第61話 (43裏側).次男?

長男の不祥事の件で降格まですることは無かったが、スミロード公爵家はしばらく笑い者の落ち目貴族となったのだ。かつてのソノーザ家のように。侯爵どころか伯爵すら陰口を口にする始末。


長男の代わりに家を継いだのは、イゴナ・ヴァン・ソノーザが嫁いだ次男だった。そのため、ソノーザ公爵の妹イゴナが、現在のスミロード公爵夫人という立場にある。サエナリアの叔母にあたる人物だ。


「いや、あの日記にも妹のことは何度も心優しいと記されていただろう。妹の方は弟と同じで大丈夫だろう」


「そうですね。今のスミロード公爵に悪い噂も聞かないし………」


今のスミロード公爵はもともとが次男だったこともあるせいか、良くも悪くも目立ったことはしていない。人柄は温厚な性格で消極的だという。その妻も似たような性格らしい。これならスミロード公爵夫人の姪であるサエナリアを預けても問題ではない。


「それだけではない。私が見た限りでは、スミロード公爵はソノーザ公爵とは距離を置いているようだった。彼の妻は行方知らずのフィリップスとは双子の関係だ。仲が良かった次男がいなくなったことでソノーザ公爵と不和になったのかもしれん」


「そういえば私もお茶会でスミロード公爵夫人と会った時、ソノーザ公爵を話題に出したら少し嫌そうな顔になっていましたわ」


「決まりだ。サエナリア嬢は見つかり次第、スミロード公爵の養子にしよう。スミロード公爵にもそう伝えるとしよう」


「それなら早めに伝えましょう。ソノーザ家が手を回す前に手を打たないと」


「うむ。後は見つけるだけだな」


「ええ。見つかればですが……」


「……」


ソノーザ家の処遇とサエナリアの扱いについて国王と王妃が話し合って決めたが、見つかるかどうか考えると難しそうな悲しそうな顔になる。


「……見つかればの話になるな」


「ええ、あれほど業の深い家で生まれていたなんてね」


二人はサエナリアがこのまま見つからない可能性が大きい予感がした。というのも、他の令嬢と一線を画すほど頭が回る彼女がそう簡単に見つかるような隙を見せるとは思えないのだ。王太子の婚約者として何度かあった二人は鮮明に覚えている。彼女の誠実さと礼儀正しさ、美人でなくても身についている高貴さも。そんな彼女が家出するからには絶対に戻ってこないという予感がする。


「彼女のことを考えると、見つからないほうが望みなのかもしれませんね」


「それでも探さないわけにはいかない。私は、」


国王が何か言いかけた時、ノックする音が聞こえてきた。


「入れ」


国王の声で入ってきた兵士は礼をすると、二人の王子の動きを報告した。


「国王陛下、第二王子殿下と第三王子殿下が謹慎中の王太子、」


「カーズはもう王太子ではない」


「失礼しました。お二人は今カーズ様と面会しています。いかがしますか?」


兵士が言うには、カーズとその弟たちが面会しているという。


「あの二人なら大丈夫だ。そのままにしてやれ」


「かしこまりました」


それだけ聞くと兵士はそのまま去っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る