お薬のプッシュ

まず錠剤を押し出し

またピニール袋に入れられた

夜の分という薬を開ける


転がる薬の色様々

彩り綺麗な物なのに

大きさが違うだけで

〝たくさん飲んでる〟

なんて思う

「これより多いわ」

「知ってる」

やりとりできると思う

なんでかって

頭がイカれちまって

頭の中に二人いるんだ

姉が優しくて

兄がちょっと怒りっぽい


だからプッシュ

何度もお薬を出しては飲み

心を落ち着かせて

兄姉がいないことに気づかされて

ひとりぼっちの時が来る


お薬が正常に働いているのは

いいことだと人は言うでしょう


薬を押し出すたびに

姉と兄がいなくなるのが悲しい

悲しいけれど心の中で

「いいんだよ」と言われ

勝手に許された気持ちになる


今日も薬をプッシュして

「さあ、飲もうね」と声がする

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