飛行練習

 今年は空梅雨からつゆ危惧きぐされた、そんな水無月みなづきとある日の、どんより曇天どんてんくもり空、一羽のカラスが寂しげに、向かいの屋根の手すりのはしで、心細げに鳴いている。


 グアグアガーガー、グアグア、ガー。


 どうやら今年巣立ったばかりの、まだまだ子ども気抜けきらぬ、細身のカラスが鳴いている。


 庭の植木に二羽は居た、貫禄たっぷり黒ガラス、おそらくあれが親鳥と、思って見ていた曇り空。


 どうやら飛行練習を、見守る親と子ガラスの、微妙な距離感絶妙で、羽ばたく子ガラスがんばれど、いざいざ飛んだら落ちてった。

 どうやら飛ぶのが下手くそで、飛ぶというより落ちていく。


 庭木の枝にバサバサと、何とか着地で大騒ぎ。

 グアグアガーガー鳴きわめく、子ガラス元気に鳴きわめく。


 そんな姿をよくよく眺めて、一羽がバサっと飛び上がり、向かいの屋上手すりの上に、難なく着地と洒落込んだ。

 続けて一羽が翼を広げて、おんなじ様子で枝を離れて、一階ヘリを経由して、二階の上の屋上に、二段構えで飛んでいく。


 庭木の枝で、グアグア鳴いてる小ガラスは、そこからずいぶん溜めに溜め、ようやく羽ばたき飛び上がる。

 浮力が足りぬか筋力足りぬか、一階ヘリを経由して、数歩ぴょんぴょん飛び跳ねて、それからウンセと飛び上がり、何とか二階の屋上の、ヘリを伝って着地する。


 すると一羽が間髪おかずに、さっさと飛んで屋根超えて、そのままスイーっと飛んでった。


 グアグアガーガー鳴いている、子ガラスそのまま置いてって、残りの一羽もちょちょんと飛び跳ね、それからスイーっと飛んでった。


 どうやらここからお留守番。


 親鳥待ちつつ子ガラスは、バタバタ騒いで、うちの屋根へと飛んでくる。

 そのままチョンチョン方向変えて、向かいの屋上その上の、手すりに向かって飛んでいく。

 短い距離から順番に、行ったり来たりと飛んでいく。


 下手くそぴっぴの自主練習、それも程なく飽きたのか、今度はガーガー鳴き始め、首をフリフリ忙しなく、行ったり来たりを繰り返しつつ、親鳥呼び呼び鳴きわめく。


 三十分もしないうち、二羽の親鳥飛んできて、合流するまで子ガラスは、ずっとずーっと鳴き続け、ソワソワ手すりをカニ歩き。


 見た目だけでもそれなりに、親子の区別がつくもんだ。

 その後もしばらくこの親子、うちの近所で子ガラスの、飛行練習続けてた。


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 6月から8月頃にかかると、巣立ちのシーズンに入るようです。

 親鳥も気が立ってるので、あまり刺激しないように観察する日々です。

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