第112話 日記××年××月01日
―フィリップスの日記より―
××年××月01日
僕の名前はフィリップス・ヴァン・ソノーザ。ソノーザ家の次男だ。今日は僕の14歳の誕生日。家族みんなから祝ってもらった。父上と母上からは以前から欲しかった本をもらった。双子の妹のイゴナからは奇麗な花束をもらった。
「フィリップスおめでとう」
「フィリップス兄さま、おめでとうございます!」
「フィリップス、俺からはこれだ」
そして、ベーリュ兄さんからは今書いているこの日記をもらった。少し怖い兄さんだけどプレゼントは嬉しかった。前々から日記をつけたいと思っていたんだ。
「買ってみたけど面倒くさくて仕方ないから何も手を付けてないんだ。もったいないからお前にやるよ。喜びな」
どうやらいらない物を押し付けるためみたいだったけど、これは素直に嬉しかったな。僕は書くことが嫌いじゃないからずっと立派な日記をつけたいと思っていたんだ。
「兄さん、ありがとう!」
「お? おお、喜んでもらえて何よりだ。は、ははは」
僕の反応が予想外だったのかな、兄さんは照れくさいようだ。
「フィリップスお坊ちゃま、おめでとうございます」
「ウオッチさんもありがとう」
執事のウオッチさんも祝ってくれている。相変わらずすごい髪型だ。日記でどう表現すればいいか分からない。ウオッチさんからは新しい筆とインクをもらった。早速、これで日記を書くことに決めた。
「早く飯を食いたいから進めようぜ。フィリップス」
「そうだね兄さん」
兄さんはせっかちだな。もう少し祝ってくれてもいいのに。
◇
「ふふふ、いいものをもらった」
自室に戻った僕はすぐに日記に手を付ける。せっかくの日記だからこれから毎日欠かさず書こうと思っている。分厚い日記帳だから最低三~四年くらいは書き続けられるだろう。初めての日記だから文章表現が変だったり誤字・脱字があったりするかもしれないけど、お構いなく書いてやろう。どうせ僕以外の者が見ることは無いだろうしね。
「でも、僕のことだけじゃつまらないな……。そうだ!」
この日記には僕のことだけじゃなくて、僕の家族のことも書こう。僕一人のことを書いても面白みがないしね。父上と母上、妹のイゴナ、兄のベーリュ、執事もウオッチさんに使用人の皆のことも。
「でも、兄さんは嫌かな」
兄さんは難しい性格してるから嫌がるかもしれない。日記の内容については秘密にしよう。まあ、鍵付きの日記だからそうそう見られることは無いだろうからね。
「まあ、他の人に見られる日が来るとしたら僕がいい大人になった時くらいかな?」
僕はまだ子供だ。うっかりとんでもないことを日記に書くことになる顔しれない。でも、その時はその時だ。
「明日は何があるのかな。まあ、分かってるけどね」
明日はイゴナの誕生日。普通双子なら同日何だけど、僕が産まれたのは午後11時50分でイゴナは十分後の午前0時00分に生まれたから一日違いの差があるのだ。もっとも、そのおかげで二日続けて誕生日を祝えるということになったけどね。
「イゴナにはこれを渡そう」
僕はプレゼントにネックレスを選んだ。数日前にイゴナが綺麗だと言ってたネックレスだ。結構高かったけどね。
「ふふふ、明日が楽しみだ」
僕は妹の誕生日に思いをはせるのであった。
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