第137話 疑問?
残された国王たちは成長した王子たちに頼もしさを感じた。これで国を任せられると思えてきたのだ。それと同時に今回の件で疑問が浮かび上がる。
「……陛下、本当に学生による手引きだけなのでしょうか?」
「どうだろうな。あの女は一応監視も付けていた。随分と相手によって態度をコロコロ変える気性の持ち主だけに悪い意味で味方もいる可能性も捨て切れなかったからな。そう簡単に脱走させられるとは思えん」
「裁判の後で国王陛下も直に会ったからよく分かりますものね。相手がどれ程の存在なのかすら分からないなんて、とても公爵家の令嬢とは思えませんでしたわ」
「「え?」」
王妃の発言にクラマとザンタは同時に驚いた。そんな話は初耳だからだ。
「あの、何も聞いてないんですが?」
「………何故そんなことを?」
「気にするな。ちょっとした興味本位で話しかけてみただけだ。もちろん、猿轡を外したうえでな。まあ、聞くに耐えん罵詈雑言が飛んできたから怒りよりも呆れるという印象を受けたよ」
うんざりとした感じで苦言を口にする。少し不敬だが実はいつものことでもある。
「………陛下、どうか我々の知らないところで面倒なことしないでくれませんか?」
「相変わらず無駄で面倒なことをなさるのですな。王になっても興味本位で動かれるとは……」
「別に面倒なことでもあるまい。ひょっとしたらサエナリア嬢の手がかりになることを知っているのではないかとも思っただけだ。期待していなかったが、あの怒り狂う有り様と来たら………くくく、猿にしか見えんかったよ」
必死に笑いを堪える国王。これが今のウィンドウ王国の国王なのだと思うとクラマもザンタも呆れるほかない。
「我が君………国王陛下、この年で人を無闇に煽るのは感心しませんぞ。王子だった若い頃なら大目に見てもらえるでしょうが我々以外の者が聞いたら、陛下の信頼が下がりますぞ」
「なら、大丈夫ではないか。ここで聞いているのは馴染み深い者だけなのだからな。ははは」
「………悪趣味だとは思っています」
「同感です………」
「貴方、もう少し考えてほしいわ」
「…………」
自分に味方する者がいないことに気付いて、国王は慌てて話を切り替える。
「と、とにかく、今更逃亡してもどうにもならないことをあの女は分かってはおるまい。だが、あの女を利用しようとする者もいるのかもしれん。私はそれを気にしている」
「そんな者がいるのだとしたらソノーザ公爵家に繋がる貴族でしょうか? もしくは母親の方の家が関係しているのでは?」
「それはおかしいでしょう。公爵夫人の元の家は絶縁を言い渡しています。次女も迎えるつもりはないと伝わっています」
ネフーミの実家のザイーダ侯爵家はネフーミを引き取らず、国で一番厳しい修道院に入れてほしいと頼んできた。絶縁だけでなく、そこまで厳しい処罰を望んだ家がワカナを助けるとは到底思えない。
「むしろ、恨みを持つものでは? あえて逃がしてその後で復讐する。そういう目的も考えられます」
「ほお、あり得そうだな。何しろあの性格だしな。父親のように恨みを抱かれていてもおかしくはないだろう。復讐されるか、そうなってもらった方が面白いのだが」
確かにザンタの言う可能性も高い。ワカナは圧倒的な美貌を持っている。それを利用して男を手玉に取って、他の女子たちを泣かすことも多かった。その線で復讐されてもおかしくない。
「滅多なことを言わないでください。本当に復讐になったら物騒で衛兵の仕事が増えるでしょう。ただでさえ最近はあわただしかったというのに」
「それもそうか。まあ何にせよ、さっさと見つかってほしいものだな。せっかく、肩の荷が下りたというのに」
「………何もしでかしてほしくないものですな」
国王たちはこの事件が早急に解決することを望んだ。できれば何も起きてほしくないと心から望んだが、脱走したワカナは結局問題を起こすことになる。
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