だったかなって思っちゃったんだよ。」


「大丈夫じゃないか。何か言われたわけでもないだろう?」


「うん。感動したみたいで、師匠と呼んでいいかと言われたりはしたけど……勿論、断ったけど……」


「あはは、アオイが王宮料理長の師匠か。面白いな。許可すればよかったのに」


「面白くないよ。もし他の人がマルクさんが私みたいな子供を師匠って呼んでいるところをみたら大騒ぎになっちゃうよ。」


 料理大会があり腕を競ったりしているわけでないけど、王宮料理長は全料理人のトップと言ってもいい人だ。

 そんな人から子供の私が師匠と呼ばれるのは絶対に避けたい。


「そんなことよりオープンだし、今日は店を見に行くの?」


「父上がオーナーだが、王都にはいないから俺とアオイがオーナー代理ってことになっているからな。

見に行くぞ。公表したし、アオイにちょっかいかけてくる貴族もいないだろうしな。」


「私もオーナー代理なの?」


 聞いてないんだけど……


「そうだぞ。言ってなかったか?」


「聞いてません。そういう大事なことはちゃんと伝えてほしいです。オーナー代理ってことは責任ある立場になるんですからね。ほうれんそうは忘れずにです。」


「何だ、ほうれん草って、いきなり野菜の話か?」


「違います。野菜のほうれん草の話ではないです。報告のほう、連絡のれん、相談のそうを略してほうれんそうです。」


「そうか。そう言うことか。よくそんなこと知っているな。俺は知らないぞ。」


 それはそうだろう。ほうれんそうは、日本のビジネス用語だからこの世界にあるわけがない。

 それにほうれんそうは、もう古いとか成果が出ないから無意味という意見もあったりする。

 社会人としての基本的なことなので、古いと言われようが無意味と言われようがほうれんそうというビジネス用語が無くなることはないだろう。


「まあ、それはいいです。いつ行くのですか?」


「オープン直後や営業時間中は、混んでいるだろうからお客の対応で話を聞けないだろうから十六時過ぎくらいだな。客入りも見ておきたいからな。」


「わかりました。じゃあ、それまでに戻ってくればいいですね。」


「ああ。どこかに行くのか?」


「ギルドで依頼を見てこようかと思ってます。あとレガールに顔を出してきます。」


「そうか。一緒に行こうか?」

「一緒に行ってレガールで、昼食を済ませて、そのまま行けばいいからな。」


「じゃあ、そうしましょう。」


 そうして、私とレオン兄さんはギルドに行ったのだが、リクエストボードにもAランクの依頼を受付で聞いても受けたい依頼もなかったので、レガールに向かった。

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