カナタ、舞う
とりあえず無事に更新出来た事が嬉しいです。
ただ1回目なのに打ってすぐ熱と気怠さで「ああこらダメだ寝よう」と冷えピタ貼る様になったので2回目が少し怖い……寝たら治ったのでまだ備蓄は余裕がありますので次の備えにします。
────────────
…
「おお…デケェ……」
ステージに着くなり、目線は思わずその大きなキュクロプスの男性へ向かってしまう。
緑色のハーフパンツに上裸、大きな一つ目に大きな身体。
木の幹のような薄ら赤い四肢は筋肉がぼこぼこと覆われ、手首足首を守るような物も無く、まさに身体一つ。
仲間の人々は巨大な剣や斧などを持っていたがこの人にはそれが見当たらない。必要無いと言う自信の表れなのだろうか。
「えははっ!なぁに言ってやがる。そんなおめぇさんも人族の中じゃあデケェじゃねぇか!おれなんて巨人族の中じゃあ小せえほうでぇ!えははははっ!」
そう豪快に大口を開けて俺の言葉を
見た目のような厳つさはあるが、その笑いは決して恐さを帯びたものではなかった。
言ってしまえば土方のおっちゃん感があって親しみやすい。
「そしてこっちはイケメンマッチョと……うおまぶし」
ぐるり、と視点を反対へ回して見るともう一方のリーダー、エルフのイケメンがそこに。
人形のような
長く、
──きゃー!ハルディン様ー!!
なるほど黄色い悲鳴が飛ぶ訳だ。見えないオーラが眩しい。
「ありがとう。君の肉体に比べれば劣って見えるが……私はガドゥーラのリーダー、ハルディン。良い試合をしよう」
そんな俺の反応を不快に思う事無く、爽やかに返してエルフのパーティのリーダー、ハルディンは鈍色のガントレットに覆われた拳を握りしめ、トン──トン──と、リズム良く小さく飛び跳ねた。
「アイゼン・アイズ、リーダーのアイゼンだ。同じく良い試合にしようや」
同じく、いや…牙を見せた豪快な笑みでアイゼン・アイズのパーティのリーダー、アイゼンはその薄ら赤い、握った両の拳と共に
ああ、始まる──
「今はまだパーティ名が定かじゃねぇがさっきの馬鹿の仲間、カナタだ。よろしく頼む」
──シャク、両手に手甲──
──あいよ旦那──
ケスルタを通じた、シャクと俺の脳内通信を繋げて同じく名乗りを上げた。
右腕に着いて居た腕甲が、にゅるりと左手に伸びて手甲へ変わる。
柔らかく開いた両手を腰元に下げ、体軸は横に、両足は前後。
構えといった構えは無い、いつでも動ける状態にするだけ。
「攻めも受けも足先、移動が全て最初だ。手は楽にせよ。状況によって対応しやすくなる」というヴァサーゴさんの言葉通りの身体だ。
「準備は良いようだな。試合……開始……!!」
始まる──俺の試合が──!!
…
「行くぜおらぁ!!!」
キュクロプスの男、アイゼンがその一歩の飛び込みと共に吠えた。
弓の様に引き絞ったその
「同時に来るかッ!」
「あっぶねッ!」
重なる二つの衝撃音、既に修復されていたステージへと加わる
拳を避け、後ろへ下がるはエルフの男、ハルディン。
カナタもその巨大な
二人の距離は近い訳では無い。しかしその二人を同時に攻撃出来るキュクロプスのアイゼンが
そして──その威力も。
「避けたかッ!ならまずはおめぇから行くぜカナタァ!!」
「俺かいっ!!」
続け様にアイゼンから見て左へ避けたカナタへ、右拳がぎりりと引き絞られた。
これが三人で行う戦闘の課題であり、利用すべきポイント。
標的が二人、そして互いに敵という関係をこなし、
「後ろがガラ空きだ!!!『風よ!!』」
もちろんその隙を見逃す程のハルディンでは無い。
その巨大なアイゼンの背中目掛け、
───ッッ!
破裂音と共に己の衣服をはためかせる風。
鋭い音とは裏腹に、ハルディンの顔は良くは無かった。
「そんな魔法じゃ効かねぇなぁ!!行くぜカナタァ!!!」
「──青い
風の拳を当てた場所、薄ら赤かった皮膚の一部が青く光沢を放っている事に苦い顔をしたのだ。
かつて噂で耳にした事がある──〝身体を鉄にする一つ目の巨人がいる〟と──!!
「鉄ぅ!?あぶねっ!!」
ハルディンの一撃を構う事無く、引き絞った
「その通り!!おれは身体系・鉄属性!!防具も武器も不要!!己が身体一つで全てを掴み取って来た!!そらそらそらぁ!!!」
「──ッ!なるほど…ッ!身体が鉄なら確かに防具は必要ねぇわなぁ!!」
右へ、左へ、下へ。
襲いかかるその鉄の巨拳をかわしながら、カナタはハルディンに背を向けてまずは自分を狙ったのを理解した。
効かないのが分かってるならまだ実力の分からない自分をエンジンがかかる前に潰すのは通り──理にかなっている!!
「ならばこちらも同時に……!効果的な事をするまでだ──『水よ!』」
ハルディンが前方へ作り出した人の頭程の二つの水球を──回転と共に蹴り飛ばす。
──早い。まるで大砲。
「ッ──!!」
「──ぐッ!」
なるほど、とアイゼンは思った。風よりも質量のある水の魔法なら防具をしていても衝撃としてダメージはある。
さらにこの水球──
「流石エルフよなぁ!!水を〝圧縮〟しやがったか!!」
(なるほど…避けないと少しやべぇ感じがしたのはそういう事か…!)
アイゼンの言葉にカナタはそうなんとなく感じた自分の感に納得した。
恐らく実際の大砲の球と同じような威力があるに違いない、それを瞬時に作り出せるハルディンの実力は確かだ。
「まだまだ行くぞ!!『
ハルディンの言葉に水球がいくつも周りに生み出されていく。
またアレが来る──
「させるかぁッ!!!」
「消え──ッがぁッ!!」
その瞬間、カナタの身体が消え、ハルディンの顎を右膝が打ち抜く。
──瞬動による高速移動を
「ッぐ!『風よ!!』」
「ッ!?クソッ!」
払われたハルディンの右手によって生み出された突風が宙にいるカナタを吹き飛ばした。
追撃をしようとしていたカナタはやむなく受け身を──
「ガラ空きだぞカナタァ!!」
着地点を狙っていたアイゼン。
既に引き絞られた右拳が唸りを上げてカナタの後頭部へ襲いかかる。
「危ない兄ちゃん!!」
「カナタ!!」
そのいかにも不意をつかれた、どうしようもなく見える状況に仲間達は声を上げた。
だが──一方で遠くからこちらを見ていた一人の男は全く違う言葉を口にしていた。
「…空中戦なら〝散々やったろう〟、なぁカナタ。さっさと勝ち抜いて来やがれ」
「──あっぶねー、足場、助かったぜ」
「ッ!?」
「ッ腕を…足場にしただと!?」
その現状にアイゼンは大きな一つ目をより大きくして驚いた。
それを見ていたハルディン、周りの人達も同じくアイゼンの右腕を足場に──片手逆立ちをするカナタの姿に!!
────────────
ルギ
「えええ!!?」
ゼーベック
「……マジ?」
ロス
「大丈夫ゼーベック、勉強してたルギくんや死んでたお前は知らんだろうがこっちは知ってるから」
ダグ
「オラには出来ねぇなぁアレ。シラタマなら出来そうだなぁ」
シラタマ
「にゅー!」
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