第35話 (18裏側).邪神?
明日は仕事で忙しくなるので、明日の分を前倒しで投稿します。
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ワカナが部屋から抜け出したという知らせが使用人たちの耳に入った。
「ワカナお嬢様ー!(くそっ、どこいんだよ!)」
「どうかお戻りくださーい!(どこまで我儘なんだ、あの女!)」
執事の二人は自室から出て行った公爵家次女のワカナ・ヴァン・ソノーザを探していた。なかなか見つからないので、無礼を承知でソノーザ公爵とカーズ王太子のいる客間に踏み込んだ。
「申し訳ありません! ワカナお嬢様はこちらに……ってワカナ様!?(まじかよ、何してんだこの女!)」
「旦那様と王太子殿下もご一緒に!?(うわ、なんかヤバい!)」
どうやらワカナは勝手に客間に入ったらしく、何かやらかしてしまったのが目に見えて分かってしまった。ベーリュから執事二人に怒りを交えた命令が飛んできた。
「お前たち何をしていた、ワカナが勝手に入ってきたんだぞ!」
「「はっ! 申し訳ありません!(俺達のせいじゃないのに!)」」
「直ちにワカナを自室、いや地下牢にでも閉じ込めろ! うるさくてかなわん!」
「「了解しました! ワカナお嬢様、失礼します!(バカ女め、お前のせいで!)」」
「んなっ!? お前たちは!?」
二人の執事は両側からワカナの腕を捕まれて、その場から連れ出してしまうことにした。そんな状態なのにワカナは王太子に向かって理不尽な怒りを叫ぶ。周囲がドン引きするほどに。
「ふっざけんじゃないわよおっ! 何が王太子よ! 礼儀だの気品だの細かいこと気にしてんじゃないわよ! 地味な女と最高の美を持つ女を取り換えられるというのに、後悔しろおおおぉぉぉ! ちくしょおおおぉぉぉ!」
「…………っ!?(よせよ、王太子だぞ!?)」
「…………(誰に向かって叫んでんだよ!?)」
怒り狂うワカナの声は、誰が聞いても貴族令嬢の口にするような声に聞こえない。執事二人が拘束していてもギャアギャア騒ぎ続ける。
部屋を連れ出されてからは無理矢理抵抗し始める。
「ムッキー、くそ、離しなさいよ! あの馬鹿王太子に文句言ってやるんだから! 目を覚ますまでね!」
「無理です……旦那様の指示です(だから大人しくしろよ)」
「抵抗すれば身だしなみが乱れます(見た目しか取り柄がないんだしよ)」
怒り狂うワカナは遂に執事二人にも暴言を吐く。聞くに堪えない言葉が響く。
「私に逆らうなら、お前たちはクビにしてやる! 私のような美しい女神に見捨てられるのよ、絶望するでしょ!? さっさと放しなさいよ!」
「だ、旦那様の、指示が、優先です(女神だと? ふざけんな。我儘な邪神の間違いだろ)」
「…………(いっそクビにしてくれ。もううんざりだ。女神じゃない。俺達は悪神に囚われているんだ)」
……執事二人は頭がおかしくなりそうだった。自分たちが世話をしている少女が貴族令嬢などと思いたくないし、もう世話したくないと思ったのだ。挙句には、
「「(……辞表を書こう)」」
所詮、彼らとワカナは金で雇われた関係でしかない。両側から掴んでいる少女が邪神ではないかと思うほど追い詰められた彼らは、ソノーザ家から出て行こうと決意した。
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