認識の違い

ある男が川沿いを散歩していると、偶然川を流されている河童を見てしまった。だが、男は自分の見たものを当然すんなりとは受け入れられなかった。あまりにも非現実的すぎる。

「いやいやいや、あり得ないだろ……」

そんな自身の目撃したものを納得できていない男の独り言が聞こえたのか、河童が男の元へとやってくる。


「まあ、あなたが儂ら河童の存在を信じないのは無理ないでしょうな」

さすがに河童の側も人間が河童を見つけてすんなりと存在を信じるなんてことは無いとはわかっていた。だが、男はその言葉を否定する。

「あ、いやそこじゃなくて、河童が川を流されるなんて人間の妄言だと思っていたんで、本当に川を流されているところを目撃して思考が付いていかなかったというか……」

「つまり河童の存在自体は特に疑うこともない、と?」

「ええ、当たり前じゃないですか」

男は何を言っているのだろうかというような視線で河童のことを見ている。


河童は首を傾げながら川へと戻っていった。

「別に河童が川を流されること自体は疲れているときとかにはよくあることなんだけど、それを珍しいと感じるなんて変わった人間もいるもんだな」

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