第64話 側近は二人?
ウィンドウ学園。貴族と平民が試験に合格できれば誰でも入学できる学園と言われている。貴族の子供たちは確実に通うことになるが、平民の子供も入学できる仕組みが存在するのはウィンドウ王国ができてからの習わしでもあった。何でも、子供のうちから貴族が平民を蔑ろにするのを防ぐためだという。そのかいもあってか、ウィンドウ王国では貴族と平民の衝突が他国に比べて少ない事実がある。もちろん、貴族の階級を気にして子供たちが大きないさかいを起こす頻度も少ない。
だが、今度の件だけはそうでもなくなったかもしれない。この国の王太子が身分の低い令嬢と三角関係を築いてしまったのだから。
「全く、カーズ兄さんは厄介なことしてくれたものだ。学園どころか国に恥をかかせたものだよ。他国の留学生もいるのに」
長男にして元王太子カーズのことを愚痴りながら学園にやって来た第三王子ナシュカ。彼は学園に戻って、自身の二人の側近と合流した。
「やあ二人とも、学園の様子はどうだったかい?」
ナシュカが声を掛けたのは同年代の少年と少女だった。少年の方は短めの赤い髪と青い瞳のバート・デイ・アイムズ伯爵令息。少女の方はボブカットの青い髪に赤い瞳のバイラ・エス・レックス伯爵令嬢だ。バートはナシュカが相手でも気安い口調で話すがバイラは誰に対しても丁寧な口調で話す。容姿も性格も正反対の二人だがナシュカに信頼されている側近だ。
「ナシュカか。例の男爵令嬢のことだろ、面倒なことになったぞ」
「面倒? 動きがあったのかい?」
バートが面倒くさそうに言うと、バイラが無表情で会話を続けた。
「それが、まともに情報が入ってこないのです。第一校舎の先生方にも聞いてみましたが、周囲から無視されたり避けられているだろうと予想論しか言われません」
「酷い場合は苛めもあり得るだとさ」
「やはり、そうなったか」
ナシュカは特に気にした様子ではなかった。カーズが懇意にしていた男爵令嬢マリナが周囲から孤立する可能性が高いことはカーズから話を聞く以前から分かっていたことだった。彼女が原因でサエナリアが泣いて走ったと周囲からは疑われているのだから悪い噂を流されても仕方がない。マリナに非がなくてもだ。
「申し訳ありません。第一校舎ではここまでが限界でした」
「いいさ。僕が来るまで第三校舎に入るなと言ったでしょ? 第一校舎の生徒と教師側の変化を見ていてくれていればよかったんだよ(学園は情報収集が難しいからね)」
「それなら問題ないぞ。一年の皆は王太子がお前かレフトン殿下になるか不安になってただけさ。教師の方もにたようなもんさ」
「そうか。ありがとう。後はマリナ様か」
ナシュカが学園に戻ったのは側近と共に直接マリナに会って話をすることだった。今回の件の重要人物としてカギを握っている可能性がある以上、王家から事情聴衆が来る前に直接見て聞いてみたいと思っていたのだ。
「マリナ様か、どんな人なんだろうね」
「おい、ナシュカ。まさかお前が直接会いに行くつもりか?」
「当然さ。サエナリア様の行方が分かっていないんだ。彼女が友人だというなら知っているかもしれないでしょ?」
「わざわざナシュカ様が行かずとも、私達が行けば、」
「僕が直接見てみたいのさ。その令嬢がどんな人物かをね」
こうして一年生の三人は、三年生のマリナがいるという第三校舎に向かった。
「(今頃はレフトン兄さんはソノーザ公爵家に向かっているかな?)」
レフトンも独自に動くと聞いていたナシュカは見事にレフトンの動きを当てた。レフトンもまた二人の側近を伴って行動を開始していたのだ。
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