貰いもの

「わたしさ、人から貰ったものが捨てられなくて部屋の中がどんどん溢れて言っちゃうんだよね」

カフェで向かい合って座る友人が苦笑しながらカップに口をつける。


「わたしなんてこの間も元カレから貰ったネックレス、フリマサイトに出したばっかりだっていうのに、あんたは偉いね」

「偉いとかそんなんじゃないよー」

照れながら俯く友人は話を続ける。


「でも、凄く部屋に溜まっていっちゃって困ってるんだよね」

「そんなに溜まるって、あんた毎日プレゼント貰ってるわけ?」

人からプレゼントをもらう機会なんてそんなにたくさんあるのだろうかと疑問に思う。目の前にいる友人みたいに可愛らしい子ならたくさんプレゼントをもらう機会があるのだろうか。


「たしかによくいろいろ貰うけど、さすがに毎日はもらってないよ」

友人は髪の毛を触りながら苦笑する。


「でもやっぱり人から貰ったものって捨てられないから、たくさん増えていっちゃうんだろうね」

「やっぱり偉いよ。そうやって人から貰ったものを何でも大事にするって良い子だね」

「あはは、そういってもらえると嬉しいけど、良い子なんかじゃないよ」


そうやってまた苦笑する彼女が手に持っているたい焼きの包み紙が、先ほどから気になってしまっていた。少し前に2人で一緒にたい焼きを買った時のごみなのだろうけど、捨てなかったのだろうか。


「ねえ、そのたい焼きのゴミ、さっき捨てなかったの?」

先ほどのお店で、彼女は「ちょっとゴミ捨ててくるね」と言っていたので、わたしも「悪いけど、ついでにこれもお願い」と伝えたのだから、確実に捨てに行ったはずなのに。


「これさっき捨てといてって頼まれたやつだけど……。わたしに頼んだこともう忘れちゃったの?」

小首を傾げる彼女の表情は困惑気味で、まるでわたしが不思議なことを言っているかのような気持ちにさせられてしまう。

「覚えてるけど……。わたしは捨てといてってって言ったのに、なんでまだ持ってるのかなって……」


「やだなぁ、さっきから言ってるじゃん。わたしは人から貰ったものは捨てられないんだって。この包み紙も家に帰って保管しておくから心配しなくて大丈夫だよ」

可愛らしい笑顔をこちらに向けながら話す彼女の真意は分からないけど、とりあえず彼女にゴミを捨ててもらうことはもうやめておこうと思った。

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