ヘンテコ物語集

お子様ランチ(大人用)

「へえ、ここのレストランにはお子様ランチ(大人用)なんてあるのか」

なんだか久しぶりに童心に帰ったような気がして心を躍らせてしまう。きっと大きさとか、中身とかが大人向けのメニューになっているのだろうと思い注文してみた。大人一人で来店して「お子様ランチ１つお願いします」と注文の時に言葉を発するのは少し恥ずかしかったが、まあ気にすることはないだろう。あくまでも大人用なのだから。

「お待たせ致しました」

だが、そう言って運ばれてきた料理はどこからどう見ても普通の子ども用のお子様ランチだった。お子様ランチ用の小さく区切られたプレートに、旗のついた小さなチキンライスとか小さなハンバーグとか、少量のナポリタンとか、キャラクターの絵が描かれたゼリーとか、おまけとしてついてくるカエルの絵が描かれたおもちゃとか、何の変哲もないお子様ランチである。

「あの、すいません。これってどう見ても普通のお子様ランチだと思うんですけど……」

さすがに気になってしまい、思わず店員を呼び止めてしまった。

「ええ、そうですよ。お子様ランチですけど……？」

だけど店員も不思議そうに首を傾げている。まるでこちらが変な質問をしているみたいに。

「あの、これのどこが大人用何ですか？」

気になったことをそのまま聞くと店員が納得したように「ああ」と呟いて答えた。

「このチキンライスについている旗が子ども用より一回り大きいんですよ」

「え？」

「あと、付属のカエルのキャラクターのついたおもちゃは子ども用だとオタマジャクシのイラストになりますよ」

店員は愛想よく答えてまた厨房の方へと戻っていった。