第陸拾漆話 はじめての野営(前編)

 途中で、ヒューイットさんたちと交代し、私たちが馬車の外で護衛任務をした。

 レオン兄さんに言われた通りに索敵していたが、魔獣も盗賊の反応もなかった。


「日も暮れはじめて来たし今日はこの先の野営地で野営するぞ。」


「レオン兄さん、野営地って何?」


「行商人や商人など馬車で移動する者たちが野外で寝泊まりする野営ができるようになっているひらけた場所だな。広さは様々だが、この先の野営地は広い方だから二十組くらいは野営できる広さがあるな。」


 地球で言うところのキャンプ場みたいものなのかな。まあ地球の最近のキャン場は、宿泊施設があり、食事も出て、温泉もあったりと、いわゆるキャンプって感じではなく、手ぶらで行けちゃったりするところもあるけど、そんな感じではなく、野営地は、自分達で何もかもやる昔ながらのキャンプ場って感じなのかな。

 火おこしや食事、見張りなどは自分でやる感じだね。


「見張りは、私たちもやるんだよね?」


「ああ、通常はそうだが、アオイたちは未成年だからな。今回は俺とヒューイット、ミオが寝ずの番をするから、アオイたちは、馬車の中で父上と母上と一緒かテントを張って寝て大丈夫だぞ。」


 普通は、冒険者は依頼主さんとは別にテントで寝たりするみたいだし、馬車の中で皆で寝るには横になって寝ることは出来ないからテントで寝ようかな。


「わかった。じゃあテントで寝ることにするよ。アナもそれでいいかな。」


「冒険者としては、当たり前だからいいよ。」


 そんな話をしながら歩き進んでいると野営地に着いた。

 既に五組くらいが野営の準備をしていた。


「この辺りで野営するか。基本は他の野営者とは干渉しないようにな。魔獣や盗賊などが現れたりして、不測の事態の時には、協力しあうこともあるがな。余計なトラブルを避けるためにもルールは必ず守るのが大切だ。」


 確かに、話しかけたり、話しかけられたりして余計ないざこざを起こして、依頼主さんに迷惑をかけたりしたら依頼主さんを危険にさらすこともあるからね。

 それにお互い余計詮索されたくないしね。

 貴族は、都市や町の宿泊施設で安全に寝泊まりするけど、今回はゆっくりなのとお父様とお母様が野営してみたいとのことだったので、今日は野営地で一泊することになった。


「じゃあ、俺とヒューイットは、逃げ出さないように馬車の馬を木に綱をくくって来るからアオイたちは、馬車の近くにテントを張っておいてくれ。」

「テントの振り方は、ミオに聞くといい。」


「大丈夫だよ。レオン兄さん。テントの張り方は知っているから。」


 こっちの世界では、テント張ったことないけど見せてもらったテントは、地球のテントと似たような感じだから前世では、テント張ったことあるから大丈夫だろう。

 出来なかったら、ミオさんに聞けばいいわけだしね。

 そう思いながら私は、アイラとアナと三人でテントを張っていった。

 ミオさんは、私たちの様子を見ながら薪を組めて、火をおこしていた。


「あら、アオイちゃんもテントで寝るの?」


「はい。お母様。馬車だとお母様たちが横になって寝れませんし、私も冒険者なので、冒険者らしくテントで寝ます。」


「そうなのね。一緒に寝られないのは残念だけど、冒険者としての経験をつむためなら仕方ないわね。」


 それだけを言うとお母様は、馬車に戻っていき、馬を木につないでいたヒューイットさんとレオン兄さんが私たちのところにやってきた。


「アオイたちは、テントをうまく張れたな。夕食は何にするかな。」


 ヒューイットさんとミオさんは、収納魔法使えるが通常の収納魔法は時間停止の機能はないので、普通は食事は干し肉や簡易スープだけになるのだが、近くに魔獣がいたら狩って、焼いたりしてたべたりもするらしいけどね。

 私たちは私の収納にたくさん食材を入れてきてあるので、その場で色んな料理を調理することができるので、ヒューイットさんは、夕食を何にするか悩んでいるみたいだ。


「ヒューイットさん、匂いで魔獣が近づいてきたりしますか?」


「ああ、野営地ではない所で野営する場合は、匂いで魔獣が近づいてくるから注意が必要だが、野営地は野営地外に匂いが漏れないように結界が張られているから大丈夫だぞ。」


「じゃあ。焼肉かカレーはどうですか?」


 キャンプと言ったら、バーベキューかカレーが定番だからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る