それ以外は良いんだけど……

「ちなみにシフトは週に何日位入れそう?」

「週7日いつでも入れますし、時間も24時間いつでも大丈夫です! なんなら年365日毎日入っても良いですよ!」

「ははは。なかなか頼もしいねぇ」


コンビニのバックヤードでは簡単なバイトの面接が行われていた。

店長は今日面接に来た青年に、なかなか好感触を抱いていた。


「元気も良いしやる気も感じられるしユニークだし是非君を採用したいと思うんだけど……」

そう言って店長は履歴書を机の上に置いて通勤時間の書かれた場所を指差した。


「この通勤時間2年って言うのは……」

履歴書の通勤時間を記入する欄に書かれた異常に長い通勤時間が気になったのである。おそらく書き間違いか冗談だとは思うのだが一応確認はしないといけない。


「あ……」

青年は自分のミスに気づいて慌てて謝る。

「すいません、慌てて書いてたもんで間違えちゃいました!」

「そ、そうだよね……2年の訳ないよね。」

店長は間違いだとわかり安心して自然と笑みをこぼした。これで彼の採用を決定できると喜ぼうとしたときに青年が返答する。


「2光年です」

「え?」

「2光年です」

店長の笑顔が固まった。


「ご、ごめん……もう一回言ってもらっていいかな?……」

「2光年……あぁ、2 light years」

「いや、国際対応して欲しいとかじゃなくてね…2光年ってどのくらいかわかってる?……」

「光の速さで2年ですけど……」

青年は何を当たり前のことを聞いてくるのかと言わんばかりに首を傾げながら返答した。店長は黙って親指でこめかみを抑える。


「一応聞いとくんだけど……出身は?……」

「バ#%ミ*星です。」

「え、待って君宇宙人なの?…あとなんか聞いたことのない音が発音されたけど大丈夫?……」

店長はただただ困惑した。


「でもうちの星ワープ技術が発達してるんで本来2光年かかるところを2週間で来れるんですよ!」

「いや、すごい技術だけど往復1ヶ月かかるなら週7日入れるどころか月に1、2回しか入れないよ」

青年はそう言われて「たしかに……」と言って俯いた。


「地球の人じゃないと働くの難しいですかね?……」

青年の声のトーンが少し落ちていた。

「うーん……どこの星の人かとかは別に良いんだけど通勤時間がね…まあとりあえず結果は後日連絡するっていうことでいいかな……」

「はい……」

店長の歯切れの悪い返答に青年は落ちたことを確信してトボトボと店の外へと出て行った。


「うーん……通勤時間以外は良いんだけどなぁ……」

1人店に残った店長は品出しをしながらウンウン唸りながら考えていた。


「まあでも今うちの店に僕以外店員いないし来てもらうか。とりあえずうちの家にでも居候してもらえば大丈夫だろ」


店長はバックヤードに戻り電話を掛けようと履歴書に書かれている番号を押していく。呼び出し音が鳴っているなか、ふと店長は気づく。


「あ、待てよ……この履歴書の電話番号って地球の外にいても繋がるのかな……」


なおも鳴り続ける呼び出し音を待つと電話口から声がした。

"ただ今電源を切っているか電波の届かないところに……"


地球と同じようなメッセージで電波が届かない旨が告げられる。とりあえず留守番メッセージに要件と名前だけ入れておいたがおそらく返事は来ないだろう。


「やっぱり宇宙空間に電波が届く訳ないよな……」

そう言って諦めて品出しへと戻る。

「しかしそろそろ人入れないと1人で店回すのはヤバイぞ……」

店長が落胆しているとポケットに入れていたスマホから着信音が流れた。


「はい」

「あ、すいませんさっき面接してもらった者なんですけど。ちょっとワープ中だったんで電話の電源を切ってて出れなくて……すいません……!」


「通話自体はできるのか……」

いろいろと気になることは多かったがとりあえず店長はバ#%ミ*星の電話の性能の良さに驚いた。

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