第4話
女性が見つかったという場所は、比較的倒壊が少ない場所だったようだ。
建物の瓦礫に混ざって、倒れた戸棚や割れた瓶、溢れた薬品が散乱していたのだった。
「こちらのようです。少将」
先導するアルフェラッツに続くと、倒壊した柱の近くに捜索部隊が集まっているようだった。
彼らの足元に破れたシーツや、汚れたタオルが散乱しているところから、女性がいたのはリネン室だったのだろう。
柱とタオル類に守られて、運良く助かったのかもしれない。
二人は捜索部隊を掻き分けると、救助された女性の元へと向かったのだった。
「この女性が、唯一の生存者だというのか……?」
アルフェラッツがそう言いたくなる気持ちもわからなくもない。
オルキデアでさえ、そう言いたくなったからだった。
「はい。こちらが、唯一の生存者です。
今のところ、この女性以外は見つかっておりません」
「そうか……」
オルキデアはアルフェラッツの制止も聞かずに、汚れたシーツの上に横たえられた女性の頬にそっと触れる。
女性はオルキデアよりやや歳下ぐらいに見えた。
ところどころ銀が混ざった胸元まである藤色の髪と、切り傷や擦り傷などの軽傷を負ってはいるが、白磁のような肌が印象的であった。
ところどころ破れてはいるが、
「目立った外傷はないようだな。すぐにテントに運んで治療に当たってくれ」
「はっ!」
捜索部隊が瓦礫を撤去して、テントに運びやすいように道を作っている間、女性に付き添っているオルキデアの元に、アルフェラッツが近づいて来る。
「少将。シュタルクヘルト軍の軍服は深緑でしたよね? 白という事はもしかして……」
「ああ。俺たちはとんだ拾い物をしてしまったかもしれんな」
この国でも、シュタルクヘルトでも、身分や階級によって、着用する軍服のデザインや色は異なる。
デザインが豪奢なら高官、色は身分を表す。
貴族社会が廃止されたシュタルクヘルトで、身分を表す軍服を着用する家は限られている。
国家元首かーー国に深く関わった家系か。
(面倒なことにならなければいいが)
オルキデアは女性について箝口令を敷くようにアルフェラッツに頼むと、女性を運ぶ捜索部隊に続いてテントに戻ったのだった。
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